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ガレキの太鼓、「この部屋で私はアレをして」同一空間のお芝居

2009年1月6日・8日でガレキの太鼓 のぞき見公演#1、「この部屋で私はアレをして」を観ました。場所は、劇場ではなく、月島駅近くの某マンションの一室。

駅で集合して、精算までして・・・。そのあと何人かずつパッケージになってその場所に案内されます。

ちょっとどきどきで会場に到着して・・・。

そこは、普通のマンションの一部屋でありました。

(ここからは、ネタバレがあります。十分にご留意ください。)

座席はお風呂の椅子にクッションを置いたようなかんじ・・・。それが部屋のまわりにずらっと並んでいる。壁には張りつくようにへたり込んでいるうちに、スタッフが家を出て舞台が始まります。

作・演出 舘そらみ

(新婚夫婦編)

6日18時30分の回を観賞。

よしんば戯曲が公開されたとしても、読んだだけではこの作品の良さはなかなか伝わらないかもしれません。

新婚生活の寄り添う感じと探り合う感じが互いに入れ子になっているのですが、その質感は、会場の某マンションでないとイメージすらできないかと。

所詮は、おめでたに関するから騒ぎのエピソードなのですが、そこに、お互いの本音がたどりつくまでの過程がとても丁寧に編みこまれていきます。

妊娠の可能性を告げるまでの妻の心の動きや、可能性を告げられてからの夫の揺れが細微に伝わってくる。冗長な部分もあるのですが冗長だからこそ伝わってくる絶妙な空気感が間違いなくあって。

一番近い人として共有できる部分と。一番近いがゆえに必要な距離が次第に腑に落ちてくる。

この夫婦が今後何年、あるいは何十年たってから宝物のように感じるかもしれないエピソードが、飾りのない想いで織り上げられているのが、文字通り肌で感じられるのです。

緊張が解けた後、ラスト近くの二人が交わりが凄く自然で、観る側を深くやわらかくときめかせる力があって・・・。

夫を演じた内堀太郎は、新妻への気遣いと殺しきれない独身心を、押すのではなく、ちょいと引き目の感じでしなやかに演じ切りました。ちゃんと相手役の不安定さを引き立てるようなお芝居が、カップルの雰囲気をうまく浮かび上がらせていたと思います。妻を演じた吉田紗和子は内心に納めるはずの心情をちょっとはみ出させるような表現ができる女優さん。そのわがまま心を夫に受け渡す力加減も絶妙だったと思います。

まあ、戯曲としても、小さめの劇場での上演にも十分耐えうるクオリティを持ち合わせているとは思うのですが、壁際にへたり込むようにして観ることの意味もちゃんと観る側に感じさせてくれたり・・・。この場所でなければ見えない視線に込められた色のようなものがしっかりと印象付けられて。

お尻はとても痛かったけれど、この上演スタイルだからこそ感じられるものに納得の1時間強でした。

(ガールズパジャマパーティ編)

6日18時30分の回を観賞。新婚夫婦編と同じ部屋なのですが、家具のレイアウトや散らかり方が微妙に違います。

会場のマンションの一室に入るとすでに二人の女性の会話が始まっている。

テレビを見ながらのたわいのない会話。自然な二人の動作・・・。壁際に座りこんで他愛のないテレビについてのおしゃべりなどを聞いているうちに、観る側が少しずつ部屋の空気になじんでいく。

スタッフ部屋を出ていってお芝居が始まっても急に部屋のトーンが変わるわけではなく、そのままの空気のなかで話が少しずつ広がっていく。弱火でゆっくりとその場の温度が温められていく感じ。

で、そこに、もう一人の友人が到着して、会話に一気に弾みがついてきます。彼女たちがそんなに頻繁にパーティをしているわけではないことが会話の内容からわかる・・・。その分積もった話みたいな部分があって、より深くいろんな情報が交わされていきます。お酒が次第にまわるのに合わせるがごとく、さまざまな彼女たちの日々が露わになってきます。

それは、3人の女性が日々を暮らしていく感覚のごった煮のようなもので、決して整然としているわけではないし、目を剥ぐような物語が内包されているわけでもないのですが、次第にぐつぐつと音を立てていくようなやりとりの至近距離にいると、観る側も、会話を外から眺めているのではなく同じ温度に浸たされて彼女たちと一緒に煮込まれている気分になってくるのです。

いくつかの話題に3人が反応する姿が圧巻、共通の知り合いのコシップを確かめるためにそれぞれが携帯をかけまくるときのパワー、あるいは上の階からの艶めかしいノイズに対する反応の広がり・・・。初めは観ていて苦笑しながらも、気がつけばその感覚がすごくまっとうなものに思えてくる。下ネタと呼ばれる範疇でのそれぞれの感性もあけっぴろげに語られ、女性特有の周期や肉体的なことに関する話などにも隠しだてがなく、ふつうであれば男は下を向いて顔を赤らめるしかないのですが、それが、鍋の内側にいると、よしんば実感が持てなくてもそういうものだと受け止められたりする。あるいは男の品定めのような話でも、彼女たちの笑えることがわが身を顧みることを忘れて理解できると思えてしまう。

気がつけば、観ている側の感覚が2mにも満たない距離で沸騰するカオスにぐたぐたになっていて。

でも、そのカオスの中であっても、女性たちがそれぞれに持っている感覚は煮崩れすることなくしっかりと浮かび上がってくるのです。一人ずつが自分の世界を持ち、そのことを互いに認めることができる3人だからこそ、醸し出されるカオスにそれぞれが溶け込んでいけることが分かる・・・。

そのマンションの住人を演じた唐沢恵莉が醸し出す生活感覚には、とりあえずめぐまれた生活環境からやってくるおおらかさと堅実さが絶妙に織り込まれていました。そのお芝居は、舘そらみが不倫で何かを埋めながらも、仕事に自分の居場所を見出していく強さを補色のように浮かび上がらせていきます。上村梓からは、他人の心配をたくさんするのに、自らはどこか臆病な性格がうまく醸し出されていました。将来はいちばんおばさんっぽくなるのかなというようなキャラクター設定なのですが、その生き生き感が、他の二人をもどこかで支えていることが感じられたり・・・。3人それぞれに時間を使ってゆっくりと本音を滲ませていくような底力があって。

途中で、3人が歌をくちずさむところがあるのですが、その歌が不思議なくらい凛としていて彼女たちの想いの重なりが浮かんでくるようで。でも、その重なりがきちんと響くことで、登場人物それぞれの今がきちんとそこに見えるのです。

***  ***

両バージョンを見ることで、新婚生活編とガールズパジャマパーティ編の間のゆるやかなつながりも理解できて、その世代の内側で、個々の人生がそれぞれに固まっていく雰囲気もそこはかとなく感じられました。仕事、結婚、子供などから、さらには個々の人生観のベクトルが揺れながらもそれぞれに定まっていく感覚が伝わってきて。ふっとその先に広がるであろう登場人物たちの人生を、よい歳したおじさんが自分のことのようにおもってしまったりするのです。

ほんと、したたかに取り込まれたというか、いろんな意味で深く興味をひかれた公演でした。実の香りで虚の匂いを消し去り、その虚を見事に実の肌合いに織り上げる、舘そらみの才能にひたすら瞠目。3月の本公演も是非に拝見したくなりました。

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コメント

ガレキの太鼓・宣伝美術の大木と申します。

ありがとうございます!
こんなに長い、そして愛に満ちあふれたレビュー・・・・・・!感激です!!


>冗長だからこそ伝わってくる絶妙な空気感

>この夫婦が今後何年、あるいは何十年たってから宝物のように感じるかもしれないエピソードが、飾りのない想いで織り上げられているのが、文字通り肌で感じられるのです。

関係者が言うのもなんですが、
「新婚夫婦」と同じくらいの世代の者としては、そこが非常にリアルに感じられたので、
りいちろさんのお言葉に、とても共感しました。

>3月の本公演も是非に拝見したくなりました。

このお言葉をいただけるのが本当にうれしいです。
主宰のだても死ぬほど喜ぶと思います。(私も…)
ぜひ、またいらしてください。
心よりお待ちしております。


そして、
もし、ご迷惑でなければなのですが
当劇団のホームページで
「ウェブ上の観劇の感想」を集めるページを作成したいと、勝手ながら考えているのですが、
こちらの記事に、リンクを貼らせていただいてもよろしいでしょうか?
ご検討いただけましたら幸いです。

それでは3月に、劇場でお待ちしております。笑
今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。

投稿: ガレキの太鼓 | 2010/02/08 20:07

ガレキの太鼓 大木様

コメントありがとうございます。

先日の公演、楽しませていただきました。
あの場所だと、お芝居が皮膚からつたわってくるような感じがして。本当にどきどきしました。

次回公演も楽しみにいたしておりますので・・・。

あ、それから、記事へのリンクの件、特に制限はありませんので。もしリンクいただけるようであれば、とてもうれしいです。

投稿: りいちろ | 2010/02/09 00:55

りいちろさま

大木です。
早速のお返事、ありがとうございました!
ご快諾いただけてとても嬉しいです。

他の記事も読ませていただいたのですが、りいちろさんの観劇のご感想は肉体的で、とても心に響きますね。
私、芝居をやっているくせにあまり芝居を見ないので;
りいちろさんのブログを参考にいろいろ見に行ってみたいと思います!

今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。

投稿: ガレキの太鼓 | 2010/02/15 20:12

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