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昨年末の3作、「tea for two」「クロムモリブデン」と「and Me」

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

で、お正月から去年のお話で申し訳ないのですが、昨年末拝見したお芝居の感想をを3作分ほど・・・。

tea for two「ヒットパレードspecial」,クロムモリブデン 「不躾なQ友」とand Meの「くらやみに降るゆき」、いずれも見応えがありました。

(ここからネタばれがあります。ご留意くださいませ)

*tea for two「ヒットパレード Special」@中野シアターMOMO

劇団初見、知り合いの口コミに惹かれて観てまいりました。

A/B/Cと3つの公演、それぞれが4つのヒット曲を冠された短編が上演されるという趣向。なんとか楽日にAバージョンを観ることができました。

-タッチ

作・演出 :大根健一    出演 :大岡伸次・嵐田由宇

満員電車のなかでの男女のスケッチ。痴漢に思われたくない男性と、女性の心の動きを、お互いの心の動きをセリフに乗せるというあからさまな手法で表現していきます。

手の位置の置き方や二人がいつも同じ電車の同じドアに乗るちょっとした顔見知りであること、さらには電車の揺れなども加わって、お互いの想いの落差や妙なベクトルの一致が描かれていきます。

ありふれていながら、それでいて非日常な時間を作り出す手法がほんとうにうまいのですよ。役者の間も、絶妙。電車が揺れた後の絶妙の間など何気に見えて、実は針の穴を通しているようなお芝居のタイミングを気持ちよくクリアしていく。

なんというか、麻雀番組を観ているような面白さ、プレイヤー個々には決して見えない全体の位置に観客を置いて、それぞれの心の内を晒していきます。しかもお互いの想いが寄り添っていくところで次の駅に到着・・・。

あとには、ちょっと切ないのですが、なんかうなずいてしまうような感覚がしっかりと残されていて。

こういうコミカルさって理屈抜きに面白い。

-重き荷を背負いて

作・演出 :大根健一     出演 : 倉田知美

普通に勤め人をやっていると、こういう作品はボディブローのように効いてきます。

そりゃね、仕事をしていると、物語の内容に突っ込みたい部分も全くないわけではないのですよ。(たとえば品質保証の考え方など・・・)。でもそれを凌駕するコンテンツがしっかりと作りこまれているのです。

製品を半ばやけになって置いてきてしまう気持ちがとてもよくわかる。ドラマのなかに必然がきっちりと仕込まれているのです。得意先に翻弄される感じや皮肉な結末。それぞれのシーンでの心の動きが観る側にしっかりと渡されているから、主人公の力をふるいだすような雰囲気や、がんばろうと思う気持ちにもリアリティがあって・・・。

どこかデフォルメされているような感じがするのですが、実はとても実直に営業職の感覚がスケッチされていて。

ほろ苦く上質なウィットを感じる作品でした。

ー天体観測

作・演出  :石井信之   出演 :小森健彰・湯澤千佳

妹の家に居候にやってきた出稼ぎ中の兄。こどものために天体望遠鏡を買った兄に、日々の暮らしに少し疲れた妹が冷たくあたる。

しかし、兄の見る世界には、妹の心を癒していく力があるのです。

途中で攻守交代というか、兄の愛情が包み込むように妹の揺れを吸い取っていくような感じにうるっとくる。とくに妹の機嫌を取る感じでもなく、ただ自分の気持ちに正直に妹を思う兄の態度が、急がずもたつかず妹の気持ちを染めていく。

その解け方が、実は買ってきてあった兄の好きな酒をごそごそと出してくる妹の態度から鮮やかに伝わってきて・・・。

私は兄弟がいないから想像するしかないのですが、血のつながりが醸し出す愛情というのは、兄のためにごそっと机の上に出してくる2本目の缶チューハイのように、あんまりかっこよくなくて、でも、とても素直なものなのかもしれません。

兄のマイペースぶりと妹の苛立ちとのバランスがとてもよくて、観ているうちに深く引き込まれておりました。

-桜坂

作・演出 :大根健一     出演 : 畠山明子・渡邉亜希子

かつて同じ職場で働いていた先輩と後輩、先輩が略奪婚をしてしまったが、後輩との不倫関係も続いているというドロドロした関係。

不倫をしている後輩が先輩をじわじわと攻めていきます。次第に尖鋭的になっていく後輩・・・。かつての不倫相手との記憶をカードのように示していくのに対して、それらがすべて過去であることで、まるで闘牛士のようにその角先をかわす先輩・・・。

観ていて、面白いだけではなく、一人の男を争う妻のうしろめたさと不倫相手の気持ちにそれぞれのペーソスがあって。まるでシーソーのように上下する二人の位置関係と相まって観る側を飽きさせないのです。

攻められながら、一ラウンドごとにポイントを重ねていく妻のゆとりと、ポイントを重ねられるごとにKOを狙うかのように力みが見られる後輩、ラウンドが終わった後の間やそれぞれの表情が観る側を前のめりにさせていく。二人の役者が作る空気になんどもぞくっとくる・・・。

オチとなる「蕎麦打ち」のエピソードにもしっかりとした説得力がありました。

***

時間がなくて、他のバージョン(B/C)を観ることができなかったのがとても悔やまれる・・・。

べたな言い方ですが本当に面白かったです。

*クロムモリブデン「不躾なQ友」@赤坂レッドシアター

作・演出 青木秀樹

2009年12月30日、ソワレにて拝見しました。

クロムモリブデンは前回の公演が圧倒的だったし、あちらこちらに客演の役者さんたちにもその力を見せつけられていたので、観るほうもかなりハードルを上げて劇場にでかけたのですが、そんなもの簡単に飛び越えられてしまいました。

夢の世界と現実がそれぞれに観る側に積っていきます。そこに、催眠術というかその幻想をコントロールする存在が浮かんで・・・。

繰り返しの中で、重ね合わせられていく心的風景がジワリジワリと観る側に塗り重ねられていく。

冒頭から個々のシーンに常ならぬ密度が醸成されて、そのテイストが観る側をがっつりと舞台に引き寄せます。ルーティンが麻薬のように効いてくるというか、あざといほどに引っ張られる。

そこまでにからめとられているから、テイストそのままのパターン崩れが馬鹿におかしくて・・・。で、すっと心が浮いた瞬間に舞台上のさらなる世界に転げ落ちるように取り込まれてしまうのです。

ダンスの厚み。いつもの倍盛りのような動きが醸し出すウィット。さらには、まるで、ラクビーのオールブラックスを彷彿とさせるような二つの概念の対立やその先の混沌・・・。一つのコマに倍の動きを押し込んだようなその振り付けが、何かを覆うものを確実に剥ぎとりその本質を観る側に晒します。観る側は圧巻の動きの中に、潜む抜けられない感覚や想いのループに首の先まで浸されてします。しかも、そのシーンが物語から乖離することなく、銃を撃つための必然性がきちんと織り込まれている。

劇団の役者たちの色の強さもたっぷり強くて、しかもきちんと洗練があることに改めて瞠目。加えて客演陣もがっつりと安定していて、おまけにふくらみというか肉汁たっぷりのお芝居で・・・。それぞれの役者が個性を埋没させていないのです。

出演 : 森下亮・金沢涼恵・奥田ワレタ・久保貫太郎・渡邉とかげ・幸田尚子・小林義典(以上、クロムモリブデン)

武子太郎・花戸祐介・鶴田祐也・北川大輔(カムヰヤッセン)・中川智明

終演にいたるシーンにも、ちょっと常ならぬインパクトや感覚がりました。観る側の平衡感覚をすっと危うくするような戻りというか回帰がそこにあってぞくっとなる。その感覚を創出する役者達の精緻な力技に、終演後もしばらくぼうっとしておりました。

*and Me produce number5「くらやみに降るゆき」@渋谷 Edge

作・演出:笹峯愛

12月31日マチネにて拝見しました。and Me,初見です。

中央の舞台を広く取った対面座席。マットやボール、手でめくる黒板のついた得点板や跳び箱までが置かれて、体育館とか準備室の独特の匂いまで伝わってきそう。ダルカラのときにも思ったのですが、このスペースは外の空気を取り込めるのも強み。開演前から場の雰囲気に浸されます。

開演すると、その中で、ひとつのエピソードが演じられます。その雰囲気と懐中電灯が照らし出す世界に、懐かしい思わせるような学生時代の感覚があって・・・。そのナチュラルさがきちんと観る側に足跡をつけていく。そして、物語は今に翻って、女子バレー部のOB会の風景に導かれます。その中で、キャラクターが抱えるものが次第にあらわになっていくのです。

女性だけの物語なのに、なぜか武骨なテイストがあって。キャラクターたちにごつごつした質感を感じます。舞台の時間はとても流暢に流れていくのですが、そこから溢れるいろんな感情は、流れることなく塊になって観る側に押し込まれてきます。

その塊の解け方も、どこか不規則で不器用なわだかまりや揺れに満たされて・・・。、でも、それだからこそ、観る側も流すことなくじっくりと受け止めてしまう。心のわだかまり、消化しきれない過去、それぞれの個性に不揃いでこなれきれない想いが乗せられて、観る側の理解を埋めていきます。隠されたようなうちとけない時間があるのに、そのリアリティに目を見開いた刹那に、個々のキャラクターがそれぞれに持つ繊細さを感じ、さらにはその繊細さの先にあるかたくなな部分までがじわっと観る側に飛び込んでくる。

出演 : 大見遥・異儀田夏葉・平手舞・青木岳美・長峰稔枝・南波有紗・成田沙織・菅川裕子・笹峯愛

それぞれの役者のお芝居が本当にしっかりとした足腰を持っていて。それが物語を踏みしめるような強さとして舞台上に現れる。だから整理されていないようなキャラクターの想いであっても、観る側が舞台上につなぎとめられてしまうのです。個々の心に宿る重さが観る側に不器用に積っていく。でもその役者のお芝居字力に裏打ちされた不器用さだからこそ、観る側に伝わってくるものがあるのです。

ラスト、マチネであることをすっかり忘れて忘れてしまうような扉の外の深い闇。外気の冷たさに何かが覚めて、その雪に浮き立つ心にすっと解き放たれるものを感じる。外が光に満たさる気配はないのです。でも、そうであっても、凍てついていても、舞台上に重なったものが遠い向こうで癒されていく兆しを感じる。

キャラクターたちが完全に解き放たれることはないのだとおもう。でも、そうやっても、生きていくのだと思う。その強さが役者たちにしっかりと支えられている。

2009年最後の観劇・・・、たっぷりといろんな感触を抱えたまま、大晦日の渋谷を歩いたことでした。

R-Club Annex□■□

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