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孤天 第二回 「ボクダンス」観る者を浅ましいほど貪欲にする。

2009年12月4日、コマツ企画員 川島潤哉 個人企画 「孤天」第二回、「ボクダンス」を観ました。「孤天」は第一回もの「たとえば皮膚」も観ていて、その舞台の密度や作品の切れに愕然とさせられています。

場所は千歳船橋のAPOCシアター。この劇場初めてです。劇場の天井がとても高いのと下にバーカウンターというか喫茶店があるのがすごく魅力的。演劇をとても快適に観ることができるだけでなく、その余韻を楽しむ環境が整えられている。千歳船橋は都心から若干距離があるのと急行が止まらない不便はあるものの、駅からそんなに離れていないのもよくて。

その中で、たっぷりと川島ワールドを堪能することができました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください。)

冒頭のダンス(をしている人)のシーンから取り込まれてしまいました

流れがひたひたとやってくる。大爆笑したり腹を捩ったりとあからさまに声に出るような笑いではないのですが、独特のウィットが舞台に満ちてきて、観ている側がなすすべもなくどんどんその世界にうずめられていきます。

前回同様個々のシーンが独自の完成度を持っていて。シーンたちのルーズな束ね方も絶妙。全体を通しての流れのようなものはあるのですが、観る側はその流れに頼って舞台と対峙しているわけではなく、あくまでもその刹那に現れるものを受け取って結局舞台側の世界に閉じ込められてしまう。

で、その空気の中に、気配すらなく突然見る側の守備範囲を超えるようなセンスが現出するのです。違和感を感じたり身を引いたりすることすらできないような感覚が光臨してすっと観る側をすり抜ける。

大喜利で一番ダメな芸人の運命を見せられるあたりでこちらがわの理性のアンカーが流されて、あとは舞台に翻弄されるばかり。セキセイインコにあれよあれよと蹂躙され、縄文時代になすすべもなく踏み潰されてしまいました。

でも、不思議なことに、蹂躙され踏み潰されることによって観る側の目が開く。そうして初めて見える作り手の世界の広がりがあって。何かを越えてあふれてくるような感覚がやってきて、その驚きにますます目を見開いてしまうのです。

それが、彼が表現の中で本当に見る側に渡そうとした感覚なのかはわかりません。むしろ、彼が伝えようとした感覚は、私が感じたよりも実はもっと先を行っているような気もする。

ただ、すくなくとも、作り手が見る側の視点にあわせるのではなく妥協をせずにその感覚で挑んでくることで、観る側の何かが突き抜けて解き放たれていくのです。もちろん観客にとっては、役者の演技で観客の視線にまで舞台に落とし込んでもらうことで見える物もたくさんあるのでしょうけれど、逆に観客に対して挑むように表現をしてもらわないと見えない世界もあるのだと気付く。よしんば、観客が作り手の感覚にぶっちぎられたとしても観客にはなにかが伝わり広がる。すべてではないけれど、作り手が観客に与えるのではなく、勇気を持って挑んでくれることによって初めて見えるものがあるように思うのです。

たっぷり、大満足。すごい。

副産物のようなお話。たまたま、私が観た回にはお手伝いや観劇に何人ものすご腕の役者の方がこられていたのですが、終演後彼らの姿を見たり少し言葉を交わさせていただいたりしている中で、彼らの演技が観る側に迎合するだけでなく、観る側の感性に対してしっかりと挑んでいたことに気づき、時間の感覚がどこかへすっとんでしまうような感じが、今回の質感とすっと重なり合って。秀逸な役者のよいお芝居というのは、観る側と作る側が同じことを思う場ばかりではなく、時にはその感性を競う場すら創成していることにまで思いあたった事でした。

このシリーズ、さらなる展開があるのだと思います。それがすごくたのしみ。もう、十二分に満たされているのに、また、出来る限り早く、川島が紡ぐ世界に触れて、観る側として舞台からやってくるものと鍔を合わせてみたいと思う。浅ましいほどもっと見たいと思う。

こういう作品は観る側を暴君ネロのごとく貪欲にするのです。

R-Club

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コメント

きょうr-rabi(ららびー)は、急行した。

投稿: BlogPetのr-rabi(ららびー) | 2009/12/13 14:16

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