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タイトな空間でのダブルパンチ、「ゆらぎり」「ロングミニッツ-The loop of 7 minutes-」

2010年1月24日のソワレ・ソワレでFOSSETTE×feblabo×エビス駅前バー・プロデュース、の2作品を観てきました。場所は、当然にエビス駅前バー。

1時間強の作品なので、2本続けて見に行っても大丈夫かとおもったのですが、ともかくも充実の二本で、心地よくたっぷり消耗させていただきました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください。)

Side-A 「ゆらぎり」(18:00の回を観劇)

原案:武藤博伸   

脚本:成島秀和   

演出:古河貴義

化粧品会社に勤めるとある男性の物語。エビス駅前バーの小さな空間を逆手にとって、いくつものシーンを同じ場所に重ねて彼と彼を取り巻く人々を会話を中心に描いていきます。

見えるものと見えないもの、舞台に透明なパーテーションが巧みに出し入れされるような感覚。その囲いの中で、八方美人のように周りとの関係をやりくりして自分の立場を作る男・・・。

うまくやっているつもりの彼なのですが・・・。

彼の癖、携帯電話のメッセージ、チャイナブルーというライチ系のカクテル・・。それらのアイテムが、シーンに組み入れられて、まるで魔法のようにそれぞれのキャラクターの虚実が剥ぎだされていきます。個々のキャラクターの内も外も、実は観る者にとってフェアというかあるがままに描かれていて、にもかかわらず、その姿や変化が、想像しえないような色で浮かび上がってくるのです。

役者達のタイトなスペースでの濃縮された演技、シーンのつながり、さらには仕組み・・・。成島作劇と古川演出のそれぞれの秀逸に凋落していく男の姿がぞくっとするほどリアルな感覚とともに浮かび上がって・・・。

終わってみれば一時間強のお芝居の印象の強さに愕然としたことでした。

役者のこと、澤田慎司は自己中心的なキャラクターをぶれなく描いて見せました。後半、崩れていくキャラクターののプライドが崩れる中で、コアの部分をしっかり残せるお芝居。その粘り腰部分が物語をしっかり支えます。彼の同僚を演じた古川侑のちょっとした武骨さもやはり揺らがない・・・。なんというかスタンダードな感覚をうまく物語の色に加えていくお芝居。

青年実業者を演じた和知龍範には実存感がありました。ちょっとあざといようなバーでの支払いの仕方や時間を潰す時の背筋の伸ばし方も、彼の演技だとすごく自然に感じられる。キャラクターの美学のようなものがすっと香り立つような感じ。

バーのマスターを演じた佐々木潤には強くフレキシブルな視線がありました。場の雰囲気を引き締めながら、めまぐるしく動いていく物語の場に箍をはめるような役目をしっかりと果たしていく。地味な役回りなのですが、物語の香り立たせる力がありました。

男優陣が作り上げた物語の枠の中で、女優陣がその力をいかんなく発揮します。望月綾乃の滲ませるように内心を伝えるお芝居には、ナチュラルな質感の中に危うさと強さが絶妙に編みこまれていて。キャラクターがもつ表面のしなやかさとコアの強さが丁寧に説得力をもってやってくる。そして、岩本えりのお芝居、息を呑みました。小さなセリフにニュアンスががっつりと乗ってくる。良い意味で生々しく女性としての感性がつたわってくる終盤、さらにはその力が澤田の演じるキャラクターの底浅さを見事に浮かび上がらせて・・・。この人すごい。

原案・脚本・演出・役者・・、作り手側それぞれの力が見事にかみ合って、見応えのある舞台でありました。

Side-B (ロング・ミニッツ-The loop of 7 minutes-)

脚本:広瀬格

演出:池田智哉

昨年末に上演されたプレイルームを観ているので主人公のバックボーンはすぐに理解できて・・・。でも、冒頭のシーンをほげっと観た後、次にやってくるシーンについては何が起こっているのかその意図がいまいち理解できなかった・・。

しかし、3度目あたりで芝居のタイトルを思い出し舞台のルールが理解できるようになって、4度目あたりの7分間あたりからぞくぞくするほど面白くなりました。中盤、ルーティンを重ねるごとに主人公のテンパっていく感じがどんどん見る側を引きずっていく。周りが多少の変化をしても、それはワンショットのことでその閉塞から抜けられない主人公のみが疲弊していくという雰囲気だけでも結構笑える。

しかし、本当に面白いのはそのあと、主人公がその時間の結末にいたるいくつもの分岐点に気がつきはじめてから。主人公がパズルに挑むがごとく、苛立ちとともに試行錯誤をしていく姿が観る側の感覚に共振して、続々くるようないらだち、疾走感、さらにはグルーブ感をもかもし出していく。

最終的に何度そのループが繰り返されたのかはよく覚えていないのですが、その世界の外側に抜け出した時、観る側には疲労感がしっかりと重なった突き抜け感がやってきて・・・。その一体感に、初めて物語に取り込まれきっている自分に気がついて。

振り返ってみるとひとつずつのシーンの作りこみに加えてシーン間のコンテンツのずらしが、とても丁寧に為されていると思うのです。

それぞれの役者がきちんと場に応じたキャラクターの匂いをかもし出しているのもすごくよい。

酒巻誉洋が手練の演技で物語を引っ張ります。次第につのっていくあせりに、彼の内心の色がじわりと滲みだしてくる。その感触が7分の繰り返しに観る側を閉じ込めるような厚みを作り出していきます。彼が醸し出す感情がそのまま物語のグルーブ感につながっていく・・・。乙黒史誠の演技には観る側がよりかかれるような堅実さがあって。後半湧き出してくる舞台の疾走感をしっかりと物語に繋ぎとめて見せました。

森田祐吏のバーテンには強い実存感があって・・・。仕事ができる感じが残りながらの自堕落さという、キャラクターのひねりの効かせ方のようなものが、観る側にすごくしっくりくるのです。こういう役者がひとりいると、物語の色がとても広がる。赤崎貴子は演じるキャラクターの息づかいのようなものを細かく表現して見せました。ルーティンごとに変わる彼女の想いを根気強く表現していく感じ。彼女の質感がそのまま、ルーティンの変化のバロメーター担っているような部分もあって、そのきめ細かい演技が、物語に密度を与えていく。

バーの客の二人にも力がありました。今城文恵のお芝居、前半と後半での存在感の落差に愕然。物語の中心線側に浮かび上がってくるときの地力やキレに常ならぬものがあって。唐突さがなくすっと物語に入り込んで物語を動かしていく。國重直也のお芝居は献身的でした。物語のルーティン性を維持するがごとく均質なお芝居を続けながらその色があせないのもすごい。

物語の外枠をみせるラストシーン、観る側にも心地よい疲労がやってきて。舞台上の物語の空気に、ほんの少しの懈怠感がすごくマッチするのです。

                                       ほんと、観客を舞台の空気とともに走らせるようにな、広瀬×池田ワールドの吸引力に、がっつりと取り込まれてしまいました。

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