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KAKUTA「グラデーションの夜」語るテンポがものすごくよい

遅くなりましたが、4月15日と27日の二日間で、KAKUTA「グラデーションの夜」の2バージョン(群青・桃色)をみました。

会場はアトリエヘリコプター。

舞台上の空気の切れや膨らみにここまでの心地よさを感じる舞台はあまり経験したことがありません。

諸事情で黒を見損なったことがものすごく悔しい。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

基本的にはリーディングというか、
短編の朗読をベースにした舞台。
でも、この舞台には物語を読み聞かせることにとどまらない、
演劇的にイメージを広げる豊かな仕掛けがあって。

たとえば、数作の小説をつなぐ、もう一つのエピソードが
用意されていて
舞台の土台の態で
見る側を物語に引き込んでいきます。

ボーダーを感じることなく、ベースのエピソードに
小説が挟み込まれていく。
面白い本を広げて本を広げて
たちまちその世界にとりこまれていくように
物語が咳払い一つせずにやってくる。

朗読が、線描のように物語に輪郭を創り出していきます。
クオリティを持った朗読が
言葉のニュアンスにいくつもの色を与えていく。
その色に誘い出されるように
役者たちの演技が重なっていきます。

また、週替わりでの表現のコラボがあって。
群青の週は投影された写真たちでしたが、
それが本の挿し絵のごとく
物語のイメージを観る側に差し入れクリアにしていきます。
一枚の写真が物語の切れを作る。
あるいは舞台全体に映し出された公園の風景が
物語の曖昧な背景に具体性を与えたり。

桃色の週は音楽、
全身にその声が季節と登場人物たちの想いを彩ります。
観る側の全身に染み入るような
つややかな美しさを持ったボーカルが
美しいメロディーや映像とともにニュアンスを紡いでいきます。
なんだろ、物語の瑞々しさが
感覚の内側まで浸してくれる感じ。

両バージョンとも共通して、
その客席にいることがとても心地よく感じる。
ベースになる小説の世界が
観る側の思考のスピードと歩みを合わせるように
舞台を満たしていくのです。
語り綴るテンポが抜群に良いのだと思う。
筆舌に尽くせないような、
やわらかい高揚にどっぷりと浸されて。

こう、上手く言えないのですが、
物語を語るペースが本当に秀逸で
なにか自分の体躯にとてもあった服を身につけたような感じが
物語を追い世界が流れこんでくる楽しさの中に
潜んでいるのです。

さらに
この作り手にしか成し得ないであろう
この表現方法は、
作り手にとっても観る側にとってもいろいろな可能性を
秘めているような気がする。
作り手にとっては
自らが書き綴る物語とは別に
上質なクオリティで表現しうる
無尽蔵な物語が存在するわけだし
観る側にとっては様々な小説の
読むだけでは感じ取り得ない領域に導びいてもらえるわけで。
未読の小説はもちろんのこと
観終わったあと、すでに読んだことのある小説の
原作を読みたくなるのは
舞台が観客に原作の新しい奥行きを
与えてくれているからだと思う。

両バージョンの詳細(出演者等)は以下の通り

・群青の夜

朗読された作品:

桐野夏生 「ネオン」
いしいしんじ「正直袋の神経衰弱」
田口ランディ「ピエロ男」
川上弘美 「夜のドライブ」

桑原裕子オリジナル台本

出演:
成清正紀  若狭勝也  原扶貴子 高山奈央子  横山真二  馬場恒行 佐賀野雅和  桑原裕子(以上KAKUTA)

磯西真喜(演劇集団円) 西田薫  坪内悟  上瀧征宏 尾﨑宇内(てがみ座)  原田麻由 渡辺昇(北区つかこうへい劇団)

Collaboration

相川博昭(写真家)

・桃色の夜

朗読された作品:

田辺聖子 「いま何時?」
角田光代 「わか葉の恋」
三浦しをん 「春太の毎日」


桑原裕子 オリジナル台本

出演:

若狭勝也  原扶貴子  野澤爽子 高山奈央子   ヨウラマキ  桑原裕子 (以上KAKUTA)

西田薫  実近順次  坪内悟 植木祥平(渋谷ハチ公前)  柴田さやか 渡辺昇(北区つかこうへい劇団) 澁谷佳世

Collaboration

花れん(うた)&扇谷研人(ピアノ)

両日とも観終わって、どこかがずっとほわっとしていた。
群青と桃色の両バージョンそれぞれに
ほんと、どっぷりと嵌ってしまいました。

KAKUTAの通常の舞台も、とても楽しみだけれど、
このリーディングのシリーズの次も
同じように楽しみになりました。

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