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#thericeshow 「私が一粒の米であったら」 次第に広がっていく米粒の存在感

2010年9月19日、シアタートラムでの観劇後、三軒茶屋生活工房ワークショップで上演中の「私が一粒の米であったら」を観ました。

このパフォーマンスは、従前からお話や噂を聴いていて、是非に観に行きたかったものなのですが、実際にその場に立つと、ゆっくりと降りてくる想像しえなかった感覚に包まれました。

(ここからは実際の内容に触れている部分があります。ご覧になる予定のある方はご留意ください。)

キャロットタワーの4階、そこには広々としたスペース。

入口脇に小さめのボウルに入れられた米が置いてある。掲示の指示に従って一粒を手に納めて会場へと入ります。

そこには大小の米の山、さらには紙の上に置かれた米粒たちが、あちらこちらに並べられている。かすかに米の香りも漂っています。奥のカウンター状のところでは研究員というかスタッフがなにやら作業を続けています。

米粒の量が示すものは添えられている説明を読むだけですぐに理解できる。米の数は人の数。説明に書かれた定義によって当然に米粒の量が変わり、そのボリュームが視覚として観る側に伝えられていく。

たとえば、その年代の特定の地域の住民の数、あるいは独身者の数なんていうのもある。特定の人物が定義されていると、そこに置かれている米粒は一つ。大都市の人口なんていう定義がされている場所には、当然に米が山と積まれています。

最初は単純にそこに置かれている数のボリュームに目がいく。その量に驚いたり、一方で意外と少なくて、もう一度正確な定義を見直したり・・・。自分に関連のある定義では、手の中にある一粒の米から、自分がその山を形成する米粒の一つであることに思い当たり、不可思議な感覚が芽生えたり。

そのうちに、それぞれに置かれている米粒に込められた、様々な世界への切り口にも目がいくようになる・・・。定義自体に込められた創意に心惹かれていく。単に個々の定義で目を引くもの、たとえば独身者の数とかHIVに日々感染していく人の数とかetc,etc。それがボディブローのようになって関連や時系列や比較が織り込まれた複数の米粒の集団。そして米粒たちが形成するシェイプにも、ワンショットのアイデアを超えたふくらみを感じ始めるのです。イチローの米粒がひとつおかれ、それと同等の年収を稼ぐための米粒の集団が隣におかれる。スタジアム型に形成された米粒たち(入場者数を現わす米粒のボリューム)。厳然とした事実に編み込まれたシニカルな感覚やウィットにぐいぐいと取り込まれるようになる。

さらに展示を追っていくうちに、床の上に様々に置かれた米粒とその説明たち、さらには広めの展示スペース自体がとても豊かなものに感じられる。そこにはミクロとマクロの混在があって、これまで感じたことがなかった世界の質感にとりこまれてしまうのです。

窓際のカーテンに隠れるように展示された某機関に思わず吹いて、そのあともしばらくにんまり。しかも、その場所は毎日移動するのだとか・・・。研究員たちが働く姿や、展示が固定されるのではなく、日々動いているという説明を伺って、さらにヴィヴィッドな世界に浸って。

ひととおり観終わって、もう一度会場を広く眺めたとき、そこには柔らかい鼓動を持った世界を感じることができました。そのうえでもう一度、展示を観ていくと、米粒達が表現しているものが、さらに表情をもってやってくる。二重三重にやってくるものがあって、さらに見入ってしまう。そこに、指先にあるひとつぶの米の感覚が重なって再び世界が個に収束していく。世界の広さと深さにとどまらず、個々の米粒の世界にも想いを馳せる。

演出:James Yarker

出演:Charlotte Gregory ・ Jake Oldershaw ・ Graeme Rose ・ Grame Rose ・ Craig Stephens ・ Jack Trow ・ 角本敦

会場が出て、エレベータの中で、自分のなかにある高揚に気がつく。主語と述語がともに見つからないその高揚に、この表現の深く瑞々しい豊かさを再び感じ息を呑んだことでした。

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