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東京ヴォードビルショー「ルートビアーズ」纏うものを晒す手腕

2010年9月29日、東京ヴォードビルショー、京極圭プロデュース、「ルートビアーズ」を観てきました。会場は中野ポケット。

役者の秀逸と相まって、桑原ワールドにしっかりと捉えられてしまいました。

(ここからネタバレがあります。十分にご留意ください。)

作・演出 : 桑原裕子

出演: まいど豊・京極圭・櫻井智也成清正紀植田裕一本間剛幸野友之・村田一晃・奈良﨑まどか・芹沢秀明高山奈央子大枝佳織・金澤貴子・黒川薫

冒頭の短いシーンの蓄積でぐいっとひっぱられ
そのまま、物語の醸す雰囲気に閉じ込められる。

そこから観る側に
やくざのリーダーの記憶が消えた姿と
挿入される夢の女性のイメージの重複が
次々に重ねられて
観る側があっという間に前のめりになっていきます。

やくざの世界の緊張感や
拘束された男たち・・・。

物語の本筋をしっかりと保ちながらの
凄味を失ったリーダーと
嵐による待機で解けていく時間が
とてもしたたか。
日本からやってきた愛人や
女衒たちが連れてきた女性やその家族などが
単に物語を膨らませるだけではなく、
彼らがやくざとして纏う
気概をもしなやかに外して見せるのです。

その解けた感じが
やくざたち自身ににとどまらず
周りのキャラクターたちの姿を
照らし出していく。
記憶を失ったリーダーだけでなく
個々の人間臭さが浮かびあがってくる。
よしんば拘束されている二人の男であっても、
消されるはずのふたりがすごすモラトリアムの時間が
次第にその場の雰囲気に馴染んで、
彼らからも、個性が滲みだして場の色に変わっていくのです。

気がつけば、作り手が仕組んだエアポケットのような時間に導かれ、
その時間の質感に照らし出された
ウイットとペーソスの隠し味を持った秀逸な役者たちの人物表現に
取り込まれてしまう。
それが、単にコアをさらけ出すのではなく
彼らが纏うものを、切っ先をもって観る側に伝えていく・・・。
作り手の作劇の手腕に瞠目するばかり。

冒頭、ルートビアーを口に含んで
記憶が飛ぶシーンの説得力が
終盤記憶の戻るシーンで再びやってきます。

やくざたちもそれぞれに
一旦緩めていた気概を再び纏う。
大胆に挿入されたリーダーと妹の時間が
したたかに生きて物語の全容を見せる。
伏線が鮮やかに回収されているので
その姿は凛として、べたな言い方をすればカッコ良い。
中盤に醸し出された空気とのコントラストに
キャラクターたちが纏うものが
鮮やかに浮かび上がる。

さらには
捉えられた男たちの結末も
しっかりと抜けきってくれて
舞台の余韻を切らない・・・。

決してテンションや形だけで押すような舞台ではないもにも関わらず
こういう作品は観ていて痺れます。

初日ということで
数か所、ふっと空気が留まる部分はあったものの、
それが感じられるほどに充足された
舞台上の密度にがっつりとやられて。
いろんな色に満たされた時間に浸りきることができました。

終わってみれば、
観る者を放さない豊かさを持った
極上のエンタティメントでありました。

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    コメント

    きのう、留意された。
    だけど、挿入した?

    投稿: BlogPetのr-rabi(ららびー) | 2010/10/07 15:17

    東京ヴォードヴィルショー

    投稿: 劇団名が間違っている | 2010/10/08 20:43

    ご指摘ありがとうございます。

    劇団名修正させていただきました。
    大変失礼いたしました。

    投稿: りいちろ | 2010/10/08 22:54

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