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北京蝶々「あなたの部品 リライト」 新しい広がり

少し遅れてしまいましたが、2012年12月14日ソワレにて北京蝶々「あなたの部品 リライト」を見ました。会場は渋谷Le Deco4。

外部から演出を招いての初演とはまったく異なる作品の質感に、新しい劇団の力を感じて・・・。

見応えのある作品となりました。

(ここからねたばれがあります。十分にご留意ください

脚本:大塩哲史

演出:黒澤世莉

初日を拝見。

初演も観ているのですが「リライト」は看板でも誇張でもなく良い意味で似て非なる作品。

でも、方向転換とかそういう感じではなく作品のコアにあるものが大きく間口を広げて豊かに表現されていくような感覚がありました

自分が持ち合わせているものや
自分が求めるもの、
あるいは捨て去りたいもの・・・・。
そして、どこまでを自分と認識するかの、
線引きの感覚。

初演時は、それらが社会的な線引きや国家の概念に
重ね合わされていた記憶があるのですが、
今回はキャラクターたちそのものの感覚を
紡ぎ合わせることによって
それぞれののボーダーに対しての感覚が
しなやかに表現されていました。

その中に
初演時に戯曲が内包していた作品のコアの部分が
失なわれることなく「リライト」されていて・・・。

それを成り立たせるための
皮膚感覚に近い空気、
細かい粒子に昇華したような感覚が
役者たちによって醸し出され
観る側に浸透していきます。

どこか手造り感をもった質感が
観客を包み込むように舞台に引き入れてくれる。
役者たちの表情や台詞が
そのまま入り込み
キャラクターの
感覚や温度として観る側に重なっていく。

初演時にはひりひりとした物語の展開の中で浮かび上がっていた
個々のキャラクターの感覚や既存のフレームへの喪失感が、
ベクトルを翻して・・・。
役者たちの身体から伝わってくるものが
観る側に感覚として置かれ、
それらはやがて組みあがり
物語として観る側の内に形成されていくのです

そこにはいままでの北京蝶々には
ないテイストが残りました。
でも、彼らがこれまでのものを捨てたという感じはまったくなく
表現の間口がぞくっとくるほど大きく広がったように思えた。

これまで内側に隠されていた
彼らの力たちのいくつかが
今回の演出家によって解放されたような感じ。
劇団の作家にしても役者にしても
鎖が一本はずれて、
解放された力からやってくる広がりと豊かさが
舞台上からしっかりと感じられて。

森田祐吏には奥をあからさまに押し出す踏み込みがありました。すっと滲み出るのではなく、崩れながら一枚ずつ現れてくるような感じのリアリティにひきこまれる。岡安慶子には独自の存在感がありました。物語との距離感を絶妙に保ちながら、キャラクターの個性をすっと観る側に伝えていく。外部への出演で蓄積されたものが精緻さとなって顕れている感じも。田渕彰展にはキャラクターの内外のギャップを醸し出す力を感じて。暴きだされる内心の露出する感じにしっかりと説得力を作り上げていく。帯金ゆかり には舞台の切れや明るさを作りだす天性の力のさらなる伸びに加えて、舞台にキャラクターを埋め込むような力を感じました。軽さや器用さで舞台の色を作りだすにとどまらず、キャラクターが抱える質量を表現する重さが絶妙で、演じるものがあるがごとく舞台に縫い込まれていくのです。
客演陣のお芝居も実に秀逸でした。酒巻誉洋は物語の核をしっかりと背負って見せました。気負いのないしなやかなお芝居ニは自らのキャラクターのみならず、他のキャラクターの色をしっかりと引き出す力があって。菅野貴夫はキャラクターが持つこだわりにバックボーンを組み上げて見せました。太さをもったお芝居の質感にキャラクターの想いが細緻に組み上げられていて。横道毅の演技には腰の据わった力感があって狂気の輪郭が鮮やかに浮かび上がっていく。舞台を貫く心張り的な部分を担ってみせました
木村キリコのお芝居には狂気のなかに貫く感覚があって、後半に物語の色合いを幾重にも深くする力にもなっていました。金子久美にはキャラクターが纏った美しさへの感覚を変化させるしなやかさがあって・・・。美を美として表現することができる天性に加えて気負いなく伝わってくる心情の変化に強い説得力がありました。 熊川ふみ はこのところ観るたびにお芝居の切れに惹かれている役者さん。今回も滲みだす感情の源泉の底深さが力技ではなく刹那の表情や醸し出される空気から柔らかく強く鮮やかに伝わってきてきました。

役者たちの献身と演出の豊かさで、単に舞台の前面にとどまらない全体で作られていく空気に息を呑む。
舞台奥というか背景側のお芝居にも心を染められて・・・。
物語が満ちたあとの、
エンディングにつながるところに
若干の空気の段差を感じたものの
帰り道、置かれた感覚が消失することはありませんでした。

間違いなく新しい力を得たであろう北京蝶々、
次にはまた異なった演出家による舞台が予定されているとのこと、
本当に楽しみになりました。

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