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pp1「解散(仮)」物語の世界に耳ダンボで聞き入ってしまう

2010年9月1日、pp1「解散(仮)」を観ました。会場は渋谷スンダランドカフェ。演劇好きな方にとっては、ルデコのもう少し先といえばわかりやすいかもしれません。

チケットは完売の盛況、それほど広くない空間で、ちょっとコミカルででもはまりこむような時間を楽しむことができました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

作・演出 :大根健一

出演   :塚原みほ・倉田知美

女性二人の会話劇、
冒頭からの噛み合わない雰囲気に
いきなり取り込まれます。

二人はアイドルグループのメンバーをしていたらしい・・・。
というか今もしているらしい。

人目を意識するような風貌や仕草とは裏腹に、
すでにほとんど忘れ去られた存在であるという現実が
あって。
その「ほとんど」具合が絶妙なのですよ。
想いと現実のギャップからこぼれるような
個性の異なる二人の女性それぞれの、見栄やいらだちや互いへの反発心、
さらにはそんな日々への懈怠といまさらの「解散」の言葉が
幾重にも重なって舞台に満ちる。

役者それぞれのキャラクターの作り方や間の取り方がしたたかで、
観る側は次第に、場の空気感やキャラクターの個性に囚われていくのですが
でも、そこでかもし出された雰囲気は実はお芝居にとってはベースにすぎない・・・。

作り手は、
そんなふたりの刹那を描くに留まらず
それをがっつりと動かしてみせるのです。

ツイッターの書き込みによって
外からの視線が差し入れられることで
アイドルだった二人に刷りこまれた感覚が
掘り起こされていく・・・。
彼女たちの自意識が
その世界の人間の業とでもいうように
浮揚していきます。

舞台の奥の窓から見える夜景に、
閉塞したその場と
見知らぬファンの存在の妄想が
不思議な確かさを醸しながら繋がって。

ファンの存在を意識して
一旦脱いだ帽子とサングラスを再び身にまとい
存在を再び隠すのも上手いと思う。

さらには出来事が重なって
彼女たちをじわりと内から高揚させていきます。
彼女たちの目撃情報はツイッター上でRTされていくし、
店内の有線からは唐突に
彼女たちの曲が流れる・・・。

お互いの会話には
息絶えかけていたアイドルの自意識と
アイドルとはいえない、
むしろチープなリアリティが混在し
べたなウィットやペーソスへと色を変えて
観る側に流れ込んでくる。

うまくいえないのですが、
この舞台には
説明なんてなにもないのに事情がすっと伝わってきて、
観る側の耳をさらにダンボにさせてしまうような力があるのですよ。
笑えるというのとはすこし違うのですが、
でも胸の奥でビターな可笑しさが重なって、
さらに前のめりになってしまうのです。

脱ぐだの介護士を目指すだのという
現実の世界を話していたふたりが
アイドルの世界の徳俵に踏みとどまる中
メインボーカルの女性の妊娠という
さらなる事態に直面して・・・・。
で、そこで思いが収束するのかと思いきや
もう一段の箍が外れて・・・。

これだけ、波長の合わない二人が
グループの解散に振れるのではなく
メインボーカルを新たに探すという
別の共通したベクトルに歩みをそろえる姿に
愕然となるのです。

でもカーテンコールの拍手をするなかで、
物語の意外なラストが
不思議に納得できてしまうのがすごい。

特に意識なく観客が観る中で、
実はキャラクターたちのコアの想いを伝える
様々な仕掛けが組まれ、
回収された作品なのだと思う。

拝見したのは初日とのことで、
ほんのすこしだけ場のテンションが切れる部分や
舞台の温度に抑制が聞かない部分もありましたが、
でも、よしんばそうであっても、
観客を惹きつけきる舞台の空気の動きには、
常ならぬものがあって。
公演を重ねるにつれて
さらなる空気の閉塞やはみ出し方のしなやかさが
生まれていくような余白も感じて。

会場を後にする時には
作り手の腕の確かさをがっつりと
思い知らされた公演でありました。

もうチケットはほとんどないようですね・・、
ほんと、お勧めなのですが・・・。

できることなら、私ももう一度観たいです。

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