野毛山動物園「Zoo Zoo Scene」広さに作られた密度、そしてちょっとした奇跡
2011年10月8日、横浜市立野毛山動物園にて「Zoo Zoo Scene(ずうずうしい) パフォーマンス」を観ました。
広場に展開した演じ手たちの表現にちょっとした奇跡が降りてきて・・・。
観に行って本当によかった・・・。
-野毛山動物園のキャストの皆様の写真はこちらからー
(ここからネタばれがあります。ご留意ください)
作・振付・演出 : off-nibroll(矢内原美邦×高橋啓祐)
出演:竹田靖 稲葉美保 橋本規靖 矢内原美邦
主催:急な坂スタジオ 共催:横浜市立野毛山動物園
すこし早めに動物園について、ぐるっと園内をひとめぐり・・・。
それほど大きな動物園ではないのですが、
確かに動物が近い・・・。
階段を下りていく時、当たり前のように階段を登ってくる孔雀と普通にすれ違ったのには
ちょっとびっくり。
レッサーパンダや熊たち、さらにはペンギンをながめ、
子供たちに混じってモルモットやひよこを抱いて愛でたりして・・・。
やがてパフォーマンスの開園時間が近づいてきて
ひだまり広場へと移動。
会場はかなり広い、オープンスペースに近い場所。
予約した人達用の場所が用意されていて、
石段に座ると、風もそれほど吹いていないのに
頭上の木の枝がざわざわと音を立てている。
小枝まで落ちてきたので仰ぎ見ると、
そこにはハトなど大きめの鳥がくつろいでいて・・・。
ホールなどでのパフォーマンスとはかなり違う雰囲気で
開演を待ちます。
時間が来て、パフォーマーが現れて・・・。
冒頭は、場所の広さを自らの手中に収めて
密度を醸し出すのに多少苦労していたように観えましたが、
やがて動作に言葉が差し込まれ、ニュアンスが作られるようになると
彼らの仕草から生まれるものが、
場のテンションとして観る者を捉えていきます。
動物たちを奪い合う・・・。
肉を奪い合うことでの動物たちとのかかわり・・。
その闘争は執拗に繰り返され、
普遍性に編み上げられていく。
さらには奇跡その1というか
その肉を象徴するソーセージの欠片を鴉が舞い降りて奪うというハプニングがあって、
パフォーマー達の顕そうとするものに
さらなる広がりが生まれて・・・。
さらには事実を観ないことへの表現、
「見ないの?」という言葉のポップさから
現実と意識の乖離や、現実を見ることの質感が浮かび上がる。
さらには一方で、動物を愛でる気持ち、
ペットとしての動物とのかかわりあいや
共生の感覚までが
作り手の創意に束ねられてその空間を満たしていきます。
まるで、パフォーマーたちの発声や場の雰囲気に反応するように
近くの檻の動物たちの叫び声が聞こえてびっくり。
それが、演じられているものを阻害するのではなく
むしろ、即興的なニュアンスを場に差し込んでいく。
極めつけは一羽の孔雀、
なにげに広場に現れると、
暫くは隅の方でたたずんでいたのですが、
やがて、ぐるっと広場の周りを歩き、
奥のテントを抜けて、
今度は広場を悠然と横切っていく・・・。
それはアベマリアが朗々と流れるシーンで、
パフォーマーたちがスクエアにフォーメーションを形成しているそのど真ん中を
ぴったり音楽分の尺で見事に歩き切って見せる・・・。
愕然・・・。
多分、作り手も想定しなかったであろう
さらなるニュアンスがその場に付け加えられて・・・。
でも、パフォーマーたちが醸し出す場の密度が
孔雀を受け入れはしても、本来の作り手の意図が崩れることはなく
もっと豊かなものが生まれた感じ。
単にパフォーマンスを楽しんだという感じではなく、
大袈裟かもしれませんが、
人間と動物たちが存在し生きていくことについての
ちょっとこれまでとは違った感覚をもらったような気持ちがして。
また、終演後には、動物園の飼育係の方を交えたアフタートークもあり
(この日はツキノワグマ担当の櫻堂由紀子氏)
動物たちもお客様に対して演じている部分があり、
休演日にはいつもと違う表情を見せているというお話や
その後のミニツアーもとても興味深く・・。
子供たちの興味を惹くパフォーマンスでもあったようで
客席の周りの子供たちも騒いだりむずがったりせず
眺めていたのも印象的。
子供たちがプロの表現を目の当たりにするって
とても良いことだとも思った。
3連休、毎日1回の公演とのことですが、
別の回にもいろんなことが起きるのだろうなとか考えると
ちょっと観に行きたい気すらして・・(無理だったけれど)
本当に豊かでいろんな魅力をもったイベントでありました。
あと余談ですが、終演後にもう一度この動物園をゆっくりと回って・・・。、
規模は決して大きくないのですが、
それぞれの動物たちがなにかとても魅力的に思えた。
なにか妙に人間臭いというか、
近しく感じられるとというか。
もし桜木町界隈でなにか観るときには
すこし早めについて訪れたい(リピートしたい)場所ができました。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント