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PRIFIX3、たっぷり味わう

2009年8月29日「PRIFIX3」を観てきました。場所は王子小劇場。

今回は合計で7劇団。休日の朝、ちょいと早起きして11時30分に劇場到着。

良席を確保してたっぷりと観てまいりました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

・劇団競泳水着 「地球の上で待ち合わせ」 60分

冒頭にちょっと戯画化されたようなスパイ映画風のシーンがあって。そのなかでの待ち合わせという概念が本編のボディブローのよう。

登場する3組のカップルそれぞれに背負っている時間があって、その表現の仕方がとても巧み・・・。

川村紗也黒木絵美花が演じる女友達の二人は携帯メールでのコミュニケーションがとても秀逸。絵文字の部分が台詞でもしっかりとアクセントになっていて、そこからリズムが生まれお互いの距離の遠さと近さがきちんと観客側に伝わってくる。再開してからのお互いの久しぶり感や親近感に、再び出会う友人がそれぞれに抱えているものもナチュラルにこぼれてくるのです。

細野今日子堀越涼のカップルには、ふっと手を放してしまうというか男女が堕ちていくような感じに高い密度があって。ある一線を越えるときの軽さとさらなる枠を超えられない重さに男女の感覚が鮮やかに浮かび上がってきます。淫靡で自堕落な雰囲気と果たされない約束を洗い流すような雨の音にぞくっときました。

大川翔子澤田慎司のカップル、ゆっくりと何かが離れていく感覚がすごく丁寧に描かれていきます。日々の重さが二人の関係のかけ金をすこしずつはずしていく感じ。シーンごとに日常の空気がしたたかに醸成され、それが二人から発せられてふたりを押しつぶしている感じがしなやかに観客に伝わってきます。過去の待ち合わせや時間の経過をトリガーにした関係再生の予感にちょっとときめいて。

3つのカップルにはなんの関連もないのですが、それを括るように冒頭のシーンが効いてくる。宇宙から地球の上のいろんな待ち合わせを俯瞰するような感じすら生まれて。実は稀有な確率での出会いがたまらなく愛おしく思えてくるのです。

とても高い完成度を持った作品、繊細さと広さを持った上野作劇の力量に瞠目しました。

・ナカゴー 「超能力学園Z」20分

劇団のホームページにもあるとおり、超能力が使えなくなった高校生の話。

最初のペラペラ感にかなり戸惑ったのですが、力技で広がっていく世界にぐいぐいと押し込まれていく。荒く太い線で描かれた物語に登場人物たちのエピソードがすごくベタな風合いで吊るされていくのですが、なんというか、観客が自らの意志にかかわらず手を伸ばしてしまうような魅力が沸いてくる感じ。癖になるような力とでもいえばよいのでしょうか・・・。

出演は以下の通り

日野早希子・米光一成・加瀬澤拓未・壁子・篠原正明・山本夏未

こう、なんというのか、気はあまり進まないけれど観てしまう感、すごく残るのです。

・ロロ 「ディナー」 20分

最初に「脚本が書けなかったので昔の作品をやります」との断わりがあって。でも律儀に食事のシーンなどを絡ませたりする。

始まるとあれよあれよという間に引き込まれてしまいました。立ち位置や向きから拾ってきた父親に対する感覚が示される冒頭。これが結構効いていて、不思議に突飛な感じがしないのです。なしくずしに家庭という構造が崩壊していくのは、既成概念の屋台崩しのようにも感じるのですが、観ている方があるがままに受け入れてしまうような流れが底流にしっかりとできていて散漫さがない。

でも、もっとすごいのは崩れた概念が散らばるのではなく、変容しながら繋がるのです。なんとなく流動体のように家庭が残る・・・。

前回の本公演の時を観た時にもおもったのですが、概念や関係性のつかみ方、さらには表現の独創性にどきどきしました。

出演は以下の通り

篠崎大悟 亀島一徳 板橋駿谷 池田野歩 崎浜純 北川麗 多賀麻美 森本華

・マーク義理人情「白鳥の湖」 60分

冒頭の雰囲気に、本当に60分持つのかとちょっと心配。ところがこれがまったくの杞憂。ボディービルディングの男臭さと似合わない体育会系の雰囲気がじわっと劇場にまき散らされていく感じ。破綻のないぐたぐたで舞台が引っ張られていきます。役者たちの体躯からは想像できないような体の切れがあって・・・。

あまり好きなタイプのコントではないのですが、失笑の導き方を心得ている感じにはすっと乗せられてしまって、観ていての過剰なストレスはありませんでした。

ラフでルーズな空気を作り上げる演技の力を感じる舞台でありました。

出演は以下の通り。

成瀬功 岡崎智浩 高橋康則

・自己批判ショー「自己批判ショーの、とても練習したコントたち」

やくざ者のコント。構成の柱に噺家の世界の借景をさりげなく盛り込んで。

演技に張りや安定感があり、ベースがあったうえでコントコントしているので、観る側もリラックスして楽しめます。

次第に登場人物が増えて、話が膨らんでいくあたりも気持ちよく常道。でも、ベタさを貫いて揺らがないのはけっこう強いことなのです。タイトルどおり、観るものに負担のない笑いを与えるだけの詰がきちんとなされている感じがして。

個人的には好感触でした。

出演は以下のとおり。

山本治 小菅節男 大久保宏章 紺野秀行 鮫島ひかる 中川稔朗 高雄一徳

・Mrs.fictions「20minutes Made」

ちょっと不条理な部分をもっているお芝居なのですが、「うる星やつら」の骨格がうまく取り入れられていて。

空気にソリッドな肌触りを感じるのですが、一方で現実と仮想の出し入れのべたさにも妙に引かれたり。ラムの性格が等身大の人間に置き換えられたりあたるの逃げ方がマンガチックだったりその流れでスタンガンの電撃が普通にあったりするところがけっこう個人的に好みだったりもします。

就職問題がちょこっと風味づけのようにつかわれていて、「うる星やつら」の時代の能天気さに不思議な風化を感じたりもしました。作品の立ち位置の取り方にセンスがあるのでしょうね・・・。いつものMrs.fictionsの香りが王子にもしっかりと持ちこまれていたように思います。

出演は以下の通り

岡野康弘 夏見隆太 今村圭佑 宮嶋みほい 伊藤毅

・バナナ学園純情乙女組 「遊ぶ金が欲しかった+ミニおはぎライブ」

よくも悪くもこの劇団のにおいに海上が満たされて・・・。個人的には決して嫌いな雰囲気ではないのですけれど、やっぱりセリフは聞き取りにくい。

でも、それもしょうがないかなと思わせる雰囲気がこの劇団にはあって、そのノリにはついつい心踊らされてしまうのです。浅川千絵のシュール感、今回も前回でなにか惹かれる。

私にとっては観た感を与えてくれるステージでありました。最初から観ているものにとってはおなかいっぱいの別腹デザートにもなって・・・。

出演は以下の通り

二階堂瞳子・加藤真砂美・菊池佳南・前園あかり 浅川千絵・鈴木康太

2500円の入場料はすでに最初の競泳水着で元をとって、どこかの初売りの茶箱のごとくものすごいおまけをもらった感じ。

フルコースっぽく食べまくった感に満たされて劇場を後にした事でした

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