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劇団鹿殺し「赤とうがらし帝国」、緻密に裏打ちされた自由さ

2009年8月14日ソワレにて劇団鹿殺し「赤とうがらし帝国」を観てきました。場所は下北沢駅前劇場。

劇団鹿殺しは、数年前に新宿南口に路上ライブを観てすごく興味をひかれた劇団。その後に観た池袋シアターグリーンの公演でさらに引きこまれました。

関西の劇団らしいエネルギーとある種のペーソスが魅力。一時期作風に迷いがあったようにも思えるのですが、前回公演あたりから次第に力が戻ってきた感じがしておりました。

作:丸尾丸一郎 演出:奈月チョビ

(ここからねたばれがあります。公演期間中でもあり十分にご留意いただきますようお願いいたします)

菜月チョビ演じるとある女性の半生記。

冒頭に主人公に内包されているという骨たちの存在が示されてさらに「赤とうがらし帝国」に願い続ければ想いはかなう」という物語を貫くエピソードが語られて・・・。

そこから骨の一つずつのエピソードを綴る形で物語が進んでいきます。

物語は波乱万丈というかかなり奇想天外なのですが、物語の中心線がしっかりしているので、チープとさえ思えるエピソードたちも物語とのかかわりの中で違和感なく受け入れられてしまう。素芝居だけではなく、歌仕立てがふんだんにあったりアクションやギャグを巧みに織り込んだりで、わくわく感を与えながら、観客を取り込んでいく感じ・・・。シーンの見せ方に関西系の劇団が得意とするけれんがいっぱい溢れていて・・・。音や光も贅沢にがっつりと役者たちをひきたてていく。

歌も良いのですよ・・・。菜月チョビのボーカルは聴く者の心を浸潤するに十分すぎるほど。李の曲の美しさがほんと心にしみるのです。役者たちのダンスやアクションもしっかりと鍛えられていて、力感と緻密さに心地よく圧倒される。。

一時期、不安定で窮屈な部分があった役者たちの演技や「芸」が今回の公演ではきちっと安定して、観る者をぶれなく引っ張っていってくれる。

超ベタなギャクもそれなりにあるのですが、役者に迷いがなく絶妙に演じ上げてくれるので舞台のテンションが切れることなく温度がちゃんと上がっていくのです。

その一方で骨の中味がひとつずつ浮かぶうちに、主人公が生きることへのペーソスがそこはかとなく舞台の奥行きを広げていきます。骨になっていくものたちの諦観に主人公に対する想いが込められていて。

主人公自ら骨となろうと思っていた存在が逆に主人公の最後の骨になっていく結末に、心を奪われてしまいました。

終わってみれば、奇想天外がどこかに消えて、主人公の人生の力強さに心を満たされて・・・。そこにある一人の女性の生きざまを不思議なリアリティとともに実感したことでした。

役者のこと、大技・小技を淡々とこなす脇役陣の出来がすごくしっかりしているのです。谷山知宏・岸潤一郎・丸山厚人・橘輝といったところの演技が細かい部分まで安定しているから舞台全体の盛り上がりに斑がない。パワーが客席にぐっと集中される感じ。高橋戦車のお芝居には力技にあざとさを感じさせないというか、ビリケンのような反則技もこの人なら許されてしまうような人徳があって。山岸門人の演技には繊細さがあって、舞台の密度が細かく作られていく。

女優陣にも底力がついてきました。傳田うにには不思議な淡さや淡白さを醸し出す力があって、物語に陰影をうまくつけていく。坂本けこ美にはぐっと凝縮したような力が内包されていて、他の個性の強い役者たちと渡り合っても埋もれないのです。

丸尾丸一郎のお芝居には大きさがありました。舞台の視線をしっかりと受け止める力を感じて。オレノグラフィティのお芝居が持つ奥行にも魅力が増したように思います。

菜月チョビの舞台を引っ張っていくちからには今回も瞠目。で、今回はそれがすごく心地よさそうに見えるのです。演じていても手ごたえがあるのでしょうね・・。余計な負荷を背負うことなく自分のペースでお芝居ができているように思えて。

「僕を愛ちて」からついつい見続けてしまっていますが、今回はたぶん私が観た中でも一番の出来かと思います。一時期いろいろとあった劇団ですが、力が過去を凌駕しさらに勢いを感じる・・・。

これからの鹿殺し、ほんと楽しみです

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