鰰「動け!人間!」=「ハタ」プログラム中抜きで観賞、極上のダンスなど
2010年4月25日、鰰の「ハタ」[出世魚となんとなく呼ばれているもの]バージョンを観ました。場所はアトリエ春風舎。9時45分から17時までの1日はさすがに無理でしたが、いろんなメニューの中で朝の冒頭のメイン企画と夕方の白神ソロダンス、宮崎晋太郎の新川崎コーラスセンターの歌会を拝見することができました。
観た出し物にはそれぞれに趣がありましたが、中でも白神ソロダンスにはひたすら瞠目、震えがくるほどのすばらしさでありました。
(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください。)
・朝のメイン企画
それなりにぐたぐた感もあるのですが、朝の催し物としては悪くない。個々のシーンは朝に似合わないほどにしっかりと演じられていました。演じられるキャラクターが曖昧になっていないのがよい。それが多少マンガ的であっても古畑的であっても、演じる足腰がしっかりとしているし、場ごとのテンションも作られているので干乾びず、形骸化せず、煮崩れずに最後まで観ることができる。
観客を引率しての屋外でのパフォーマンスもあるのですが、朝のお散歩も兼ねてすごく気持ちよかった。どこかシュールな部分もほどよくスパイスになっていて・・・。楽しむことができました。
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そのあと中抜け、夕方分を鑑賞。
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・白神ソロダンス
これ、必見です。30分強、がっつりと楽しみました。
前回のモモンガ・コンプレックスでも何々風という形でのカーテンコールのスタイルブック的な演目がありましたが、今回は様々なスタイルのダンスやバレエにいろんな創意が織りこまれていきます。
冒頭のナンバーの力強さ、ロミオとジュリエットで醸し出すコンサバティブなバレエのしなやかさや繊細さ、それぞれに観る側の時間を舞台に引き込んでいく。コンテンポラリーダンスのルーティンが醸し出す感情は、時にユーモラスでありながら、確実に観る側の何かを揺らしてみせる。
同時に、観ているうちに、白神の動きを支える筋肉の力が醸し出す安定感や切れにわくわくする。その安定感から表現の解像度の高さや広がりが、本当に豊かに伝わってくるのです。その表現は観る側を押し込むだけではない。たとえば「ミネソタの卵売り」を踊る彼女を観ていると、心地よい高揚が観る側にも波のようにやってきて、ある種の感覚をふわっと開放してくれる。観ていて凄く楽しいのです。
そして、ボレロ・・・・。白神の肩甲骨と足の動きが表現が音楽にのって、時間の歩みが観る側に伝わってくる。しなやかで、でも極めて制御されたその動きに、時間の流動とその流れに従ったり抗ったりしながら生きる主体の姿が伝わってくる。目を奪われ、離せず、やがてその表現の豊かさにぐいぐいと包み込まれて・・・。さらに、ルーズな服を着てのダンスに至ると、内なる姿に加えて女性が持つ外面の瑞々しい表情までが現れて、さらに目を見開く・・・。
演目は、気取りなく、カジュアルに、ダンスのピースを次々と紹介していくような感じで積み重ねられていくのですが、その気さくさと、照明を浴び音をまとっていく彼女が紡ぎ上げる豊かで切れのある空間のギャップがすごい。素の白神さんの雰囲気に油断しているといきなりとんでもないクオリティのものがやってきて一気に呑み込まれてしまう感じ
観終わって、ものすごい贅沢をさせてもらったと思いました。もう、ひたすら、圧倒的な充足感に包まれたことでした。
・宮崎晋太郎の新川崎コーラスセンターの歌会(+神里の終演セレモニー)
ちょっと懐かしい感じのハーモニーを聞かせる持った二人。6曲歌ってくれました。
それぞれの声質がとても気持ちよい。歌詞は素敵にベタで、でも景色や雰囲気などが、ふっと立体的に浮かんだり。ハモリの力みのようなものがここ一番での歌の力になって、歌い終わったときには彼らの世界がちゃんと聴く側の中にあるある・・・。
で、その歌のクオリティに、途中から神里雄大の芸が加わって、不思議な雰囲気を醸し出すのです。その独立独歩のはみ出し間に、スポっとはまってしまいました。このセンス、個人的にはすごく好み。内容は違うのですが、その傍若無人さに、どこかモンティパイソンのような突き抜け方があって・・・。そんじょそこらではなかなか味わえない趣というか、こうじわっとくるおかしさが沸いてくる感じ。
演目が終っても、観客が席を離れだしても、まだ演技を続けていたりというのが、さらにおかしさを運んで。神里雄大が持つ、表現のセンスを感じたことでした。
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鰰の公演中、このバージョン「はた」は、4月29日にもう一度あるみたいです。で、たとえ一日丸ごとの観劇でなくても、よしんば16時以降の白神さんのダンス以降の演目だけでも超お勧め。(詳細は ここをクリック)
上記と同じナンバーをやってくれるかはわからないけれど、たとえば休日のソワレ観劇の前に足を運ぶなどでもおすすめ。その価値は十分あると思います。
鰰、目が離せないユニットになってきました。
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