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中野茂樹+フランケンズ「ザ・マッチメーカー」しなやかで重くなくて豊かな洗練

2011年2月25日ソワレにて中野茂樹+フランケンズの
「ザ・マッチメーカー」を観ました。

会場は座・高円寺1.

この作品は有名なミュージカル、「ハロー・ドーリー」の原作でもあるそう。

その味わいを損なうことなく、でも物語の世界に踏みとどまることなく豊かに広がる舞台のテイストにすっかりと魅了されました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

原作:ソーントン・ワイルダー『The Matchmaker』より)

誤意訳・演出:中野成樹
翻訳:水谷八也

出演:村上聡一 福田毅 洪雄大 竹田英司 田中佑弥 野島真理 
    石橋志保 斎藤淳子
    斉藤範子(Theatre劇団子)小泉真希 
北川麗 伊原農(ハイリンド) 
    多根周作
(ハイリンド
    ピアノ♪西井夕紀子



座・高円寺の舞台はどこかだだっ広いのですが、
劇場に入ると、
その広さを意にも介せぬように
中央に恣意的にどこか薄っぺらい装置がおかれていて。
一幕ではそのなかで、
原作や舞台の装置に縛りつけられることなく
原作を生かした語り口で
したたかに物語の仕込みがなされていきます。

舞台装置とバランスのとれた
平板を装いながら、
それだからこそ映える表現の豊かさとともに
物語の骨格が組み込まれていく。
お芝居がきっちりとなされていくなかで
たとえば登場人物の説明口調や主人の独白などが
心地よくリアリティを踏み出して、
観る側を飽きさせない小ネタが
要所でジャブのように効いて。
役者たちのお芝居が場を凌駕するほどに豊か、
登場人物それぞれの、作りこまれた、
時には人を喰ったような人物表現の秀逸に目を奪われる。
びとりひとりの人物像がくっきりとふくらみを持って描かれ
舞台装置や照明、さらにピアノの効果も抜群、
作りこまれた間や演劇的な約束や嘘までもが
舞台の深浅をシーンともにしやかなに操っていく。

そのなかでキャラクターたちのロールが観る側に
とても丁寧に渡されていきます。
この物語の狂言回しの存在もさりげなく埋め込まれて、
気が付けば必要なものはちゃんと観る側の手のうちにあって
舞台の流れに心地よく浸されているのです。

その仕込みが2幕以降に、
さりげなく、
でも、目を見張るほどに機能していきます
翻訳劇というのは、
往々にしてシチュエーションを理解したり
人物の名前を覚えることに集中を削がれたりもするのですが
この舞台にはそれがない。
原作が持っているであろうアメリカ人好みのコメディの底力が
観る側をがっつりとつかんでいく。
物語の構造が見えているから
ベタな舞台の造りが
安っぽさにならず
ニュアンスを強調するメリハリに変わっていくのです。
その強弱が物語の表層的な部分を笑いに変えていくだけでなく
登場人物たちの背負う普遍的な心情を
現出させていく。

帽子屋のドタバタのリズムの良さ。
ベースは一幕でもらっているから
広がっていくシチュエーションに迷うことがなく
その先にある帽子屋の女主人の
最高のレストランへの執着にも唐突さがなく
突き抜けたように可笑しい。
舞台に醸し出される
なにかが解き放たれたような混沌は
彼らにとって場違いな
バッテリーパークのガーデンレストランで
慇懃で洗練されすぎたギャルソンたちや財布の流れに煽られながら
問答無用な面白さとともに
さらに満ちていく。

そこまでに舞台が膨らんでいるからこそ、
終盤、舞台がそれまでのコンサバティブな雰囲気から
リフトオフして現わされるものが
物語から乖離せずにしっかりと伝わってくる。
さりげなく壁の部分に物語のタイトルを書きこんで、
観客を内に入れず外において物語の収束を俯瞰させて・・・。
ちょっとしたこと、馬鹿と分別、そしてお金・・・、
冒頭に主人公の一人として
召使いにあざとくしたたかな台詞にのせられ紹介(!?)された
その女性の蘊蓄のような言葉が、
物語全体を背負いながら
物語をエッジの効いた小粋な人生のエッセンスへと
昇華させていく。

冒頭から終幕まで
役者たちのお芝居には抜群の安定感があって。
美術にも物語が映えるような工夫や創意に加えて
広い舞台をきゅっと濃縮させるような力もあって。

場ごとの雰囲気にも魅せられて
一つずつのシーンに飽くことなく取り込まれて。
すっと拡散していく笑いと
コンテンツをしっかりと持った笑いのそれぞれの洗練に
2時間ごえのお芝居があっという間。

良い舞台を観たときの
ほっこりと満ちた高揚感とともに
劇場をあとにすることができました。

ほんと、こういうお芝居に出会うと、
劇場通いがますますやめられなくなる。
それほどに、とても秀逸な舞台であったと思います。

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