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七里ガ浜オールスターズ「パ・ド・ドゥ」、座した芝居にあらず

2011年5月27日ソワレにて七里ガ浜オールスターズ「パ・ド・ドゥ」を観ました。

会場は王子小劇場。

この戯曲はずっと前、京晋佑さんと池津祥子さんが演じられたのを観たことがあり、そのときも展開の面白さに心を惹かれた記憶があります。

しかし、今回はそのときとは別の感覚に惹きつけられてしまいました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

脚本:飯島早苗
演出:山本了(同居人)

入場すると
見慣れた王子小劇場とは思えないような
広い感じの空間に
接見室のセットがおかれていて
その左右に座席が並べられています。
どう観てよいのか勝手がわからず、
正直なところ、席を選びにくい・・・
後から入ってくる観客たちも、みんな一瞬戸惑っている。
それでもタイトルにちなんでチャイコフスキーのバレエ曲が流れる中
客席はほぼ満席となり客電が落ちて・・・。
金属の扉が開閉する音が闇に響いて、
再び明かりがついたときの
その場の雰囲気に息を呑みます。
この仕掛けの力にぞくっとくる。

その閉塞感のある空間での
多忙を極める弁護士と何らかの罪を犯した女、
カラスを挟んだありきたりな会話。
紋切り型の会話からほどけていく雰囲気があって。
やがて刑事事件の被告と弁護士というの裏側にある
二人の関係が明らかにされていきます。

事件の真相への興味に
二人の距離感が織り込まれて
たちまちどっぷりと接見室の空気に浸される。

客席は接見室の窓と直角の位置にしつらえられているので
二人の表情のどちらも真正面からみることはできない。
でも、というか、だからこそ
観る側はどちらかの立場に偏ることなく
その場の空気で物語の進展を眺めることができる。

絶妙な緩急、事件は紐解かれるように見えながら、
実はかつての二人の結婚生活や今の思いと絡まりあっていきます。
真実にたどり着くはずの歩みが
それぞれの過去の、そして今の想いを浮かび上がらせていく。

接見室ですから
二人とも概ね座り芝居なのですが、
二人の役者とも座してキャラクターを演じている印象は
ほとんどなくて。

幸運にも二人の役者の全身が見切れることのない席を
選ぶことができたので、
二人が上半身だけでキャラクターを演じているのではないことが
しっかりとわかる。
瀧川英次が演じる弁護士の苛立ちは、
表情や台詞使いの秀逸にとどまらず
開いた足の動きから体の角度、
視線の上げ降ろしの刹那にも生まれて、
その場の状況が全身から一気に伝わってくるように感じる。
電話の扱い方や動きの緩急など
台詞を半歩踏み出したような細かい表現にも
キャラクターの表裏が繊細に現わされていくのです。
被告の女性演じた伊東沙保にも文字通りつま先からの表現があって。
時に脚を椅子に絡ませて動かし距離感をつくり、
つま先を立て
あるいは靴の脱ぎ履きで、、
もちろん身体の他の部分にもナチュラルな動きを持たせて
想いの座標や内心の溢れ方や
感情のリラックスと緊張を
目を瞠るほどの密度で組み上げていく。

態は仕切られた部屋に座しての会話劇であっても、
気がつけば、
観る側はいつしか、その会話のやり取りよりも
二人の言葉や身体を含めた表現をひとつのものとして
冒頭に釣り上げられた好奇心の先、
そこに満ちる空気を追いかけているのです。

事実が解けきった終盤、
乖離していた二つのベクトルが一つに重なり合う感覚があって。
幾重にも重なり目隠しをし合っていた互いの想いの先の
真実が開ける

まあ、装置まで動かしたラストシーンは
もう少ししっかりと見せてもよいのかなという気がしましたが
でも、それはそれで、
作り手の意図するであろうテイストをかもし出していて。

観終わったあと、
ビターさと重さと、
それを凌駕した充足感がゆっくりと降りてきます。
その豊かなボリューム感に浸り込んでしまう。

この戯曲、冒頭にも書いたとおり初見ではなく
物語の顛末なども覚えていたのですが
そんなこと関係なく、舞台がしっかりと面白かった。

戯曲の企みを満たすにとどまらない、
舞台表現の創意や演じ手の底力に
がっつりと魅了されたことでした。

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