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minami produce「とても個人的な物語」物語に誘い込む切れのよさ

2011年3月29日ソワレにてminami produce [とても個人的な物語」を観ました。場所は新宿眼科画廊。

濃密な空間を醸し、切れのあるイメージの膨らみを創り出す。作り手の創意を感じることができました。

(ここからネタバレがあります。十分にご留意ください)

脚本・演出:南慎介

新宿眼科画廊の空間が
開演前から出演者たちによって
次第に染められていきます。

床を埋め尽くしたたくさんの服。
台に置かれた原稿用紙とペン。
そして会場が出演者たちの空気に満たされて。

書くことが出来ない作家と
物語の世界をたどってやってきた編集者。
その会話から
やがて引き出されていく
彼女が出版した物語・・・。

連作のように書き綴られたという
短篇が舞台上に現わされ
彼女の想いと交差し
やがて彼女の現実に翻っていきます。

舞台のシーンの現れ方、
音やライトがメリハリをつくり
観る側にしなやかにその場の立ち位置を
伝えていきます。
切り替わるスピードやタイミングがとてもよくコントロールされていて、
だから観る側が入り組んだ多層の世界に
迷うことなく浸りこんでいくことができるのです。
瞬時に切り替わる空気、
やわらかく広がるイメージ。
それらは虚と実の綾織の態で
場の密度となって観る側を巻き込んでいく。

舞台に現わされたものと観る側がひかれるものが
乖離せずに撚り合わされるなかで
世界が姿を現わしていく感じ。
この世界の持ち主の
醒めた部分も浸った部分も
そして見えない部分までもが
そのままに伝わってきて
やがて書くことができない彼女の姿に至る・・・。

終盤、さらに物語は踏み込まれて
彼女が取り戻した感覚の肌合いが
しっかりと伝わってきて。
観る側にも解けた感覚がやってきます。
ただ、そこまでに伝わってきただけに
最後のシーンへの広がり方だけ
すっと因果が消えたような感覚もあって。
個人的にかもしれないですが
そこだけ、ちょっと取り残されたような感覚が残りました。

とはいうものの、
作り手の世界を組み上げていく手腕と
役者たちの空気の作り方の切れと密度の秀逸に
取り込まれ、
むさぼるように
舞台を見続けた95分でありました。

出演:だてあずみ。(TRAPPER/Minami Produce)
芝原弘(黒色綺譚カナリア派)
浅見臣樹 大塚友里衣 石井舞 窪田壮史 チバアカネ 竜史

役者たちのお芝居もくっきりとしていて、
観る側を手放さないような凛としたテンションがあって。
柔らかさと硬質な部分を演じ分けるしなやかさに役者それぞれが持つ
芯の強さや刹那ごとのお芝居のぶれのなさを感じる。

震災後、上演までいろんな苦労があったとのことでしたが、
それを意識させないクオリティが舞台を満たしておりました。

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