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MCR[神様さん」階層を描く力量

2010年10月22日 MCR「神様さん」を観ました。会場は三鷹芸術文化センター星のホール。この作品については10月29日にリピート。2度見てそれぞれに取り込まれてしまいました。

(ここからネタばれがあります。公演期間中でもあり、十分にご留意ください

作・演出:櫻井智也

場内に入ってびっくり。
客席が地についていないし舞台も立体化されたような3層構造。
なんというか「百聞は一見にしかず」的なセットが組み上げられている。
横にはDJブースが設えられて開演前から朝番組的なパフォーマンスがあって
場内の時間に実存感がうまれていきます。

最上階の女王たちの世界のちょっとシニカルなデフォルメ、
嘘っぽさのなかで不思議にとても瑞々しくて・・・。
その世界の説得力が物語全体を生き生きと動かし始める。

落書きのような絵を描く中間層の画家やメディアの世界にしても、芋煮会をする下層の世界にしても観る側を得心させるだけのニュアンスが込められていて。作り手が綴り上げる寓意たちの洗練に舌を巻く。

世界がためらいながらも交わる中でそれぞれから滲み出すペーソスにじんわりと浸されていきます。
舞台上の噛み合わない想いの重なりと距離感におかしさを纏ったとてもピュアな感覚が
姿をあらわして・・。キャラクターたちに浮かび上がる心情に柔らかく掴まれる。

成り行きから女王様に謁見した男のファン心理に近いような想いや、
その想いに恋してしまう女王の純真さはそれぞれに巧妙に薄っぺらいのですが、
それらは、キャラクターたちの不思議な実存感と想いの普遍性に裏打ちされていて
すっと観る側に入り込んでくるのです。

終盤、女王様の、けれんにも思えるチョロQを彷彿とさせる戻り方があざとくならないのは
その世界の構造が舞台装置の外連に頼るだけではなく、
個々の立ち位置や抱えるものが密度を持ってしっかりと描かれているから。
演説での女王様の突き抜け方にしても
絶妙にご都合主義でウェルメイドな物語の納め方にしても
そこまでの登場人物のキャラクターについてのこまかい描き方があるから
出来ること。

よしんばチープでラフな童話のような質感であっても、
恣意的にはみ出し感を持ったデフォルメがほどこされていても、
個々のシーンでの登場人物たちの心情の解像度に観る側を浸潤するがっつりとした力があって。
舞台に設えられた3段のステージをキャラクターたちが行き交うとき、踏み越えることの高揚と、踏み越え得ないものからやってくるペーソスがそのまま観る側に流れ込んでくるのです。

出演:桑原裕子(KAKUTA)/有川マコト(絶対王様)/奥田洋平(青年団)
中川智明/ 櫻井智也/おがわじゅんや/北島広貴/上田楓子
江見昭嘉/福井喜朗/渡辺裕樹/小野紀亮/石澤美和/日栄洋祐


貫き通されたデフォルメのなかで切れ味と豊かなニュアンスを同居させる役者達のお芝居にぐいぐいと引き込まれてしまう。
それぞれにキャラクターの色をもう一歩踏み込んで押し込んでくるような力があって、
気が付けば、ふっと今を俯瞰するような感覚が観る側に置かれている。

MCRワールドの魔法に大きく立体に組まれた舞台がさらなる力を与えて・・・。
あっという間に時間が流れ終ってみればその世界に深く取りこまれておりました。

観るたびにある種の嵌り感に囚われる・・・、MCRの魅力を今回もしっかりと感じたことでした。

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ちなみにリピートしたのはどうしても観客席の枠外に作られた最前列でこの作品を観たかったら。開場時間に少し遅れてしまったものの、何とか希望で再見することができました。

実際にそこで観劇すると、上部で観たときと感覚がかなり違う。最上段の役者さんの足が若干見切れるのですが、そのかわり、それぞれの階層のキャラクターが昇ったり降りたりする感覚がしっかりと伝わってくる。

そのなかで、1回目の目線と2度目の目線それぞれを受け止める戯曲の描き方がなされていることに気づいて。女王から下を観る視座と民から上を観る視座の双方が物語にしっかりと縫い込まれている・・・。

櫻井作劇の奥深さを感じたことでした。

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