ろりえ「三鷹の化け物」圧倒的な外連に負けない空気の醸成
2011年10月2日ソワレにて、ろりえ「三鷹の化け物」を観ました。
会場は三鷹芸術文化センター星のホール。
後半の展開というか終盤の装置に唖然、
その強烈なパフォーマンスに負けない
でも、役者たちの演技の積み重ねがあって。
外連の秀逸に負けないコアを持った作品に
心を奪われました。
(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)
作・演出:奥山雄太
出演:梅舟惟永、斎藤加奈子、志水衿子、徳橋みのり(以上ろりえ) 安藤理樹(PLAT-formance)、大山雄史(五反田団)、岡野康弘(Mrs.fictions)、尾倉ケント(アイサツ)、
久保貫太郎(クロムモリブデン)、後藤剛範(国分寺大人倶楽部)、櫻井竜、佐藤航太、高木健(タイタニックゴジラ)、 田島慶太、中村梨那(DULL-COLORED POP)、長瀬みなみ、松原一郎、松下伸二、本山歩、横山翔一(お前と悪戯酒)
前半、いろんなシーンに心惹かれる。
貴き血筋の主人公にしても、
周りを取り巻くいろんなキャラクターにしても、
リアリティがあるわけではないのですが、
気が付けばお芝居のリズムが彼らを観る側にすいっと置いてしまう。
表見上はそれなりにいい加減で、危さすら伴った設定だし
物語の展開も、冒頭は観る側がリズムに取り込まれるまでは
ちょっとぐたぐたした感じが無きにしもあらず。
でも、作り手は勘所をしっかりと押さえたシーン構成で
広い舞台にメリハリをつけながら
物語をどんどん重ねていきます。
空気を恣意的にべたにつくるところと、細かく描き出すところの
緩急のバランスが物語の広がりをサポートするなかで、
突然息を呑むほどに繊細な場面が現出したり、
かと思うとおもいっきり戯画的なシーンがさしこまれたりと
目が離せないままに休憩まで舞台が進んでいく。
特殊衣裳に近いものを重ねて肥満をデフォルメしたり
観る側が突き刺されるほどに美しい肢体を突然舞台に現出させたり
前半だけで時間的には芝居一本分くらいの長さがあるのですが
長さが全く気にならない。
そこには、澱まない舞台の流れと熱がしなやかに現出して。
役者たちもよいのですよ。
主人公的なロールを演じたふたりは言うに及ばず
シークレットな役人系やSP、さらにはレポーターを演じる役者たちの
切れのよさや強さが観る側をダレさせない力になっていく。
シーンごとの所作というか動きや台詞にきちんとテンションや間が生まれていて
観る側を飽きさせない。
よくわからない店の従業員たちそれぞれにも、場をじわじわと観る側になじませるような
安定した表現力があって。
尊きところの乳母の不思議な存在感、さすがにじじいは反則技だと思うけれど、
彼らがきちんと役に踏ん張ることによって
物語に底堅いバックグラウンドが生まれる。
主人公的な男性と突然出会う女性のビビッドさに強く心を惹かれ、
その兄や終盤に現れる恋人の献身的な演技が
物語の軸をさらに増やす。
不条理なパン屋の店長や店員の恣意的に淡白なお芝居にも
したたかな力加減があって、、
それが後半の展開にがっつりとインパクトを与える。
新しく付き合い始めた彼女を土手の下に待たせて、
自転車を支えたままで、別れてさえいない
かつての彼女と再会するシーンの美しさと
透明感をもった切なさに息を呑む。
訳のわからない、一見べたでコントのようなシーン構成の
店をつぶす繰り返しの中での貫きが舞台に安定感を生み出し
パン屋に編み込まれた不条理に近い設定も
物語の中にしっかりと居場所が作られて
見る側を舞台の空気の渦に巻き込んでいく。
なにげに、そこまでに
観る側を舞台に浸しているから
後半の外連が単なる見せものに終わらない。
それは、力技全開の美術というか装置ではあるのですが
でも、その装置が、単に観る側を驚かせる花火に終わっていない。
装置もロボット演劇のごとく演じ、
物語の要素にしたたかに編み込まれていて。
そこには、驚きだけではなく
作り手が具象しようとするものと、寓意と、
ウィットが圧倒的に伝わり残る。
役者たちの踏ん張りで描き出された作意のガチさが
外連のド派手さに負けずきっちりと観る側を捉える。
劇場に入るときには
上演時間を観て少々びびったのですが、
終演時には、その時間が、世界を端折らないための
絶妙なボリューム感を醸すに足りるギリの長さに思えた。
多少遠い印象がある三鷹ではありますが、
劇場を後にする時には
十分すぎるほどに満たされて、
そんなことも全く気になりませんでした。
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