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KAKUTA「めぐるめく」、ばらつきとまとまりの落差からの俯瞰

2010年5月26日、KAKUTA,「めぐるめく」を観ました。会場は三軒茶屋シアタートラム。KAKUTAは、前々回に観た「甘い丘」、前回観た「目を見て嘘をつけ」とも強く引き付けられた劇団。

今回の公演もとても楽しみにしておりました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

作・演出 桑原裕子

冒頭、クリスマスのシーン。11年間昏睡状態だった四人姉妹の長女の意識が戻ったことを知らない3人の妹や、妹と暮らす長女の長男のそれぞれの日々の中での荒み方が、ちょいとエッジを効かせて展開し、観る側が物語の世界にのせられていきます。

シーンのしなやかな切り替えや、舞台に満ちるアンサンブルを含めた人の動きが舞台の時間に質感を作り出していく。シーンたちに含まれるウィットが登場人物たちの生活スタイルや生活感を端的に編み上げそれぞれからからこぼれ出る下世話な日々の感覚を観る側に擦り込んでいく。

その下地があるから、3人の妹やその周りの人たちに長女が姿を見せるシーンがとてもヴィヴィッド。あからさまでなく、でも次第に広がっていくような個々の驚きやとまどいが、観る側をさらなる物語に導く助走になっていて、亡くなった長女の旦那の墓参りというロードムービーを想起させるような旅のシーンたちに観る側を巻き込んでいく。駅のシーン、乗り遅れて翌朝の電車を待つための一泊のスケッチ。夜遊びをしようという長女に、息子や妹たちがそれぞれに引きづられていく感じなのですが、でも、その行程に、塗りつぶされない距離の詰まり方で束ねられていくものがあって。

家族という一つの箱に納めきれない、どこかはみだした感覚がコミカルでナチュラルに残ったまま続く旅。それゆえにシーンの間にすっと差し込まれたひと時のスケッチに目を見張る。翌日、電車のシーン。車窓に現れた海を眺める表情たちが魔法のようにひとつに束ねられて・・・。バラツキとまとまりの質感の間から零れ落ちる奇跡のような重なりの刹那に息を呑むのです。

お墓までの山登り、介護士がばてて倒れる中での親族たちの時間、さらにそこから切り分けられる長女家族の時間・・・。やがて雪がちらつき凍えるなかでの凛とした感覚。

それらの空気が観る側をしっかりと浸潤しているから、長女が再び眠りつづける状態になって、親戚たちがばらばらになったように見えても個々の生活が流れふたたびまとまっていく感覚がわかる。

三女に子供ができたり、文学賞の顛末に加えて小説家の次女の担当がかわったり、長女の看病の粛々としたルーティンが生まれたり。長女の息子と家出女性のこと。介護士のエピソード。四女が長女の息子との同居をやめること・・・。

姉妹たちやその家族、長女の息子をとりまく人間関係、さらには旅を続ける男などの示唆に富んだ物語たちから、再び個々に流れ留まらないそれぞれの時間が浮かび上がる。それぞれの時間が丸められずに描かれるからこそ、出でて散り、あたかもめぐりくるがごとく重なる時間の質感が観る側を満たしていくのです。

タイトルの「めぐるめく」は造語なのでしょうけれど、その造語でしか表現しえないような感覚が観る側に確かで奥行きをもったフォーカスと微細な解像度で伝わってくる。

出演:原扶貴子 成清正紀 高山奈央子 若狭勝也 馬場恒行 佐賀野雅和 桑原裕子 今奈良孝行 川隅美慎 辰巳智秋 ヨウラマキ 勝平ともこ

中村倫子 西岡祐介 西岡由貴菜 渡辺昇

役者たちがとても安定していて、観る側が素直にゆだねられる。よしんばデフォルメされたシーンやささいな感覚であっても、舞台の繊細なニュアンスに置き換えて残していくだけの力がそれぞれの役者たちにはあって・・・。

終盤に描かれる、長女の息子に対する普段着の愛情もとても印象深かったです。たとえば墓前で自然にマフラーを息子にかけたり、あるいは電車の中でふっと言葉に漏れだすような。

さらに振り返れば、そんな想いが、形や行く先は違っても姉妹それぞれに垣間見えていたことに気づく。、それらがあちらこちらに不器用に縫い込まれたそれぞれの時間を束ねるルーズな仕付け糸のようにも思えて。

積み重ねるシーンから醸し出される空気で、時間の流れを俯瞰させる場所にまで観客を導き、観る側を共振させ、空気の肌触りまでも観客に与えていく・・・。桑原作劇の秀逸に今回もまた、感嘆したことでした。

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コメント

りいちろがスケッチするの?

投稿: BlogPetのr-rabi(ららびー) | 2010/05/31 14:40

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