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劇団チョコレートケーキ 「起て、飢えたる者よ」史実を取り込む力量

2010年10月27日ソワレにて劇団チョコレートケーキ「起て、飢えたる者よ」を観ました。会場は渋谷、Le Deco 4F。

息詰まるような時間の描き方に眼を見張りました。

(ここからはネタバレがあります。十分にご留意ください)

【作】古川健
【演出】日澤雄介


【出演】
岡本篤 /古川健 / 日澤雄介
菊池豪 / 西尾友樹 / 蒻崎今日子(JACROW)


インターナショナル」が歌われて
開場前の空気がすうっと染められて・・・。

その空気のまま、
山荘のシーンにすぅっと包まれる。
恣意的に作られた
どこかぼやけた空気のなかに
5人の男たちが入り込み
空気がさらに塗り替わる。
その、ストイックな雰囲気の中で
物語が広がり始めます。

教条的な考え方には
ある種の力が裏打ちされていて、
よしんばそれが歪んだものであったとしても
彼らの貫く不器用さには説得力がある。

設定も冒頭からフィクションなのですが、
そこには史実の色が深く漂っていて、
その事件をリアルタイムで知っている世代だと
その結末を想起しながら物語に取り込まれていく感じ。
だから、その管理人の女性が
捕捉された組織のリーダーに憑依していく後半の展開は意外で
そのなかでの個々のキャラクターの姿に
ますます取り込まれてしまう。

5人の男たちそれぞれの
純粋さと思惑に
管理人のかつてのリーダーが憑依した剃刀のような理論が
ぞくっとくるような感覚で重ねられて。

理想を求める強さ、
それが現実と乖離し挫折していく感覚、
さらには教条の行きつく先がもたらす崩壊が
皮膚感覚で伝わってくる。
その圧倒的な説得力と
受け取る側の脆さに息を呑む・・・。

そこには殉じる美学があって
でも、殉じる美学によって
歪められ隠されるものもたくさんあって・・・。
ラディカルな革命思想に込められた
戦時中の標語のようなストイックさと
そのなかでの、個々の想いの生身の部分に
観る側までが削られるように圧倒されてしまうのです。

思想の肌触りがとても緻密に描かれたことと
その中で個性や想いを現わしえる
役者たちの想いが至近距離でひりひりと伝わってくる。

管理人の女性の描き方も実に秀逸。
思想が入り込んでくる部分にこそ
もう少し描き込んでほしい感じはあるものの
イノセントな冒頭の部分の物憂い感じと
理論武装してからの力強さの落差には
ひたすら瞠目。

史実を見据え、縛られることなく
そのなかに潜む構造をしっかりと組み上げた舞台。
作り手の慧眼に息を呑み
舞台美術やライティングの力
さらには
構造を肌合いにまで昇華させた
役者たちの底力に圧倒されたことでした

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コメント

Hallo
Toller Blog, aber leider sehe ich nur die hälfte.Ist Euch das bekannt?
Liegt das an meinem Safari?

Alles Gute aus Frankfurt

投稿: potenzmittel | 2010/11/23 22:07

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