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*rism 「Prism」かわいさの本質を描く才気の圧倒

2011年1月25日、*rismの「Prism」を観ました。
会場は渋谷Le Deco3。

この作品、早めに会場を訪れることをお勧めします。場内に展示された写真たちをみるのもよいし、開演前の舞台を眺めるのも楽しい・・・。

(ここからネタばれがあります。十分ご留意ください)

入るとそこは、
女性というか女の子の雰囲気がただよう
どこかぬくもりをもった空間。
展示されている写真にも心を動かされて・・・。

席につくと開演前から居続けの役者たちの
とても女性的な会話が
会場の空気にゆっくりと拡散していく。

脚本:吉田小夏・谷賢一・成島秀和・小栗剛

演出:堀奈津美

出演:田中のり子、東澤有香、原瑞穂、松葉祥子、百花亜希、吉水雪乃

やがて開演時間がやってきて・・・。
物語に観る側を導くやり方が秀逸・・・。
少女が、「もう知ってもよいころ」と手渡された本を読む態で語られるのは
4人の作家による4つの童話を下敷きにした物語たち・・。

☆幸福の王子
吉田小夏脚本には
物語に、実直に積み上がっていく
表現の力がありました。
主軸になるふたりの役者が物語のボディを作っていて。
そこが揺らがないので
エピソードの重なりにクリアなふくらみが生まれていく。
高揚につながる無垢の質感を
まっすぐに受け取る感じ。
いたずらにシニカルになることなく
でも暖かさにぼかされることなく
物語のコアがしっかりと伝わってきて
やわらかくしっかりと浸潤されました。

☆ドリゼラの憂鬱
谷賢一脚本には
観る側を前のめりにさせる設定の秀逸がありました。
ガラスの靴で有名な物語の外伝のようなお話なのですが、
本編との表裏の作り方がとてもしたたか・・・。
ある種のウィットとリアリティが織り込まれて
この物語の主人公が浸された生活の質感に
表の物語がしっかりと裏打ちされていきます。
幼い女の子たちをときめかせる物語の筋立てを
纏うだけの密度が2人の役者にあって
母子の台詞、さらには
終盤、一生一度の思いから溢れ出す女性の業の鮮やかさに
息を呑みました。

☆おかしのいえ
成島秀和脚本には
インパクトの秀逸と
それだけに終わらせない物語の深さがありました。
骨組みを青い鳥を探す話に委ねた上で
道具立てをしっかりと並べていきます。
役者達がくっきりとコンパクトに描く登場人物たちの想い・・、
その運び方がしたたかに分かりやすくて、
突然牙を剥くようなカタストロフにも
因果がしっかりと見えるのです。
ポテトチップスの道具立てがしっかりと効いて・・
姉が弟に語るお話を塗りこめた
嘘の色合いのさりげなさと深さに、
大人になった女性のしたたかさが織り込まれて
その姿に目を見開きました。、

☆かみさまのけだものと 悪魔のけだもの
小栗剛脚本にはスケール感がありました。
神と悪魔の確執の姿に
種を背負うような普遍性が織り込まれて・・・。
その成り行きは
やがて、山羊と狼の物語を超えて
世界の物語となり
その先に人間が置かれて・・・。
物語を追っていくうちに、
人の成り立ちが寓意とともにやってきて
さらにその先に少女が置かれる。
彼女の目は悪魔が与えた山羊の目だといいます。
かわいさの内側に置かれた
悪魔やけだものの姿がすうっと垣間見えたような気がして。
その結末の含蓄の深さに圧倒されました。

終わってみれば個々の物語の秀逸に加えて
物語をつなぐ仕掛けのしたたかさに舌を巻く。
本を読み進めるに従って
大人の女性の内心に宿るものが
次第に垣間見えてくるような感覚がやってきて・・・。
終わってみれば、かわいさや美しさの表層にとどまらない
「女性」の奥行きがしっかりと照らし出されていて・・・。

それは、場内に飾られていた写真たちからやってくる
常ならぬ感覚にも重なっていて・・・。
表層のどこかPopでくっきりとした感じに
不思議な奥行きがあって心を捉われる感じ・・・。

堀奈津美、そして*rismの才気にがっつりと捉えられたことでした。

拝見したのが初日ということで
役者たちのお芝居にやや硬さはみられたのですが、
よしんばそうであっても
役者たちそれぞれに力をまっすぐに発揮できる場面があって
強く惹かれる。
6人の女優たちそれぞれの魅力が豊かに感られる舞台でもあって。

また、回を重ねるごとにさらなる膨らみも期待できるかと思います。



回を重ねるごとにさらなる膨らみも期待できるかと思います。

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