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柿喰う客「すこやか息子」、具体性がなくてもリアル

2009年12月25日、初日ソワレにて、三重県文化振興事業財団主催の「すこやか息子」を観ました。場所は王子小劇場。

この作品、柿喰う客のメンバーが三重県で全国の役者とともに作り上げたとのことです。

初日の時点で、すでに前売りチケットは完売、がっつり満員の中で、舞台が始まります。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

構成・演出:中屋敷法仁

素舞台、薄明かりの中、登場人物がやや前のめりの姿で現れます。いつもの柿のスタイル。輪を描き、すっと物語に入っていきます。

エアロビクスを想起させるような動き、出演者の朝の挨拶・・・。リズムに載った短いセンテンスのやり取りのなかで、一人の人間の誕生が描かれていきます。そこに父・母・ふたりの姉といった家族との関係が登場人物たちの自己紹介の言葉を中心に表わされていくのです。繰り返される言葉やセンテンスに、関係がくっきりと焼き付けられていく。朝の挨拶とともに家族の誕生の明るさが心地よくやってくる。

さらには、リズムがさらに刻まれていく中で、家族の中での「ポジション」と、家族という「フォーメーション」が、びっくりするほど鮮やかに浮かびあがる。迷いがないというか、あきれるほどまっすぐに家族の骨組みやその内側にある連帯感、さらには個々の人生の座標軸までが示されていきます。その広がりは家族から親族へと広がって、様々な関係性が生まれるなか、呼吸がしっかりとヒートアップしていく。

そのプラットフォーム上で、家族の広がりや変化のページがめくられて行きます。死によって家族が縮小し、結婚や誕生によって家族が拡大していく・・・。それは役者達が刻んでいく鼓動とリンクして。結婚という概念の表現など愕然とするほどシンプルで象徴的。その表現の実直さとダイナミズムに、観る側は頷きながらリズムに呑み込まれていくしかない。休息があったり、呼吸のリズムが変わったり、舞台は人生の広がりへと昇華していく。

そこまでに舞台を広げた中で、家族の内側の問題までがしたたかに織り込まれていきます。非婚、父親の介護、などの現実や、そのことでの兄弟の反目などが愕然とするほどくっきり浮かび上がってくる。表層の関係性だけではなく、人生の清濁や陰影やそこに人が生きることの重さが、有酸素運動のなかでも観る側にきちんと置かれていくのです。その不思議な生々しさにも瞠目。

やがてそこは整理運動の世界、「長生き」の実感や訪れる死の感触、訪れるものへの受容がしなやかに表現されて・・・。

上演時間は40~50分だったと思うのですが、実に上質なボリューム感がありました。登場人物たちの関係性の広がりは、うまくいえないのですが、たとえばネオン仕掛けの曼荼羅をみるよう。役者たちの呼吸に合わせ灯っていき、さらにはゆっくりと光を落していくような感じのなかで、ひとつの人生の尺やその繋がりに目を奪われて。その死が受容される感覚の内側では、世界観の広がりがひとつの人生の重さに安らかに収束しておりました。

役者は以下のとおり。 

玉置玲央(柿喰う客)、深谷由梨香(柿喰う客)、村上誠基(柿喰う客)、串田仁美 from千葉、元山未奈美(劇団スマイルバケーション) from東京、稲葉瑞希  from愛知、今津知也(オレンヂスタ) from愛知、右角81(劇団バッカスの水族館) from愛知、伊藤寛隆(オイスターズ/フ透明少年) from岐阜、池田和佳美 from三重、大村 亘 from奈良、大西千保 from大阪、吉田沙弥(劇団ひまわり) from大阪、川面紗織 from兵庫、富田文子(劇団ぎゃ。) from福岡 、佐賀モトキ、右手愛美、伊佐美由紀

リズムを編みこんで世界観を表現していくといえば、先日のままごと公演「わが星」を思い出したりもするのですが、よしんばそのメソッドに近しい質感があったとしても、そのリズムで時間の枠を広げて普遍や宇宙感までも俯瞰させる柴ワールトと、物語をシンプルな繰り返し中にこめて呼吸の濃淡の中に人間臭さががっつり残る中屋敷ワールドは、真逆なベクトルを持っていて。「柿喰う客」と「ままごと」、音やリズムに乗せる表現という切り口からの、それぞれの持つ独創性のようなものを改めて感じたことでした。

また、今回は柿喰う客のメンバーが三重に入って、全国の役者とともに作り上げたものを、王子小劇場が「おとり寄せ」したものだそうで。こういうやり方が良い意味での種子となり土壌となって、メソッドが広がり、さらに新しい個性が全国から芽吹いてくればと思ったり。

メソッドにしても、その具現化の方法にしても、もちろん作品にしても・・・。「柿喰う客」というカンパニーが自らの自身を高めるにとどまらず、さらに何かを蠢かせるような勢いが観る側にもしっかりと伝わった公演でありました。

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