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仏団観音開き「レ・ミゼラブルーシート」がっつり作り込まれて生まれるペーソスの力強さ

ちょっと遅れましたが、2009年10月9日ソワレにて仏団観音開き「レ・ミゼラブルーシート」を観ました。場所は新宿二丁目タイニーアリス。

この劇団、コントレビューのような形式では、継続的に公演が打たれているのですが、ストレートプレイでの公演は久しぶり。演劇的側面の強いたっぷりと作り込まれた彼らの世界を堪能することができました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

タイトルのとおり、ブルーシートの家に住む路上生活者たちと青空カラオケのお店(?)のひと冬の話でした。そこに飛田新地のおはこびさんやえせ慈善団体、警察や市役所もからんで、大阪っぽい匂いがいっぱいの世界を展開していきます・・。

掴みの「新世界の車窓から」の映像がうまく観客を取り込みます。天王寺界隈の路上生活者の生きざまに加えて、フェラガモの鞄を持つような商社のサラリーマンが路上生活者になっていく姿にぞくっとくるようなリアリティがあって・・・。

ラフなようで、実は緻密に描かれていく登場人物たちの心情と、ミュージカル仕立てなども駆使した秀逸な戯画化。下世話なシーンと人の心情をすっと浮かびあがらせる密度のバランスが絶妙なのです。

路上生活者や底辺の女性たちの群像劇ともいえるのですが、そのばらばらさとまとまりの二律背反を貫くトーンの作り方がすごくしたたか。ステレオタイプな人々の処理ではなく、キャラクターの個性を埋もれさせないうまさがあって。その雰囲気を作るために、よしんば演歌とミュージカルナンバーがごった煮にして演じても、それらがあたりまえのように成り立つたせる強さがこの劇団にはあって。しかもいろんなメソッドが「・・・風」というレベルではなく、しっかりと作り込んで観客をわくわくさせるほどの切れを持って演じられていく。見せて聴かせる芸に妥協がないというか、表現をおふざけや遊びに終わらせないけじめがしっかりとついているのです。

クオリティがあるから「難しいことは分からない」的ななげやりさや割り切りに、圧倒的な説得力が生まれ、結末にも陰惨なだけではない沁み入るような透明感が生まれる。笑いやパロディーをはさみ込んで人生を描くのに、半端は許されないというような作り手の気概が感じられ、そのスピリットでしっかりした骨や筋肉が作り込まれているからこそ、シニカルな味わいや暖かさ、さらには、諦観やペーソスが、ノイズやあざとさを感じることなく観客に伝わってくる。

役者たちのお芝居が持つ線の太さからきめこまかな質感のペーソスを醸成する、作・演出:本木香吏の芝居のレベルに対する執念のようなものががっつりと感じられるお芝居でありました。

役者のこと、カラオケ店のママを演じた金明玉は街の雰囲気をしっかりと作っていました。とても安定したお芝居から、達観と押しの強さに隠れた人情がうまくにじみ出ていて。路上生活者のばばあを演じた本木香吏は体を張ったお芝居。そこにためらいやぶれがないから観客もそのえげつない人物描写を受け止めることができるのです。現役のお運びさんを演じた藤原求実子には一種の華があって、その色が舞台の雰囲気に溶けて醸成されるペーソスがすごく良い味を出していて、人生に余白を持った女性がきっちりと浮かび上がっていました。かつてのお運びさんを演じた松岡里花は、藤原とは逆に余白をおおむね使い果たした女性の雰囲気をうまく作り上げていました。枯れた中に生きていくことへの力をさらっと折り込んだお芝居に好感が持てました。えせ福祉団体のメンバーを演じた峰U子が作り出す胡散臭さは絶品で存在感も抜群にあって。正統派のコメディエンヌのお芝居を貫いていたと思います。

藤原新太郎はお芝居に加えて歌とダンスで見せました。ジーザスクライストのボーカルに瞠目。こういう役者がひとりいるとお芝居がくっとふくらみます。どこかこてこて笑いよりに目がいっている客席をぐっと締めるような力がありました。お世辞抜きで高揚感を感じるようなパフォーマンスだったと思います。ベッカム木下は強さの裏側に存在する人間としての弱さをうまく醸し出していました。関西風の喜劇に必須のキャラクターの落差がたっぷりと作れていて、物語のすそ野をしっかりと広げていました。東口善計は本木の怪演に喰われないだけのキャラクターを具現化する力がありました。「こんな路上生活のおっちゃんおるわ・・・」と思わせた時点で彼の勝利なのでしょうけれど、それだけではないキャラクターの奥行きがお芝居から伝わってきたように思います。

元商社マン役の桂都んぼのお芝居も実に秀逸でした。一般人の人生から轍を外れて落ちていく様のリアリティに息を呑む。噺家としての表現力の強さをそのままに違う引き出しから実直に色を作っていく感じ。その多才に舌を巻くと同時に、逆コースで芝居が彼の高座での表現力の広がりを作り出していく可能性もあるような。なにか二兎を追っておまけに別の獲物までを銜えてくるようなパワーを彼の芝居には感じるのです。

小林徹は、一般の基準線を舞台に作る役回りで、実直にその任をこなしていたと思います。人の良さから生まれる揺らぎがきちんと表現できていて、それが物語のモチーフを埋もれさせない力になっていたように感じました。

ゲストの宮奥雅子とんとろとんは、出番こそすくなかったもののいずれも好演。しっかりとお芝居に刺さって一般人側の視点を舞台に作り、路上生活者の色を鮮明にしていたと思います。

この劇団、まだまだいろんな可能性を内包していると思うのですよ。キャバレー公演といわれるものの力や今回のようなミュージカルテイスト付きのストレートプレイ、よしんば時間がかかっても、あるラインを凌駕し突き抜けるまで作り込む力というのは半端ではないように感じるのです。

なんというか、いつブレイクしてもおかしくない劇団の底力を感じた今回の公演でありました。

R-Club■□■

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受信: 2009/10/16 11:50

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