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エビス駅前バープロデュース「くすり・ゆび・きり」脚本と演出の意外で素敵な相性の良さ

2011年8月22日21時の回でエビス駅前バープロデュース、「くすり・ゆび・きり」を観ました。

会社帰りに余裕で立ち寄れる開演時間が嬉しい。
しかも、そのお芝居はしっかりとしたボディとベクトル豊かな可笑しさに満たされておりました。

(ここからねたバレがあります。十分にご留意ください)

脚本 : 米内山陽子(トリコ劇場)

演出 : 板垣雄亮(殿様ランチ)

出演 :伊丹孝利(宇宙食堂)/山﨑雅志(ホチキス)/島田雅之(DART'S)/平塚正信(殿様ランチ) 中村貴子/鈴木麻美/田中千佳子/だてあずみ。(TRAPPER/Minami Produce)

バーに上がっていく階段からすでに仕込みがあって。
その雰囲気に取り込まれる。
離婚式の会場を上の階に見立てた張り紙などもしてあって。

ワンドリンク制ということで、飲み物を手に
開演を待ちます。

カウンターの内側で教本みたいなものを読みながら客を待つバーテンの女性、
夫を亡くしてそのバーを継いだらしい。
そこに現れた大学時代の友人男女。
すっと観る側をそのバーの雰囲気に取り込んでおいて、
プロポーズの瞬間もしっかり見せて。

で、そこから暗転を挟んで離婚式の風景が描かれていきます。

離婚式のメイン会場の風景(上の階という設定)は分からなくても、
そのバックヤードのようになっているバーでの出来事で
式の雰囲気が伝わってくる。
でも、それよりも、その式が呼び寄せた
さまざまなしがらみがバーに置かれて。

二人の大学時代の友人である離婚式幹事の夫とその妻、
そこに居合わすことになった夫の浮気相手。
さらにはやはり大学時代の友人である司会役と
彼が連れてきたライター・・・。
それぞれが問題を抱えて、他にそのとばっちりが流れ出すのが
ゆるくドミノが倒れるような感じがあって何とも言えず可笑しい。
作家の腕力が離婚式という外枠に
いろんなベクトルのシチュエーションを詰め込み、男女や男どおしの機微を
浮かび上がらせていくのです。
そして、演出家の手腕は、
その感じを単にシリアスなドラマに留めることなく
愛憎の先にあるキャラクターそれぞれが内包する可笑しさへと
導いていきます。

したたかに作られた間、
物語をいたずらに押し込んだり煮詰めることなく、
ウィットを醸し出すスペースを創り
そこに役者たちのお芝居が、キャラクターの本質をしたたかに演じ上げていく。
それぞれの想いはゆるやかなお芝居の間に損なわれることなく
それどこりか、シリアスな想いにとどまらないものが舞台に滲み出してきて
観る側をさらに舞台に引き込んでいく

終わってみると
一時間の尺のなかで、
それぞれの個性がしっかりと物語に縫いこまれていて。
台詞の秀逸にとどまらない、
空気が舞台にさまざまなベクトルが重なりあって、
あざとさのない突き抜けがそれぞれのキャラクターに生まれていくのです。

観終わってちょっとだけビターなテイストも残るし、
単純な爆笑喜劇というわけでもないのですが
どこか心地よい可笑しさの質感が抜けずにあって。
登場人物たちそれぞれに、未来が見えて
それをあざとく感じさせないのも上手いと思う。

終演時には、なにか、作者と演出家の幸せなアンマッチが作りだす
豊かさのようなものすら感じて。
役者も上手いのですよ。
台詞で演じる部分以外にも
台詞を受け取ったり漏れ聞いたりするときのメリハリの利かせ方や、
無言で空気を作るような部分に
ぞくっとくるような安定感と深さがあって。
それぞれにしっかりと、
作品に撚り合わされたシリアスさと滑稽を支える強さを感じて。

繰り返しになりますが、
こういう良質なお芝居を、
仕事帰りの遅い時間にさらっとみることができるのは凄く楽しい。

べたな言い方ですが、がっつりと面白かったです。


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