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コマツ企画「どうじょう」どうしようもなくなるほどの面白さ

2010年10月24日 コマツ企画「どうじょう」を観てきました。会場は下北沢OFF・OFFシアター。

コマツ企画は先月の三鷹に続いての2カ月連続公演。前回とは異なる切り口からの人間のコアの部分の表現が桁はずれにおもしろく、時間を忘れて取り込まれてしまいました。

(ここからネタばれがあります。公演期間中でもあり、十分にご留意ください)

作・演出:小松美睦瑠

開演すると、そこは雑居ビルの一室。まったりした雰囲気からそこが非合法すれすれの男女紹介所であることが浮かんできます。

その、男女紹介業の建前のなかで
そこを訪れる男女の
あからさまな本音が引き出されていくのです。

まずは
そこにたむろする常連男性たちそれぞれの
本音の隠し方というか
建前の取り繕い方が
ある種の哀愁を感じるほどに
おかしい。
昔々、下世話なキャバレーに、
「紳士の社交場」なんていうフレーズがついていたことがありましたが、
それに近い感覚があって
それぞれの薄っぺらな表皮の纏い方が
かえって、個々が持つ男たちがもつ本音の匂いを
おもいきり醸し出していく。

その本音の漏れだし方も
一層ではなく
本人たちが隠し持っている劣情にくわえて
さらにその奥にある
キャラクター自身が気づいていないような
深層心理までも浮かび上がらせていくのです。

本井博之が演じるじいさんのあけすけな劣情とせこさが場の色をしなやかに染める。政岡泰志の醸し出すどこかチープで折れやすいプライドや、その常連ぶりの押し出しの強さも絶妙。小林タクシーからあきれるほどまっすぐに伝わってくるキャラクターの心根はコミカルですらあり、しかもリアリティがあってぞくっとくる。佐野功が醸し出すインテリ臭もしなやかで、でも流れることなく鼻につくような実存感があって。

キャラクターがそれぞれに、自分では気づかない体臭を漂わせている感じに眼を見張る。

女性たちの描写には男性とは違う肌触りがあって、内面の伝わり方も男性ほどあからさまではない。その男女の温度差がしなやかにほの悲しく、でもどうしようもなく可笑しい。
その一方、やがて剥ぎ出されていく女性たちの纏うものと本音、さらにその奥に抱えたものには男性とは異なる屈折や凌駕するような深さがあって、目を奪われる。
紹介所だけではなく、上手におかれた外のスペース設定でのさまざまな雰囲気や取り繕いきれないキャラクターたちの想いが、観る側を深く取り込んでいきます。

松本美奈子は説得力をもった美しさでキャラクターの実存感を作り上げていました。宍戸香那恵の描き出すプライドは凛とした表皮とさらに深い奥行きがあって。墨井鯨子の演じ上げる女性の曖昧さと依存心はしなやかに持ち重みのような感覚を観る側に伝えてくれる。この人だから描きうる想いの質感があって実に秀逸。

紹介所のスタッフたちも絶品の出来で、舞台全体に冷徹な視座を作り、訪れる人々の個性を強調していきます。町田水城の作りだすキャラクターの仕事のスタンスというか醒め方が実にうまくコントロールされていて。斎藤加奈子も、個性的な他のキャラクターに埋もれることなく一般的な感覚というか基準線を場に作り上げて見せました。この人は観るたびにお芝居が良くなっていく感じがあって。本井とのバトル(?)などには観る側をひと膝乗り出させるようなクオリティがありました。

そこまでに作りこまれているから、客席から登場する小松美睦瑠が終盤に導く
うそっぽいというか確信犯的な高揚にも説得力とグルーブ感すら生まれ
がっつりと掴まれてしまう。
舞台の範囲というか演劇の枠を崩壊させて溢れ出してくるものに、
あけすけさや可笑しさの重なりを踏み越えたさらなる質感があって息を呑む。

崇高とか高尚とかいうのとはちょっと違うのですが、この舞台だからこそ感じられる
人間臭さの昇華のようなものがあって。それが臭覚だけではなく個々のシーンの温度へと醸成されてしっかりと伝わってくる。

この感じは、かなりすごい。

しかも、そこまでの突抜けがありながら遊び心が随所に光ります。たとえば、イルカを食べる話の不思議な説得力。あるいは、佐々木潤が演じる場ごとにあらわれる気の弱そうなやくざさんなども、筆舌に尽くせない絶品さがあって。贅沢な役者の使い方ではあるのでしょうが、そのキャラクターだけでも十二分に可笑しい上に物語のコアに入って行けないキャラクターだからこそ場にするっと現れ男女の劣情のエッジを際立たせる力もあって。

観終わってしばし呆然。それからゆっくりと満足感がやってきました。苦さとおかしさとどうしようもなさとペーソスが渾然一体のスープにされているような感覚。作り手の幾重にも重なった表現力を思い返して舌を巻く。

べたな言い方ですが、ほんと、掛け値なしにおもしろかったです。

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コメント

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投稿: BlogPetのr-rabi(ららびー) | 2010/11/05 15:14

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