殿様ランチ「ねずみの夜」、切れのあるコメディ
7月29日,初日ソワレにて殿様ランチ「ねずみの夜」を観ました。この劇団は初見です。坂本龍馬が暗殺された夜の隣の家での話という怪しさについつい惹かれて・・・。。
で、失礼な言い方ですが、これが期待を大きく裏切るおもしろさでありまして、正直びっくりしました。
(ここからネタばれがあります。公演期間中でもあり、特にこれから作品をご覧になる方は十分にご留意をお願いいたします)
舞台はまるで郷土資料館のような趣き、蓑や笠、水甕などが説明パネルつきで展示されていたり。そこにあらわれたさして興味のない観光客と職員の絶妙に温度差の違う会話が始まります。すでにこの段階で、笑いのクオリティにただものではないと感じるだけのよい雰囲気がただよってくる。しかも、伏線をしっかりと残して、したたかに幕末のお芝居につながれていくのです。
坂本龍馬が暗殺されたという近江屋の隣の家が、義賊のアジトという設定。そこに現れる様々な人々。龍馬暗殺をちらつかせて、その緊張感をスパイスに義賊たちの内幕劇をだれさせない。侍が迷い込んでくるあたりから物語にどんどんと膨らみが生まれて。
笑いの質がすごくよいのです。キレがよいというか、直球や変化球のコンビネーションが自在にツボにはいりこんでくる感じ。さらっと回想シーンを織り交ぜたり、小技をいろいろと入れ込んだり・・・。ディテールをつつくようなネタの瞬発力、時代の垣根をはずしたり、おおきく物語の作りで笑わせるものまで、バランスよく織り込まれていく。さらっとしていて、でも上っ面にならない密度が舞台にしっかりと構築されていて。なんというか、センスがすごくよいのです。
劇中にさらっと挿入される「大政奉還になったって」という言葉のものすごさに思わず吹いた。「動体視力のネタの展開に目を見張ったり。
伏線の張り方などもすごく巧みで、ベタなものから斬新なものまで長短いろいろであきさせない。作り込む限りはがっつりやるみたいな空気が舞台にあって。なにか、昔の東京サンシャインボーイズのテイストを感じたり。
中盤にごくわずかだけ、間が埋められないというか中だるみを感じたのも事実なのですが、それは初日故のことかも。公演期間の後半には解消されていくような感じもします。逆に、流暢に流れていく中での小さなよどみが気になるほどに、舞台上のテンションがしっかりと取られているわけで。
タイトルの「ねずみ」の掛り方も鮮やかに、ラストまで伏線がしっかりと生きて、こういう折り目のちゃんとあるコメディは観ていてすごく気持ちがよいのです。
役者にも凛としたハリと切れがあり、一人ずつの個性がしっかりと描かれているのがよい。ちゃんと個々の役者に常ならぬ個性をつくって舞台を広げていく。だから、「日本を変えるような大事」のすかし方が舞台をしらけさせずに生きるのです。
そうそう、きもの姿の女優陣、所作が凜としてすごくきれいで、そちらにも好感が持てました。
上演時間も「もう少し見たい」と思うほどにちょうどよく・・・。
作・演出:出演:板垣雄亮
出演:
杉岡阿希子・平塚正信・南あゆ美・藤堂敦・小久保剛志・板垣雄亮・小笠原佳秀・相樂孝仁・鈴木じゅん・最所裕樹・柳さおり・服部弘敏
是非にお勧めの、上物エンターティメント。もしかしたら、今公演を観たことが、10年後には自慢になるかもしれません。
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