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劇団野の上「不識の塔」がっつりとした色に込められた繊細さに圧倒される

かなり遅くなってしまいましたが、
2011年8月19日ソワレにて劇団野の上「不識の塔」を観ました。
会場はこまばアゴラ劇場。

方言を生かした舞台が作りだす迫力や、観る側をぐいっとつかみ取る外連に掴まれて
がっつりと舞台を楽しむことができました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

作・演出 : 山田百次

出演 : 乗田夏子  藤本一喜  鳴海まりか  山田百次  三上晴佳 佐々木英明

客入れから、
東京の小劇場とはちょっと違った雰囲気が場内に感じられて。
なにか、観やすい席を出来るだけ早くきた人からというような
配慮が感じられる。

その客入れの男性(劇団主宰とあとで知った)が
お定まりの開演前の注意を話すと、
衣装行李を持ち出してきて
長髪のズラを外し、
あっという間に余命いくばくもなさそうな主人公に変身すると、
そこから物語が始まります。

多分、あらすじに落とせば味もそっけもない物語、
しかしそこに込められたものには尋常ではない突き抜けがあって。
本妻と妾の鞘当て具合。
女郎の姉妹をまとめて妾にするあたりに
男の本性のようなものが醸し出されるのですが、
女性たちには、そんな男性の業などあっさり蹴とばしてしまうような
桁外れのたくましさがあって。

挙句の果てには
ろくに躾けられていないその家の召使のおんなにも
主人は手をつけていることが分かって。
よくもまあ、これだけ、
喰えない女どもを集めたものだと感心する。

しかも、このたくましさが、
波状攻撃のような可笑しさを運んでくる一方で
まったくあざとくならないのです。
主人が死にかけの態で
自分を殺そうとした女性を指差すあたりなど
大爆笑なのですが、
そこには場当たり的な笑いのだらしなさがないというか
積み上げたものからの踏み込み感があって。
凄まじいのですが、グタグタになることはなく
観る側をしっかりと運んでくれる。

その貫きが、物語の後半に醸し出された色を
しっかりと観る側に流し込んでいきます。
劇場の床が抜けるのではと心配になるような
大きな桶の外連にしても、
単に観る側を驚かせるにとどまらず
その道具立てがプリズムのようになって
前半とは別の登場人物個々の素の表情を垣間見せていく。
そこにあるがごとくあるような
役者たちのお芝居に緻密な作りこみがあって
喰えない女たちや主人を含めて
それぞれが生きるコアの色で
観る側を浸していく。

観終わって舞台を眺めると
とてもシンプルなのですよ。
でも、だからこそ、役者たちが作り上げる個性が
ダイレクトに観る側に残る・・・。

なにか癖になりそうな質感をもった舞台に取り込まれてしまいました。

この劇団、是非に次も観たいと思います。

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