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カムヰヤッセン「サザンカの見える窓のある部屋」劇団の力量を知る

2011年3月3日ソワレにてカムヰヤッセン「サザンカの見える窓のある部屋」を観ました。

会場は下北沢「楽園」。

とても丁寧に作り上げられた作品、その質感に引き込まれるに留まらず、
劇団の様々な力量を感じることができました。

(ここからはネタばれがあります。十分にご留意ください)

脚本・演出・出演:北川大輔

出演:甘粕阿紗子 金沢啓太 遠藤友香理 小島明之

劇団員だけの舞台は初めてだといいます。
登場人物は5人。

物語は、現代をすこしはみ出した
近未来の態で描かれていきます。
記憶をチップに収めるという
今の技術ではありえないけれど、
すいっと観る側が容易に納得してしまうような
その仮定がまず秀逸。
劇中などでのそれを戯画化しての説明にも
何かをシンプルに伝える手練が感じられて。

さらに、チップ化という概念は
次第に記憶そのものの確かさや危さ、
そして登場人物自らの記憶のありようや、
そこに紡ぎこまれた恣意の姿まで
観る者に現わしていきます。

厳然とした記憶があって、
その一方で記憶自体が
抹消されたり改変されていく姿に
人が自らについて積み上げていく物語の
書き込みや読み込みの不完全さの必然が浮かび上がる。
その絵姿や感覚に
観る側が柔らかく深く共振していく。

語り口がとても安定していて、
決して単純な物語ではないにも関わらず
内包されたロジックにそのまま惹きこまれる。
コンパクトに観る側の掌のサイズに組み上げられ
彼らが共有する真実が
しなやかにシーンを満たしていきます。
ちょっとした仕草をトリガーに
天井に吊られた物たちがその場に降りて
記憶がメインメモリーに蘇る刹那が
驚愕にとどまらない
インパクトをのせた切っ先としてやってきて。
終盤のサザンカとボタンの散りゆく姿の比喩も
観る側に語られた「記憶」の肌触りを
すっと形に束ねて観る側においていく。

様々な表現に込められたニュアンスの
ひとつずつがほんと秀逸。
しかもそれらが単発で訪れるのではなく
重なりあって
生きることの質感へと昇華していく。

しかも、この舞台、
役者たちの出来が本当によくて・・・。

まず、北川大輔のお芝居が圧倒的。
元々この人でなければ描き得ない心情の曖昧さがあったのですが、
それが「悪い芝居」などへの客演で、
また一皮向けたような気がする。
台詞と台詞の間に描き出す心情の奥行きに目を瞠りました。
また、金沢亮太にしても小島明之にしても、
ただ演じるのではなく、
キャラクターにシーンの色を編みこみながら
表現し膨らませていく力があって。
2人がそれぞれに違った印象のデリケートさを表現できることで
物語の構造がエッジの効いた明確さで浮かび上がる。

北川を含めた3人の男優たちがしっかりと物語のコアを形成していく一方で
2人の女優たちはそれぞれの存在感で物語の枠組の部分を支えていきます。
甘粕阿紗子には、柔らかいお芝居のなかに父子の関係に巻き込まれない
存在感のようなものがあって。
この人は見るたびにお芝居のふくよかさを身につけている気がする。
遠藤友香理はキャラクターの密度や存在感を細微に出し入れしながら
舞台全体のトーンを作り上げていく。
舞台の中心を見つめる佇まいに
どこかコメディエンヌ的なロールを背負う色の踏み出しが作れる一方で
物語の核心を浮かび上がらせる台詞を
安定してしたたかに背負う懐の深さもあって。
観る側がそれぞれの役者のお芝居へと
身をゆだねられる。
彼女たちの醸し出す空気が
物語の枠や色をしなやかに編み上げていく。
それぞれがそれぞれに映えるようなバランスのとり方が
しなやかで、安定していて、ぶれない。

カムヰヤッセンの役者それぞれが
単にシーンを支え広げる筋肉のようなものに加えて
空気の粒子を個々に染めていくような繊細な表現を
しっかりと身につけていることを実感できました。

初日ということで
多少のギクシャクらしきものはあったものの、
作品全体の中ではまったくの許容範囲。
作・演出の才能の発露に加えて
劇団としての演じ伝える実力を
しっかりと感じることができる舞台であったと思います。

この劇団のこれからの展開が
ますます楽しみになりました。

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