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犬と串「暴くな」2バージョン。脂の乗ったエンタティメントの暴走♪。

観劇前に劇団からの案内メールで上演時間が結構長いことを知らされていて・・・。しかも2バージョンの連続観劇。まあ、クッションが入ったようなお尻というか、骨にこたえることは多分他の方より少ない体型だけれど、それでも合計4時間を超えるベンチシートに耐えられるのだろうか、実はそれなりに不安でした。

しかし、最初の雲龍バージョンを観初めるとたちまちそれが杞憂であることがわかる。がっつりと舞台に取り込まれてしまい「お尻の痛さ<舞台の圧倒的な面白さ」状態。

極上のエンターティメントが、なにげに目の前に展開していくのです。

(ここからネタバレがあります。十分にご留意ください)

作・演出・(出演?):モラル

冒頭の3畳間の狭くて暗い雰囲気から閉塞感が醸し出されて。そこに理不尽に現れた力士に、観る側が戸惑っている間もあらばこそ、相撲場風景へと一気に移り変わっていく刹那がまず圧巻。部屋があっというまに取り払われて、隠されていた土俵などが現れる。そこから、観る側を飽きさせないシーンがガンガン展開していきます。

ストーリーが適度にべたで、それが逆に舞台の自由度を担保し世界を広げる武器になっている。シーンの緩急のバランスが抜群。

コンテンツに含まれる揶揄や毒の匙加減が極上、しかも、芝居の外にまではみ出して物語をつくっていくやり方にもあざとさを感じさせない。とてもちゃんこ体型とは言えない役者たちであっても、シコがしっかり踏まれているだけで相撲的な雰囲気に密度が生まれて・・・。役者の切れ、ダンスのヴィヴィッドさ、ぐいぐいと進められていくシーンたちには見る側に時計を覗くことを許さないだけの力があるのです。

ほんと、たくさんのシーンそれぞれに観客を得心させるだけのクオリティがあるのですよ。上手い歌を聴かせるシーンに上手いと思わせるだけの役者の手練があったり格闘シーンに観客を引き入れる舞台装置や照明のけれんもすごくよい。

シーンのキーになる部分のクオリティが揺らがずにしっかりと作りこまれているので、作品がチープな感じにならず少々お下劣なシーンの笑いすら呑み込むだけの作品の懐が生まれていく。よしんば偽悪的に安っぽく作られた場面はあっても、力不足で安っぽくならないような下支えが舞台にあるのです。

観客参加型という部分も見る側に負担がないうえに、参加するとこれがけっこう楽しかったりする。役者自身の虚実が見えるような部分があったりで普通に可笑しいし、拍手をしたりなどの色々な指示から観る側に高揚感が増してくるような感じもあったり、逆にほどよいブレイクなっていたり。・・・。お尻の痛みを和らげてくれていた座布団を使っての最後の参加部分など、がっつりと終盤のふくらみに貢献していたり。

出演:

雲龍チーム:満間昂平・鈴木アメリ・萩原達郎・ 堀雄貴・吉川順子・佐原裕貴

不知火チーム:藤尾姦太郎・松崎みゆき・廣瀬瞬・ 岡本空・石澤希代子・津田修平

役者の良い意味での若さが舞台の勢いを作るエンジンになっている感じもするのですが、その演技には勢いに任せて押し切るだけではなく、懐深く押し引きをするだけの技量があって。絶妙に配分されたシーン間のテンションの変化から垣間見える作・演出のぞくっとするようなセンスがこのキャストだとしっかりと生きる。

さらには、両バージョンともヒーローとヒール役が入れ替わるだけでなく、バージョンの色がしたたかに編み込まれていて、片方のバージョンがもうひとつのバージョンの補色にもなっていて、個々のシーンを作り上げていく力に加えて、公演としてのデザイン力も秀逸。初日の2バージョンセット、1本目が終わった時点で、2本目への食欲がふつふつと沸いていた・・。ほぼ同じプロットの両バージョンを続けて観ても見飽きることがありませんでした。

それぞれのバージョンとも、特に中盤以降には、たとえば大きくなり始めたころの第三舞台や新感線が持っていたようなのグルーブ感や勢いがあって。

これだけのことをやっても、最後には物語全体がすっと冒頭に納められて破たんなく終わるのもとても良い。再び組み上げられた同じ3畳間、そこに漂う空気に冒頭とは違う空気が醸しだされていることにも瞠目。

この劇団、次は何を見せてくれるのだろう・・・。とても期待してしまう。

満たされて、さらに満たされて、心地よく疲れて高田馬場までのバスに乗ったことでした。

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