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あひるなんちゃら「サマーゴーサマー」あひるのてんこ盛り

2009年8月22日ソワレにて、あひるなんちゃら「サマーコーサマー」を観てきました。場所は下北沢OFFOFF劇場。蒸し暑い空気が充満する外とは異なったあひるなんちゃらの夏にどっぷりと浸されました。

(ここから、ネタばれがあります。十分にご留意ください。)

脚本・演出:関村俊介

舞台はお客様のあまり入らない映画館のロビー、なぜか甥の夏休みの宿題をやり続ける映画館のオーナー。その宿題がはかどらないいらだちから発した一言で夏が終わらなくなってしまうのです。  

素敵にゆるい感じの導入部分。主人公のひとことで季節が続いてしまうというありえないような設定が、その場の雰囲気の中でありになってしまうところにあひるなんちゃらの底力があって。

その映画館にやってくる人々の妙な貫き方がたまらなくおかしくて・・。場の雰囲気にすごくゆるい感じがただよっていても、個々のキャラクターはぶれなくタイトに描かれていて、舞台は役者たちの貫く力を持ったお芝居から生まれる隠し味のようなテンションにしっかりと支えられているのです。すてきに方向がずれたキャラクターのベクトルや絶妙な間の外し方にはまったくあざとさを感じさせないほどの洗練があって、観客は受け身を封じられてそのまま気持ちよく転がされてしまう・・・。

宿題をやり続けたり、映画を見続けたり、上映されない映画を作り続けたり・・。街という枠のなかでことこと煮込まれるようになんとなく夏が続いていきます。変化の兆しがあっても、ちょっと残念な舞台の「し続ける」雰囲気にに吸収されていく。その抜け出せなさから淡いペーソスが膨らみ不思議な居心地のよさがやってきて。

黒岩三佳が今回舞台に居続け、そのことによってあひる作品のエキスがさらに濃縮された感じ。黒岩はぼけとつっこみ両方を安定感を持ってこなしていきます。映画館のオーナーという立場と甥の宿題を続けるというベースの部分をがっつりと演じきるなかで舞台を背負っていく。突っ込みの、相手のセリフをその場に行き渡らせておいてからするどく切り返すタイミングが絶妙、十分に相手の世界を抽出しておいてそこから落とすので、テンポを超越したたまらなく豊かなおかしさやってくるのです。永山智啓のかもしだす、ちょっとダルな雰囲気は黒岩との腐れ縁を沁みいるように観客に伝えていきます。気弱ななかに頑なさを持った雰囲気が黒岩の突っ込みをがっつりと受け止めて、脱力系であるのは間違いないのですがある種の密度が二人の間に醸成されていく・・・。

篠本美帆から伝わってくる映画を観る至福がすごくシンプルで、そこに薄っぺらだけれど目一杯の満たされ感と突き抜けきれなさがふわっと浮かび上がってくる。やや強めのお芝居で舞台にキャラクターの居場所を切り開いてお客の少ない映画館の雰囲気に厚みを作ってみせました。江見昭嘉のどこかペラペラした一途さもうまいなあと思う。その場の雰囲気に一段の広がりとおかしみを醸成するキャラクターのシンプルさを演じきっていました。

佐藤達は黒岩の演じるキャラクターの常ならぬ不可思議さを際立たせる基準線のような役回り。ストレートなお芝居には芯に力があって黒岩に侵食され尽くさない強さがありました。石田潤一郎が演じる黒岩の兄にはシチュエーション的なぼけを重ねるような部分があるのですが、その味わいがちゃんと伝わってきて、一方でしつこくないのがとてもよい。根津茂尚はお芝居を骨太にして舞台のボリューム感を上げていました。所々で見せる押し切るようなお芝居が舞台にメリハリを作っていたように思います。関村俊介のちょっと脱力系の演技もなにかほほえましくてよかったです。

澤唯はちょっと飛び道具的なキャラなのですが、場の雰囲気を超越するような不思議な実存感がありました。小林タクシーのお芝居には瞠目。キャラクターが作ったという新作映画のコンテンツがひっぱりだす笑い、ネタ的にはすごくべたなのですよ。でも黒岩の演じる当惑や苛立ちにぶつかった時にそのベタさが輝やいていくような演技が彼にはできるのです。黒岩の醸し出す雰囲気に対して染まる部分と染まらない部分を細かくコントロールしながらキャラクターの色の強さを変えていくような感じ。すごく滑らかにおかしみがあふれてくるのです。

ただ強かったり抑えたりというのではなく、ずっとしなやかに立ち泳ぎを続けるような体力をひとりずつの役者から感じて・・・。そこから抽出される極上の味わいがあひるなんちゃらの言葉にできない魅力につながっているようにも思えて。

しかもその味わいには麻薬のような常習性が潜んでいるのです。

季節の終わり方も、素敵にあっけんからんとして、心に残るような軽さがあって。

しばらくあひるワールドの魅力から抜けられそうにありません。

(おまけ)

終演後、場内では舞台でかかっていたテーマソングを2バージョンのアレンジにしたCDが販売されていました。

これが良いのですよ・・・。懐かしくてどこかPOPで、生理的に好きというか。

しかも、ジャケット裏がサイン帳になっていて役者さんのサインを戴けたり・・・。こういう遊び心にも劇団のセンスを感じたことでした。

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