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MU「ゴージャスな雰囲気・めんどくさい人」面白うてたのしいバリエーション

遅れてしまいましたが、MUの3バージョンを観ました。下北沢演劇祭参加作品、場所はオフオフシアター。

今回Free Pass券というものが出て、それを迷わず購入。観る側に全てのバージョンを観てほしいという作り手の心意気に乗っからせていただきました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

両方の台本とも、描こうとする雰囲気がコアにしっかりとあって・・・。土台がしっかりしているから3バージョンというちょっとびっくりするような企画が成り立ったのだと感じました。1時間程度の中編が2本、それぞれの作品からにじみ出てくるものに、ふっと観る側の目を見開かせる力があるのです。

ナルシズムにしても富から降りてくる虚無のようなものにしても、それ自体はどこか無色透明に内心に漂うような部分があって・・・。それらは、背景や光、さらに空気の色のブランクとして初めて浮かびあがってくるようなところがある。ハセガワアユムは、丁寧な仕事でその感覚に光を当て観客の内側に具象化していきます。

「ゴージャスな雰囲気」は時間の流れ方や醸し出される雰囲気の統一感が崩されていく感じがうまい。途中で隠し事の企てがぼろぼろっと崩れていくあたりから、一気に面白くなりました。奇異な雰囲気の登場人物たちなのですが、いわゆる憎めない良い人的な部分が浮かび上がってくる。それまで「世間一般の常識」的な役割を担っていたキャラクターこそが孤独で孤立していることも伝わって。冒頭の奇異さ加減とその内にあるまっとうさのようなものの対比が観る側を舞台に引き込んでいくのです。

「めんどくさい人はお金の編み込み方がうまいと思う。物語はどこか薄っぺらいのに、にやっとするような真理が物語に含有されていて、最後まで好奇心が途切れない・・・。紙袋の種類と金額の比例の仕方や、金額に頓着しないお金の渡し方などから生まれた常ならぬ感覚が、キャラクターの一番ベースにある柔らかい部分にひねりを与えて、滲んできた何かが観る側をとらえる感じ。富によって下世話な葛藤から守られる姿や、守られることによって生まれる虚無にぞくっとくるような説得力があって。そして富によって築かれた彼女の内心と外側を隔てる壁が取り払われた時、あるいは富と愛情が混在している中で得られる愛情から富を分離したとき、彼女の内側の底なしのような穴と、それをめんどくさいと言う最後のセリフに、なにかつっかえがとれて、当たり前のカップルの感覚が垣間見えたように思えて。

終演時にやってくる感覚にはそれぞれのバージョンに共通したものがあって、個々のバージョンが戯曲に対して忠実かつ真摯であることに思い当たる。でも、それらが観る側に伝わってくる過程のバリエーションがしっかりエンターティメントで。

それぞれのバージョンの大まかな印象として「A」は作り手の説明にもあったように、一番オーソドックスに感じました。「B」については、内側の装飾や照らし出すものについてまでかなりデフォルメを加えた印象。一番最初に観た「C]は、いろいろとはちゃめちゃな部分もあるのですが、コアの部分は一番色濃く伝わってきたかも。

遊び心や、ウィットもそれぞれにちりばめられた3バージョン、観ていても楽しいし、そのあとしっかりと満たされた感じがのこる。

観る側としてお芝居のいろんな可能性を実際に感じることができる、意欲的で素敵な3バージョンだったと思います。

総合演出:アセガワアユム

「ゴージャスな雰囲気」

脚本 :佐々木彰人  脚色 :ハセガワアム

「めんどくさい人」

脚本 :ハセガワアユム

出演 :

芝博文、秋澤弥里、足立紀子、浜野隆之(下井草演劇研究舎)、太田守信(エムキチビート)、三嶋義信、岩崎恵(ポップンマッシュルームチキン野郎)、奥野亮子、藤田慶輔(ナイスコンプレックス)、土屋士、二面由希(動物電気)、花戸祐介、浜松ユタカ(動物電気)、渡辺磨乃、川添美和(劇団海賊ハイジャック)、酒井和哉、さいとうせいき

 

MUの今後のチャレンジも、すごくたのしみになりました。

R-Club

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