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CRUSH THE TYMKS「星の降らない夜明け前」四肢の動きが作り出す鋭角を感じさせないグルーブ感

2011年8月23日20時の回で
CRUSH THE TYMKS「星の降らない夜明け前」を観ました。

観る側の目を釘付けにするダンスの洗練には
刻み込む動きの精度としなやかさが共存していて・・・。

がっつりと心を奪われてしまいました。

(ここから先には、パフォーマンスの内容に関する記述がありますので、ご留意ください)

振付・演出・出演:橋萌登 麻衣子 山彰乃

CRUSH THE TYMKSは、
以前、なんとエビス駅前バーで観たことがあって(2月の乱雑天国の公演)。
お世辞にもダンスに向いているとは言いがたい
小さなスペースをしたたかに生かしたパフォーマンスがとても印象に残っていて。
その動きに魅せられて、
彼女たちが広いスペースで踊ることがあれば
是非に観たいと思っておりました。

前説のおにいさんが、
どこかべたなパフォーマンスで空気を作ると
パフォーマンスが始まる。

四肢の動きがとにかく饒舌。
スピードと滑らかさに加えて、
表現のテンションを保ちつつ
個々の動きに抜群のしなやかさと柔らかさがあって
観る側をたちまちに引き込んでいく。
細かく複雑な仕草にも安定感があって
切れはしっかりと感じられるのですが、
その切れが鋭角ではなく曲線的な豊かさで構成されている感じ。
柔らかく観る側が委ねられるような空間が造られていきます。

そのふくよかさは、
3人が様々に作り出すバリエーションを持ったユニゾンにも
溢れていて
観る側をしっかりと舞台の温度に巻き込んでいく。
2人のユニゾンが描き出す一体感。
ユニゾンに入った刹那が生み出すぞくっとくるようなグルーブ感と
ユニゾンから抜け出す時のすっと解き放たれたような感覚。
他の一人の動作との対比もしっかりと計算されていて、
更なる密度が舞台に生まれる。
さらには3人のユニゾンの力感と速い動きの緻密さに
ぞくっとくる。

あからさまなドヤ顔の洗練ではなく
観る側が身構えることなくすっと受け入れてしまうような空気の秀逸。
そして、高揚と瑞々しさ・・・。
観続けることで、消耗するのではなく、
イメージのふくらみやリズムの心地よさに
心が開かれる感じ。
少しだけ切なさも感じるのだけれど
いっぱい楽しさもやってきて。

ダンサーたちのソロでのパートにも、
観る側を揺さぶる強さがあって。
それが舞台に満ちる感覚のバリエーションを
しなやかに広げていく。

とにもかくにも、彼女たちだから作り出しえたであろう
肌触りがあって、
それが奥行きとともに観る側をしっかりと取り込んでくれる。
彼女たちが紡ぎだす時間や空間の色には
間違いなく彼女たちの独創を感じる部分があって、
それがとてつもなく魅力的なのです。

終演後、なにかわくわくしてしまい、
素直に、次の公演も観たいと思った。
ちょっとわかりにくい言いまわしかもしれませんが、
彼女たちのパフォーマンスにたいする
もっと感というか飢えのようなものすら感じて。

そこまでに求心力をもったステージでありました。

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