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ナカゴー「バスケットボール」繊細につくられた重なりのルーズさの力量

2011年7月8日ソワレにて、ナカゴー「バスケットボール」を観ました。

会場は御徒町から5分ほど歩いたところにある上野小劇場。

ナカゴーは前回公演もおもいっきり面白くて、次の公演を心待ちにしていた劇団。
再々演とのことですが、個人的には初見の作品。

・・・また、嵌りました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意くださいませ)

作・演出:鎌田順也

多少好き嫌いが出るお芝居なのかもしれませんが、
個人的にはモロにつぼで、圧倒的に面白かったです。

前半のキャラクター達を観ているだけでも
わくわくと笑える。
登場人物たちのひとりずつが、実に丁寧に描かれていて。
しかも、それぞれの個性が、素敵と思えるくらい、まとまったり重なったりしない。
冒頭の二人の先輩と後輩のシーンにしても
ひとつの台詞や動作の行き先に、
観る側をその世界に閉じ込めてしまうようなおかしさがあって
しかも、それを飽きさせない空気の貫きがしっかりと作られていて・・・。

ゆるいといえばゆるいのですが
でも、切れがないのとはまったく違う。
こう、なんというか、いろんな箍をゆるめてはみ出してきたものが
したたかに組み合わせられているというか・・・。
役者たちの演技に繊細なルーズさがあって
キャラクターたちの個性がしなやかにつくられているから、
ベクトルを定めないような場の空気に
実存感やデフォルメがきっちりと醸し出されていて。

で、気が付けば、女子トイレの会話劇に
同じ目線でしっかりと取り込まれている。
しかも、そこまでが作品にとってベースの部分にすぎないのが恐ろしいところ(褒め言葉)。
その場にさらなるキャラクターが次々と積み上げられていくのです。

すでにベースが作られているから
いろんなキャラクターの色が不思議なほどに抵抗なく
その空気に取り込まれてしまう。
違和感が乖離せずに場の味として膨らんでいくのが凄い。
一人ずつが醸し出す雰囲気は、
きっちりと作り込まれていて、
だからといって場にそのまま調和するわけではなくどこかずれていて。
場の空気をいろんなベクトルに膨らませ、時には突き抜けていく。

この劇団を観るのは初めてじゃないし、テイストも十分知ってはいるのですが、
そんなこと関係なく、重ねられていく一つずつのシーンが
巻き込むように面白い。

役者たちも上手いのですよ。
先輩役の三越百合が生み出す先輩としての底の薄さがたまらなくよい。その友人の鈴木潤子は表情でしっかりと内心を語れるような部分があって。後輩の日野早希子には先輩二人の醸し出す世界との距離感というか乖離した感覚に切れがあって、舞台を単なるカオスにせず物語に揺らがない奥行きを作っていく。
高畑遊はその三人の色に交わらないというか負けない舞台の染め方で、舞台上の枠をさらに広げていきます。この4人で作られた土台が後半しっかりと生きる。

篠原正明には不思議にベタな教師の風情があって、生徒だけの世界に別の空気を持ち込んで舞台を膨らませる。後輩の彼氏役の桐野翼は日野の作った世界を裏打ちしてもう一段の彼女の実存感を創り出していく。下村一夫の不気味さも舞台の密度を上げていく大きな力になっていて。

墨井鯨子のしなやかな演技は舞台に満ちたものを圧倒的な力でさらなるグルーブ感に昇華させていきます。彼女の存在で、もやっと積み上げられた面白さに疾走感が生まれ始める。教育実習生を演じた名嘉友美の一人語りのごとき生徒への説得には、明らかにベクトルを間違ったシュールさに良い意味で無駄に上質なクリアさが付加され、とどめの如く舞台に満ちた可笑しさをさらに溢れださせていく。

劇団員や客演の役者たちそれぞれの
舞台に染められることなく
しっかりとしたキャラクターを作り込んでいく力がいちいちがっつりと生きていて、
観る側を緩く強く巻き込んでいくのです。

ラストシーンというか落ちも秀逸で
最後まで嵌り込んでしまいました。
洗練された小粋な喜劇とか、
ぶっとんでドタバタ大爆笑みたいなコメディではないにもかかわらず、
びっくりするほどに引き込まれるのです。

前回公演に続いて、期待値をはるかに超える出来に
今回もまたやられてしまいました。

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