劇26.25団「可愛い怪物」口当たりの軽さを醸し出す力量
2010年12月25日ソワレにて劇26.25団「可愛い怪物」を観ました。会場は下北沢駅前劇場。
ちょっと不規則な物語の進め方がしっかりと生きて、時間を忘れて見入ってしまいました。
(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)
作・演出:杉田鮎味
出演:赤荻純瞬/長尾長幸/杉元秀透/杉田鮎味 以上、劇26.25団
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赤崎貴子/須藤真澄/墨井鯨子(乞局)/田島冴香(東京タンバリン)/中川鳶
林佳代/宮本愛美(7%竹)/山本美保/吉牟田眞奈(THE SHAMPOO HAT)
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稲森隆一郎/柿田パリス(東京パリ帝国)/塩瀬篤也(負味)/永山智啓(elePHANTMoon)/前田雅洋
物語は大きく分けて3つの時間で描かれていきますが、
時系列どおりではない。
でも、その時代たちの置き方がよく工夫されていて
特に中盤以降、
平板に物語を流していては現れないものが
すっと立ち上がってくる感じがありました。
時代をつなぐ糸のかけ方に無駄がなく
それぞれのシーンの色を消すことなく全体をつないでいく。
もちろんキーになる部分はしっかりと固めてあって・・・。
そのあたりの力加減の秀逸から
時の流れに対する俯瞰のような感覚が次第に醸し出され
たとえば、後悔を感じる部分やその受け入れ方、
時間の変遷とともに変化していくものと
そのままに居座ろうとするものが
とてもしなやかに浮かび上がってくるのです。
それぞれシーンに膨らんだ雰囲気が
明確でくっきりしているのもよい。
なんだろ、観る側にとっての風通しの良さがあって
様々なウィットや
ちょっとしたバイアスのかけ方が
物語を歪めることなく
観る側に物語の一歩奥までも照らしてくれるので
時間が前後する物語の構成が少しも気にならない。
主人公をタイムトラベルさせることにしても
派手さや嘘っぽさがなく
記憶と現実の端境あたりの感覚で
行われるあたりが上手いなぁと思うのです。
役者たちから伝わってくるものも、
個々にきちんとキャラクターの色があって、
よしんばカオスのようなシーンになっても
絶妙にばらつかず混じり合わない。
キャラクターたち関係や距離感が
上手く作られているからだろうと思うのですが、
それぞれのシーンに
舞台全体に奥行きと見晴らしのよさを
一度に醸し出していくような力があって、
不必要な重さがうまく排除されている感じがする。
さくさくと観て、面白かったと思い
気がつけば母娘を中心とした時間の肌合いが
しっかりと残ってくれている・・・。
派手さはないのですが、
なにげに箸が美味しいご飯を
味わいをあれこれ楽しみながら心地よく完食した感じ。
すなおに時間を忘れて観通して、
腹もちのよさというか
心に残るなにかがちゃんとある。
この劇団、ここ数回の公演は時間などが合わず観ることができなかったのですが、
そのことがとても残念に思えるようなよい出来の作品でありました。
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