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ワワフラミンゴ「バーン・ナ・バーン」、「野ばら」 洗練を感じるバイアスのかかり方

2011年7月20日と24日のソワレでワワフラミンゴの2作品を観ました。

場所は下北沢 café viet arco 。下北沢駅から歩いて1分もかからないところにあるスペース。

飲み物こみのチケットを貰って建物の2F。舞台的な空間が広くとても見やすい会場で、
この劇団ならではの世界を楽しむことができました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください。)

脚本・演出 : 鳥山フキ

カフェ公演はいっても舞台の空間は比較的ゆったりと取られていて。
せせこましい感じはまったくありません。

舞台を会場の短辺側に切らず、横に設定したことで、役者たちの動線がしっかりと担保されリラックスして飲み物を口に運び、開演を待ちます。(ラムコーク、口当たりがとてもよくておいしかった。)

7月20日、ソワレ「バーン・ナ・バーン」

菊地千里 北村恵 宍戸円 石井舞 菅谷和美(野鳩) 原口茜

レモンの二人とケーキの二人がガムテープを巡って対立をするという、
不思議な世界観。
タヌキが現れて、人が現れて・・・、
さらに不思議感を深めます。

でも、なんだろ、観ていて違和感がない。
そこに、力関係や
エゴイスティックな部分や
怒りや諦めや満足のエキスがたっぷり溢れていて。

役者たちの演じるキャラクターが
標榜する属性にしっかりと固められている部分があって、
だから、会話が断片的だったり
たわいないものだったり
コップの中を想起させるようなこだわりや諍いだったりしても
気が付けば観る側までが
場の枠組みのなかで、登場人物たちの感覚をしっかりと貰っている。

物語が通り過ぎた後、
そこには、身近でタイトな世界観のなかで毎日を過ごし、
ふっと行き詰ってしまうような
女性たちの感覚が、
包括的な感覚として残って。

もしかしたら、
男には見えなかったりわかりえないものが
縫い込まれていたりするのかなぁとも思ったりしたのですが、
一方で、特に終盤の展開などには
他愛のなさと裏腹の、深淵をもった感覚を垣間見たような気分になって、
なにか場違いにどきどきしてしまいました。

7月24日、ソワレ「野ばら」

出演:菊地千里 北村恵 宍戸円 浅川千絵 中村智弓 原口茜 森本華(ロロ)

作風というかテイストは「バーン・ナ・バーン」と同じなのですが
なんだろ、その世界のルールに対しての
キャラクターの醸し出すもののベクトルが逆に感じられて。
登場人物が纏う他との関係性や
距離感が、女性の世界観に織り込まれてやってくる。

エピソード自体はそれぞれに面白いのですが
全体を通して一つの物語を成すという感じではない。
でも、そこに、登場人物たちの個性の拡散を感じるというか
繋がりがルーズになって
その分ひとりずつのキャラクターの色が
豊かになっているというか。

舞台にひとりの役者を座らせて
そこを中央に見立て
声だけでニュアンスの伝わらない伝言を
渡していくシーンなどを観ていると
不思議に、どこかありがちな
女性たちの関係を覗き見たような感じになる。

差し込まれるメモに書かれた会話などにも
女性から観た異性へのステレオタイプな感覚を感じたり。
別れた男との関係についての会話の端々に、
男性にとって不思議な軽さと生々しい肌触りがあったり。
先にもう一方の作品を観ていることも影響しているのかもしれませんが、
お金のことや
いろんな生活感覚を含めて
枠組みにとらわれない
女性の何気ない外への関わり方が
しなやかに流れこんでくる。

切り取られたというか、
女性の感覚の断片をみているような感じではあるのですが、
その中に、すっと女性たちの普段着の姿を
観たような感覚が残ったことでした。

*** *** ***

両作とも尺もそれほど長くないし、
舞台が立てこまれているわけでもない。
明らかにバイアスがかかったお芝居だし
物語が観る側を取り込んでくれるわけでもない。
そして、明らかに、
男の自分には置く棚のない感覚が含まれている感じもするのですが、
にもかかわらず、舞台の空気にとりこまれてしまう。
わかりえないのに、
自分の日々にいる女性たちを見ていて
間接的になにか実感してしまうというか・・・。

女性がこの作品を観た時
どんな印象を持つのか、ちょっと知りたくなりました。

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