みきかせプロジェクト「流星群アイスクリン あずき味」切れをもったテイスト
2011年8月4日ソワレにて、みきかせプロジェクト「流星群アイスクリン あずき味」を観ました。
会場は八幡山ワーサルシアター。
蜂寅企画と味わい堂々の2作品、それぞれに高い完成度があり、
ショーケース的な感覚ではなく、
「みきかせ」の制約が育てたであろう作品のもつテイストを
たっぷりと楽しむことができました。
(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)
みきかせプロジェクトを観に行くのはこれが2回目。
作品には
①大道具を使わない
②45分以内で
③台本を持つ(台本と言い張れば何でも可
という掟があって、これが作品にある種のメリハリをつけていて・・・。
たっぷり楽しむことができました。
*蜂寅企画「恋は枯野をかけめぐる」
戯曲・演出 :中尾知代
出演 : 島田紗良(クレイジークライマー) 小林肇 斉藤太志(UISHAAAWORKS) 磯矢拓麻(劇団芋屋) 山口紗貴 藤田めぐみ
初見の劇団、でも一気に捉えられた。
時代劇がベースということでしたが、
冒頭はややアニメに役者の動きが美しく感じられて。
確かに江戸時代の設定ではあるのですが、
その時代の今に観る側を運んでくれる。。
猫又の仕草が目を惹く。団扇に書かれた「にゃおん」の台詞が
しっかりと舞台の掟をクリアしているのがなんとも可笑しい。
その見栄えに引き込まれ、
語られる江戸の町の風情に浸っているうちに
気が付けば、シラノ・ド・ベルジュラックの骨格が
舞台にしたたかに組み込まれている。
国も時代も違っていても、
違和感なく、むしろ生き生きと
物語のコアが観る側に訪れて・・・。
さらには絡めた橋崩落の物語に舞台を染めるにしても
その色の作り方の足腰がしっかりとしていて、
観る側をぐいっと取り込んでしまう。
気負いがなくメリハリのある舞台の肌触り、
物語るにしても、思いの表現にしても
いろんなウィットにしても、
観る側にもたれず、役者のそれぞれの味や安定感とともに
舞台のリズムに観る側をゆだねさせていく力があって。
こういう、エンタティメント性を醸し出すのは
作り手のセンスなのだと思うのです。
「みきかせ」にとどまらず
この作り手の本公演が是非に観たくなりました。
*味わい堂々「君アレルギー」
作・演出・出演 :岸野聡子
出演 :浅野千鶴 宮本奈津美 田中和治朗
こちらの団体は、本公演なども観ていて、
作風はよく存じ上げているつもりでした。
また、番外公演と称した短篇集の公演もあって、
それもとても面白い劇団でもある・・・。
だから、今回もある意味、そのモードで作品を観始めたのですが、
観る側を良い意味で大きく裏切る展開が待ち受けていて。
二人の女性と一人の男の三角関係のお話なのですが、
その語り口がしたたか。
みきかせの掟に従って短いセンテンスを
手紙の読み上げの態でやりとりすることが
男女の心情を絶妙の深度で浮かび上がらせていく。
熟慮するというよりは、感覚がそのまま伝わってくるような感じ。
その質感が、恋愛の心情の盲目さやPOPさ、
さらにはちょっと気恥ずかしくなるような正直さを
個性的なテイストに仕立てて観る側を巻き込んでいく。
ちょっと、とほほなデートのエピソード。
噛み合わなさにマッチしたアレルギーのタイミングと症状。
男と元カノの関係も、医者と患者の関係で結びつけて
一本の糸にしないことでなんともいえない腐れ縁を感じさせる。
今カノのときめきなどもデフォルメがあるのに
純粋というかビビッドに伝わってきて・・・。
その想いたちの重なりが醸し出すものが
次第に舞台を満たしていきます。
で、作り手は満たしただけでは飽き足らず
さらなる踏み込みを創り出す。
ゆげの「君アレルギー」という曲が流れ
舞台上の事象がダンスに昇華すると
そこはもう、新しい味わいワールド。
どうにもこうにも逃げられないニュアンスの可笑しさがあって・・・。
それが、みきかせの掟に濃縮されて
切っ先がダブルの鋭さになっている感じ。
後味にもセンスがあって
どちらかといえば見慣れた劇団の、
コアに眠っていた底力にがっつりやられた。
なにか、癖になるような面白さでありました。
*** *** ***
両劇団を観終わって、なにか「みきかせ」の
奥の深さを感じたり。
掟が与えた箍が、作品のモチーフや武器を
くっきりとさせ、いろんな創意工夫を導き出しているようにも思えて。
今回もう一方のラムネ味を観れなかったのがかなり悔しい。
観る側にとっても
蜂寅企画のように新しい才能への出会いがあったり
味わい堂々のように既知の劇団の新しい魅力に触れることができたりと
いろんなものが得られる企画でありました
この企画、今後の展開がとても楽しみです。
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