« キリンバズウカ 「スメル」ウィットに潜んだ表現のすごさ、それを支える役者のすごさ | トップページ | 世界名作小劇場「ー初恋」、コメディだけではないなにか »

「「UNO:R」「ひばりの大事な布」「GOOD DESIGN GIRL LOVES ART」(先週の3作

ちょっと遅くなりましたが、先週の3作をずらずらっと。

(コンテンツにはネタバレがいっぱいです。十分にご留意ください。)

・「GOOD DESIGN GIRL LOVES ART」(Bバージョン)@Le Deco 5th

作・演出は伊藤伸太朗

3本の20分強の短編として観てもいろんなニュアンスがこめられていて楽しめました。あの場所での緻密なお芝居ですからそりゃ観ていて引き込まれました。個々のキャラクターのテイストがほんのすこしあざとく出ているところもすごくよい。

前提になっている大きな物語の匂いをあらかじめ折り込みパンフレットなどで打ち出していることがボディーブローのように効いていて、伊藤伸太朗のキャラクターなどにも統一感があるので、短編といっても観る側には世界感がなんとなくあって、それが観ているものを物語にうまく誘い込んでくれる。

台本にはいろいろとプチエロなイメージがちりばめられてはいますが、それとは別に物語自体に骨がきちんと隠されていて・・・・。バランス感覚が絶妙。重くもなくそれほどチープな感じもなく楽しめました。

伊藤流のこういう遊び心、個人的に決してきらいではありません。

女優陣もそれぞれに見ごたえがあって。あの場所での緻密なお芝居ですからそりゃ観ていて引き込まれました。

本田留美の演じる小学生は、伊藤の演じるキャラクターを受ける感じの強い演技でしたが、そのなかに伊藤が惹かれるだけの魅力をがっつり醸し出していて・・・。太田美登里は一見飛び道具風なのですが、ペーソスをしっかりと観客側に与えてくれる。観ていて不思議な安心感もあって

松崎みゆきには伊藤と渡り合えるだけの懐の深さのようなものがありました。ちょっとオカルトのテイストもあるお芝居ですが、そこへの入り込み方がうまくコントロールされている感じ。けれんもありましたがそれに動じず全体の物語の枠をうまく維持していたと思います。

ハマカワフミエの美少女はもうそれだけで存在感があって。しかも比較的太い演技のトーンをがっつり維持できる力もあり、見惚れてしまう。帯金ゆかりの演技の鋭い立ち上がりと舞台の色を染めきるようなハイテンションには今回も瞠目するばかり。でも、ただいたずらに感情の高さを演じるのではなくメリハリがしっかりとある演技でもあったりで、その存在にある種の貫禄を感じるほど。伊藤の存在を殺すことなく、舞台全体の熱を上げていくようなハマカワと帯金のからみには稀有とも思えるな見ごたえがありました。

いやぁ お世辞でもなんでもなく、全編観たいと思いました。スケジュールの関係でかなわなかったのがとても残念。

・「UNO:R」 アップフロント エージェンシー@池袋シアターグリーン

空間ゼリーの坪田文作・深寅芥演出作品。メロン記念日の4人がメインで出演するとのことで超満員。劇場の外にはあまりチケットを求める人が多数出るほどの大盛況。

とある地方都市の喫茶店が舞台、雨の夜に現れた同窓会帰りの3人。夫婦でやっている喫茶店のマスターは彼女たちが卒業した学校の先生らしい。でも彼が同窓会に参加することはなかった。

もう一人、同窓会に参加しなかった女性、彼女は東京で中堅のタレントをしているらしい。

雨の夜、閉店間際の喫茶店にやってくる人々の間で在学中に亡くなった友人のことが次第に解き明かされていきます。

坪田文の脚本は舞台に絶妙なフォーメーションを作り上げ、そこから彼女たちの物語をほどいていく・・。

マスター夫婦に加えて、雨宿りがてらの前半の新人演歌歌手とマネージャーをまるで鑿のように使って少しずつ固まったものに割れ目を入れていく手腕が絶妙。

さらにタレントになって街を出ていった女性が加わり、彼女たちのもう一人の友人だった女性の妹が登場することによって過去の物語がばらばらとほどけていく。

しかもばらし方を一本道にせず、いくつもの糸をほどきあいながら芯を垣間見せていくようなところが坪田作劇の凄さで・・・。

メロン記念日の4人も、物語内でしっかりと自分の旋律を演じきって大健闘でした。力のある脚本と演出は、メロン記念日(斉藤瞳、村田めぐみ、大谷雅恵、柴田あゆみ)のメンバーに単なる当て書きで役を演じさせるのではなく、役を演じるのがたまたまメロン記念日のメンバーだったというところまで、しっかりと役者たちを追いこんでいましたしね。坪田文的技量ももちろんあったのでしょうが、同時に深寅演出が彼女たち個々のもつ役者としての力を丁寧に引き出していたように思います。結果、舞台役者としての彼女たちは及第点を持って機能していた。一人ずつのキャラクターがそれぞれのベクトルを持ってしっかり立っていた。解き明かされていく時間のなかで変化していく想いがきちんとお芝居にのって色を醸し出していたというか、坪田脚本を遜色なく具現化していたというか。

まあ、前半部分は、主として演じられていない部分の空気が停止してしまっていたような感じがして、そこだけがひっかかりましたが、それとて後半の勢いをさらに強調するための手腕にも思えて・・・。

また、それを支える役者たちも実に安定していました。マスター夫婦の作り上げる舞台の枠のような部分がすごくしっかりしている。成川知也は狂言回しとして揺るぎのない演技。舞台全体の密度をしたたかにコントロールしていました。平田暁子にも力がありました。間の取り方のうまさやせりふの通りが突出しているし、ナチュラルでありながら舞台の空気をすっと変えるような力があって。舞台全体の下支えをするにとどまらない彼女のお芝居がしっかりと出来ていたように思います。一戸恵梨子の存在感も大きかったですね。特に前半の舞台をあたためて見せました。キャラクターの作り込みがしっかりできていると思うのですよ。だから華の部分とプライドと売れないドサの雰囲気がうまくかみ合っている。半田周平のマネージャーは、ちょっと演技が生真面目過ぎる感はあるものの、キャラクターの持つ「我」の出し方に切れがあって、要所での物語へのつっこみは物語にメリハリを与えていたと思います。武田朋子も舞台に強い印象を与えていたと思います。

西田愛李のお芝居力にも目を奪われた。緩急や陰影のメリハリがしなやかで、ここ一番の高揚も表現できていて。この人、観るたびに演技の奥行きが増しているような・・・。

坪田・深寅コンビの作劇にとりこまれて、小難しいことを何も考えずお芝居を楽しんでしまいました。

ひばりの大事な布」 ろりえ@早稲田どらま館

ろりえは前回につづいて2回目。

前回は勢いに乗せられて最後まで観てしまった感がありましたが、今回は物語がきちんと収束して、テーマもしっかりと観客に伝わっていたように思います。足もとがぐっと固まってきた感じ。

そりゃ、けれんや猥雑な部分がなかったとは言わないけれど、「男女(?)間のもう一言があれば、あるいはもう一歩踏み出せば・・・」という話にはまっとうな力を感じたことでした。蜘蛛の巣のように繋がっていく人間関係の中で、デフォルメされたものであっても個々の女優の芝居力が伝えるものには観客が十分に受け入れうる実体があるのです。

人によって好みはわかれるのかもしれませんが、突きとおすようなニュアンスがどこかチープな感触とともにするっと入ってくる。えっと思ったり下卑に笑った後でけっこうじわっとくるような感じが心に広がることが多々あったり・・・。

終盤のけれんが生きるのはそこまでに満たしているものが舞台上にあったからかと。客いじりはべたといえばべたなのだけれど、きちんと観客を味方につけていたというか・・・・。観客に声を出させる説得力を感じました。

出演は以下のとおり

梅舟惟永、斎藤加奈子、志水衿子、徳橋みのり、内田雄大、奥村徹也、高木健、松原一郎、宮崎みほい、吉江浩、横山翔一、安田裕美

梅舟惟永のお芝居は劇団競泳水着の時よりさらにヴィヴィッドで、自由度を高めて、どこかに甘えがある女性を実直に描いてみせました。しなやかさがあってナチュラルさに満ち人を引き付ける・・・。実はすごくユーティリティのある女優さんなのだと思います。

斎藤加奈子もくっきりとした場を作りあげました。キャラクター設定もあってか観ていてすがすがしい。するどくてもキンキンした感じがないのも魅力かと。志水衿子のテイストもはシュールな役回りに乾いた切なさがひろがって。すごくキャッチーな感じがしました。

徳橋みのりにも存在感がありました。ずっと化粧を続ける前半が後半の展開にしっかりと効いてくる。物語を貫くお芝居に揺らぎがないというか・・・。舞台の広がりよりもさらに大きくお芝居を広げる力があって、舞台をがっつり構築していたと思います。

他の役者たちも、荒業をもろもろこなししっかりと舞台を支えていて・・・。役者の真摯さがきちんと舞台から伝わってくる。すごく締まった舞台をがっつり構築していたと思います。

余談ですが・・・・。前回の冒頭といい、今回の客出しといい、ここのダンスからは麻薬的ななにかがやってきます。役者は凄く体力を消耗しそうなダンスなのですけれどね・・・。観ている方は確実にハマります。で、今回は観客全員がはけるまで踊り続けるという恐ろしいことをやっておりました。

この劇団、なにかちょっと通常の間尺に合わないようなすごさを感じるのですよね・・・。もちろん褒め言葉ですが。

R-Club

|

« キリンバズウカ 「スメル」ウィットに潜んだ表現のすごさ、それを支える役者のすごさ | トップページ | 世界名作小劇場「ー初恋」、コメディだけではないなにか »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「「UNO:R」「ひばりの大事な布」「GOOD DESIGN GIRL LOVES ART」(先週の3作:

» 【松嶋菜々子】こんなのあったの?全裸入浴シーン(見えちゃってます) [■松嶋菜々子■【全裸】で入浴!衝撃のCM!!]
'95年に放送された日産車のCM「アベニール・サリュー」で全裸入浴シーンを披露していた松嶋菜々子。その内容は、現在の松嶋からは考えられないくらい過激だ。 [続きを読む]

受信: 2009/07/16 16:24

» ◆北川景子◆噂の彼との流出映像【ニャンニャン映像】 [◆北川景子◆噂の【ニャンニャン映像】]
月9にも出演「北川景子」、噂の彼氏とのプリクラ画像やニャンニャン映像など [続きを読む]

受信: 2009/07/16 19:48

« キリンバズウカ 「スメル」ウィットに潜んだ表現のすごさ、それを支える役者のすごさ | トップページ | 世界名作小劇場「ー初恋」、コメディだけではないなにか »