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年年有魚「He talks So,Love」軽くて豊かなウィットの味わい

ちょっと遅れましたが、2011年5月5日、年年有魚「He talks So,Love」を観ました。

会場は高円寺ヒトソラ。

1日3回、各回20名のカフェ公演。そこには素敵なウィットがありました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

作・演出:森下雄貴

高円寺駅からちょっと歩いたところにあるカフェ。
階段をトントン上がって店内に入ると
そこは細長いスペース。

10席程度の客席が店内の2か所に作られ
2つの作品が同時に演じられていきます。

・第一話 「He talks so,LOVE」

出演:前有佳 山下豪 岡田昌也

POPかつどこかべたに、
登場人物たちの
想いのベクトルのすれ違いを描いていきます。
戯画化された部分に、会場の前の西友のことを
キャラクターの実存感を作るためのエッセンスのように縫い込んで。

冷静に考えるととてもビターなお話なのですが、
それを包み込むようなウィットが
舞台を不必要に尖らせない甘味のごとき
空気を醸し出して・・。

ほろ苦さが固まらず
すっと甘さとひとつになって
観る側に解けていく感じ。

交わらなさが
こねくり回されず
そのままの後味に残って。

重さとも軽さとも違う質感を持った小品に
心地よく浸り込んでしまいました。

・第二話 「ため息と憂鬱なめがね」

出演:平田暁子 安原葉子 森下雄貴

書けない作家と担当者と
ため息をつくお客。
登場人物3人三様の行き詰まり感があって
ベースは沈む空気なのですが、
その行き詰まり感のようなものが
魔法のようにコミカルなテイストに変わっていきます。

出版社の担当のシャキっとした部分が
次第に他の二人の空気に染まりだす感じに
なんともいえない味わいがあって。

かた焼き焼きそばが
次第に柔らかくなって
むしろ食べごろになっていくような・・・。

一作目とは異なる
空気のまったり感が
絶妙な感覚として残る。

これ、おもしろい。

*** *** ***

なんだろ、小粋なドルチェを2品いただいたような印象。一話は少し溶けて混ざり合っても素材の食感が失われないフルーツパフェ、第二話はいろんな味わいがやがて一皿の統一感を醸し出すデザートの盛り合わせといったところでしょうか。

今回上演分にさらに作品を足して、別のスペースで上演が予定されているとのこと。
この軽さと豊かさをさらにたっぷり味わえるのはとても魅力的・・・。

試食のような側面を持った公演でもありましたが、
もう一口へのさらなる食欲をそそられてしまいました。

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