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ロロと文化村のイベントは画廊繋がり

予想をはるかに超えて心を惹かれたるものを二つばかり。

ひとつはロロの公演。すこし前になりますが21日に観てきました。ここは前回の15MINUTES MADEで観て、既存の感性をすっとのりこえたところに惹かれた劇団。

もうひとつはBUNKAMURA Galleryで開催されている「real Osaka」というイベントのなかのギャラリートークショー。絵をみたりするのは好きなのですが、美術の業界ってまったくわからなくて・・・。でも、そんな私にもこれはおもしろかったです。

(ここからネタバレがあります。十分にご留意ください)

・いつだっておかしいほど誰もが誰か愛し愛されて第三小学校

前述のとおりロロは前回の「15MINUTES MADE」で拝見して、興味を惹かれた劇団です。で、今回の公演、あちらこちらの評判を読んだり聞いたりして、是非に観たくなりあわてて予約。

決して広いとは言えない新宿眼科画廊は当日満席、けっこうぎゅうぎゅう詰め。まあ、1時間程度の上演時間ですから、それも味のうちかと・・・。

内容はといえば、本当に小学生の世界でした。ただ、そこにはかなり大胆な切り口があって、観客から見るとギュッと絞ってそのころの感覚が抽出されている感じ。女の子が提示する小芝居の不思議な理不尽さや、ギターを抱えた少年の歌が変わっていくあたりから、子供からしだい脱皮していく姿がすごく瑞々しく伝わってくるのです。好きという感情が、ただわき起こって相手にぶつけられていくところから、相手の具体的な感性への憧憬に変わっていくような部分に惹きつけられたり。風変りな転校生に見えるものが次第に少年に共有されていく姿がすごくよいのです。

大人になるといろいろと美化してしまうような記憶なのですが、そのヴェールをさらっとはぎとってくれるような力が舞台からやってきて・・・。

知らず知らずのうちに変わっていく少年だけでなく、同級生たちのキャラクターやその温度差にすごい実存感があって息をのむ。先生のデフォルメのされ方もすごく秀逸。

クラスの内側と外側がライティングで切り分けられているところも、物語の枠をしっかり醸成していて、舞台をぎゅっと締めていたようにおもいます。

若干の荒さがあるとはいえ、役者の切れもすごくよかったです。コンサバティブなバレエの動きを取り入れたような先生の動きに感心。しっかりと歌える役者のいる座組のメリットも十分に生かされていました。終幕ちかく、「卒業写真」とプチパンクな歌が重なりながら場内を満たしていくのが圧巻。ベタな盛り上がりではなく、そこに先生や生徒たち個々の姿が切り取られているところにこの劇団の力量を感じたことでした。

脚本・演出 :三浦直之

出演:亀島一徳 北川麗 小橋れな 望月綾乃 長澤英知 崎浜純 池田野歩 椙山聡美

彼らの作り出すものをもっともっと見たくなりました。12月の王子小劇場が今から楽しみです。

・REAL OSAKA‐大阪発12人の提供でお送りします‐

渋谷文化村 Bunkamura Galleryにて開催中の「REAL OSAKA」と銘打った展示を観てきました。大阪の3ギャラリーが共催して、それぞれが押す12人の若手アーティストの作品を展示しています。

で、7月26日に半ば偶然に足を踏み入れたところ、おかけんた氏のギャラリートークを聴くことができました。これがすごくおもしろかった。出典をしているギャラリーのオーナー達とトークをしながら、それぞれの画廊の特徴や視点を浮き彫りにして、さらにはアーティストたちを紹介していくという試み。「大阪的、売り手 作り手 買い手の手の内みせましょか?」とのトークタイトルどおり、三つのギャラリーの個性を見事に抽出しながら、各アーティストの作品が持つテイストを開示していきます。オーナーとの師弟関係のなかで、自らの審美眼を磨き感性を開花させていったという展覧舎の山本啓介氏、3代目としてノウハウをしっかりと受け継ぎながら、自らの感性をそこに展開していったというフクダ画廊の福田晋也氏、事務機器のNo.1セールスから、自らに合う仕事へと転身しその感性を解き放ったという帝塚山画廊の松尾良一氏・・・。

おかけんた氏は、彼らのビジネスとしてのアートへのかかわりあいを隠し立てすることもなく、一方で彼ら個人のアートとのかかわり合いの歴史や想いを実に巧みに引き出していきます。画廊を舞台にしたドラマがしなやかに浮かび上がってくる感じ・・・。

その上で紹介されるアーティスト達のトークからは、表現者としての側面だけではなく、それが画廊によってどのように評価されて観る者に提示されているのかも伝わってきて。

1時間30分、立ち疲れることもなく、おかけんた氏の話芸と彼のセンス(べたな言い方ですが)が作り出す世界に取り込まれてしまいました。

***  ***

そのあと、ゆっくりと展示を拝見。心をがっつり掴まれるような作品が何点もあって・・・

中でも、特に印象に残った作品といえば・・・。

‐倉澤梓 「マチボウケ」

こちらで出展された展現舎画廊のHPを観ることができます。(リンクに問題があるようでしたら削除しますのでご指導ください。

http://tengensya.jp/artists.html#artists07

赤を基調とした駅の風景に、擬人化したうさぎがひとり階段に座り込んでいます。。駅のファシリティがきっちりと描かれていて、なおかつ駅の表示などをみると異国かパラレルワールドのような感じもして。

でも、その世界のうさぎだからこそ、「マチボウケ」の純化された孤独が観る者を強く浸潤していくのです。無機質とも思えるその場所が、うさぎの心情をすっと浮かびあがらせていく。眺めているうちにうさぎの行き場のない切なさに次第に心が同化していく感じ。それはいままで体験したことがなかったような不思議な力で・・・。

しばらく絵の前から離れられませんでした。

倉澤氏の作品は他もすごくキャッチーでした。擬人化されたものに、ふくらみを持った心情を伝える魔法が隠されているよう。「HUMAN EXPRESSION」に英語の動物名がつく一連の作品もそうだし、「コノヤロー!!」という絵のビルを蹴とばす擬人化されたねこにも、ふっと共感を覚えたことでした。

・添野郁 「或る風景Ⅱ」

展示会のHPにこの絵が掲載されています。(リンクに問題があるようでしたら削除いたしますのでご指導ください

http://www.bunkamura.co.jp/gallery/090725osaka/index.html

その吸い込まれるような力にやられました。眺めているうちにある種のトリップ感というか疑似世界の瑞々しい空気の感触がやってくるような・・・。街の音が聞こえてきそうな気がする。その世界の空気に次第に包まれていくのです。

ふっと絵の中の世界に現が取り込まれてしまったような気がする。その世界の、あるはずのない記憶の存在感すら感じる。

ゆっくりと深呼吸してその世界から抜け出しても、帰る場所のない記憶が心のどこかを支配しているように思えたことでした。

添野氏の別の作品、3連作となる「ouraiⅢ・Ⅰ・Ⅱ」には別の力がありました。風景がなく人の往来だけが描かれた作品。人の流れのリアリティに観る者の記憶が風景として絡めとられていくような・・。

こちらの作品にももしばらくその場から立ち去ることを拒むような、力がありました。

なお、今回の展覧会に展示されている作家は以下の通り。

阿部岳史・小沢団子・国本泰英・倉澤梓・小松孝英・添野郁・高橋淳・Chapuri・寺村利規・向井正一・momo・森田存

他の作家の作品も、すごく刺激的で・・・。8月2日までの開催とのことで、渋谷にいかれることがあれば是非にお勧めです。心も体もふっと暑さから解放されるかもしれません。

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