「立川亮とタンゴアカシアーノ×渡辺塾国民学校×部活動の「鱈。」」溢れかえる上質なエンターティメント。
2009年12月20日、「立川亮とタンゴアカシアーノ×渡辺塾国民学校×部活動の「鱈。」へ行ってきました。場所は渋谷、7thFloor。
実は先週末は、知り合いの近しい人に不幸があったり、突然自分の携帯が壊れたりで個人的にちょいとへこんでいたのですが、そんなことをまるごと吹き飛ばしてくれるようなパフォーマンス、たっぷりと楽しんでまいりました。
(ここからネタばれがあります。ご留意をお願いいたします。)
開場が30分押し、狭いコリドーでちょいと待ちます。そういう待ち時間が実はわくわくする気持ちを膨らませたりする。何もかもがビシビシとスケジュールどおりに進むショーよりも、そういう無駄な時間が観る側のノリの間口を広げたりするのです。
会場への短いコリドーが人で満ちてきたところで開場。なぜか関西弁で迎えてもらう・・・。ちょっと不自然な関西弁が、ちょっと嘘っぽい感じで観る側をリラックスさせてくれます。場内はほぼ満席。クラスの音、グループで来た人たちやクルーと客の会話、いろんな音が雑然と場内に満ちてくる。そんな風に場内が温まった中で、パフォーマンスが始まります。
*渡辺塾国民学校
初見です。あいだに他のパフォーマンスを挟んで2度登場。本来はピンでの芸をする方なのですが前半は校長先生をお招きしてのスケに徹していました。
芸風的には結構エッジを歩くような危うさがあるのですが、実は体育教員的にまっとうな感覚と一般的な感覚のズレ感が下味になっているような気もして。それは衣装だけではなくネタにもにじみ出ていて、ヒリヒリした緊張感よりも見る側の学生時代の感覚をうまく広げる中で笑いを取っていく感じ。
実をいうと嫌いな芸風ではないのですが、まだまだ尖れるはずなのにとは思うのです。もっと理不尽に世間にあたり散らしても自虐に走っても花開くような気がする。この会場ならそれもありだと思うのです。
*立川亮とタンゴアカシアーノ
お名前は知っていたのですが、ライブをみるのは初めて。
音楽的には圧倒的な力があってみる側を巻き込んでいきます。Vo:立川亮のどこかペーソスすら感じさせるような薄っぺらさがたまらなくよい。ちょっとデカダンスの匂いすら感じさせる風貌があって、それがステージの極上のスパイスとして香り立つ。
全体をラジオの世界に仕立てて、音楽とドラマをしたたかに同居させる演出も、きちんと回っている。DJの仕切りが枠をはめることで、音楽とドラマが酔客にも心地よく入ってくる。なにかアルコールを心地よく巡らせるリズムがあるのです。
そういう雰囲気でのラジオドラマも素敵なべたさで見応えがあって。
立川亮(うたと一人芝居) / 若山隆行(ウッドベース) / 田原亜紀(ピアノ) / 菊嶋"KIKU"キクジ(ドラム)
安田将人(サックス) / 小池孝志(パーカッション) / 栗原順一(転換ギター) / かわばたおさむ(往年のディスクジョッキー)
ロドリゲス剛(山男&ダンス)
ドラマとその音楽性やセンスが相乗効果でがっつりと輝いていく。ウッドベースにピアノとドラム、さらにサックスとベーシックなジャズの音色にパーカッションやギターの音がSE的にも使われ、さらに舞台が広がっていく。
こういうステージって癖になります。確かな力は何かを突き抜けさせるのです。
*部活動の「鱈。」
こちらを見るのは2回目。
バンドがステージに上がって「まばたき」をめぐるアイドル活劇が始まります。前回同様、物語のプロットは気持よくべたなのですが、そのべたさが不要な物語の縛りを緩めて、びっくりするほど豊かな表現が目の前に展開していきます。
その名から想像どおりのアイドルナンバーが挿入されるのですが、クオリティがすごい。生バンドの迫力と安定したボーカルで観る側があっというまにからめとられていきます。狭いステージをギリギリに使っての切れのあるアイドル振りには見惚れるばかり。また、会場の後方では出番の終わった立川亮、渡辺塾国民学校、さらには仗桐安、服部弘敏といったあたりが、ちょっとオタ芸っぽい声を張り上げるのですが、そのお芝居がぐぐっと会場に密度を醸成していく。そりゃ手練の役者や芸人の技が束になっての仕事ですから、よしんば遊び心が加わっていたとしても、その効果は半端じゃないのです。その後の二人の男優の舞台の支え方もほんとうにしなやか。力量は「Ronnie Rocket」の公演でも十分に承知しているわけで・・・。その二人が見せる場所をしっかりとわきまえたお芝居で舞台を膨らませていく。
バンドも舞台をがっつりと支えます。安田奈加のピアノやボーカルには今回も深く強く魅了されて。その伸びやかな生ボーカルが聞けるだけでもぜいたくというもの。Bs:瀬尾雅也、Dr:岡野直、G/Vo:前野卓治に加えてKb:菊川朝子がさらに音に厚みを作り出していきます。
その中での女優達のお芝居には会場を凌駕するだけのテンションがある。また密度が満ちてからの大物アイドルの一曲など息をのむほどに絶品でした。仗・菊川とつないでいくボーカルの力に加えてダンサーとなったメンバー達の動きに抜群の洗練があって。振付も恐ろしく秀逸なのですよ。ちゃんとニュアンスをダンサーに語らせるのです。加えてダンサーたちの表情や個々の四肢の末端にまで通ったパワーが会場の広さをはるかに突き抜けるほどあって、観る側をもう圧倒的にコントロールしていきます。歌って踊れて演じられるというのは本当に強い。上枝鞠生、畔上千春、沖田愛、さらに菊川朝子も加えた4人が紡ぎだす世界はちょっと筆舌に尽くしがたいほど。なにせそれが目の前ですから・・・。
たとえばミュージカルなどでも、一番震えがくるのはこういう場面。その質感にふっと思い出したのが、「Sweet Charity」でボールルーム勤めの3人の想いが昇華していく[there gotta be something better than this]のシーンだったり(ちょっと発想が飛躍しているかもしれないけれど)。物語から派生したボーカルやダンスに合わせて役者たちの高揚がどんどん広がっていくとき、観る者はもうその世界に身をゆだねて浸るしかない。
舞台の下から客席、さらには観客までが巻き込まれて、間違いなく坩堝のような刹那がそこに生まれていた。これって、ある意味奇跡のような時間だともおもうのです。
終演後には忘年会と称してさらにいくつかのパフォーマンスがあって、その一つずつが極上、一切はずれがありませんでした。「速度」(菊川朝子&畔上千春のユニット)は初見だったのですが、歌の世界にすっと入る瞬間のテンションには観ている側の息がとまった。ここまでのパフォーマンスで挑まれると、観る側も感性の鞘を落として、腰を据えて真剣に見入ってしまうのです。
「立川亮とタンゴアカシアーノ×渡辺塾国民学校×部活動の「鱈。」、次回は2010年4月18日とのこと。これは、絶対にゆかねばなりますまい・・・。来年の楽しみをお土産に、わくわく感をそのまま抱いて、終電へと道玄坂を走りおりたことでした。
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コメント
きょうりいちろと、公演したかも。
投稿: BlogPetのr-rabi(ららびー) | 2009/12/27 14:25