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クロムモリブデン「空耳アワー」心地よいほどシンプルで深い

6月17日ソワレにてクロムモリブデン「空耳タワー」を観ました。クロムモリブデンはここのところ一作ごとに惹かれて続けている劇団。今回も非常に秀逸な舞台になりました。

(ここからネタばれがあります。充分にご留意ください)

作・演出 青木秀樹

会場に入ると一見シンプルな舞台。特に緊張感もなく客入れが進んでいきます。ほぼ満席の場内の音楽が変わるとすっと客電が落ちて舞台が始まります。

物語に出てくるキャラクターたちは、何かがデフォルメされていて・・・。

そもそも女性のストーカーをしていて相手の背中を指してしまう男も異常なのですが、その息子の犯罪を、「物を買って出したお金よりも多いおつりがくるような方法」でかばう母親の粛々と事を運ぼうとするところも空恐ろしいというか・・・。いきなり気持ち良く突き抜けていくというか・・・。その傷害事件の濡れ衣を着せられた男の妙に淡々とした部分、戯画化された刑事たち、さらには捕まった男のありばいを証明するはずの劇団の主宰が新人に振り込め詐欺を演じさせるなど、なにかが掛け違った感覚がすごくナチュラルにやってきます。その世界を縫うように「嘘と本当を見分けることができるようになる」という丸くて四角くて三角なものを町じゅうに売りさばいていく女性。

キャラクターはそれぞれに、
何かを具象化したような強いイメージを発しているのですが、
一方でバックグラウンドが
心地よいほど潔くそぎ落とされていて・・・。

それらが個々に唯我独尊という感じで、
色をそのまま保ちながら物語を進めていくのです。
饒舌に語られる言葉に対して、
短いイメージのような言葉がまるでダンスのように返されて
(短い言葉がリズムを刻むように繰り返される)、
個々のキャラクターの色が一層強調されていく。。

さらには誘拐・・・。刑事にも独特の趣があって・・・。

オブジェが配布されていくその中で、
不揃いのドミノがそれぞれの形状を保ったまま倒れていくような感覚で
つながっていく物語。
思いっきり惹き込まれているうちに、虚実の色分けが独り歩きをしていく中で現出した終盤の世界に
取り込まれてしまうのです。冒頭からの突き抜け感がそのまま昇華して違和感もなく不可思議な世界に迷い込んでしまう。祈りが舞台の色を一気に変えていくところでのさらに物語の天井が開いた感じにぞくっときました。

役者達の演技の緻密なこと・・・。
奥田ワレタの母親役からやってくるある種の「ピュア」にはものすごい実存感がありました。なにかにころっとだまされるような素直さ、冷静で理知的な部分と、さらには自分中心な感じのトーン・・・。本来相容れないものが同じにおいを繊細に漂わせて収まりよく同居している感じ。もう見惚れてしまいました。その息子を演じた久保貫太郎は逆にたよりない表層とがんこなコアの落差をしたたかに演じきって見せました。おとなこども的な気持ち悪さを確信犯的に醸し出しながら、一方で親子の関係にナチュラルな説得力が生まれていて、こちらも好演だったと思います。

ケイっぽく劇団の主宰を演じる板倉チヒロは、観目だけで十分にキャッチーなのですが、そこから伝わってくる「したたかさ」の質感には常ならぬきめ細かさがあって・・・。仕草やせりふの一つずつがすごく切れていることでその解像度が重さにならないところもすごい。その弟子を演じた渡邉とかげは存在感の出し入れが細かくしっかりとできていました。板倉が作り出す色になじんだかと思うと、むしろ板倉や他の役者たちがが映えるような演技もしっかりと織り込んでいく。舞台の深さが彼女からさりげなく生まれていく感じ。

背中を刺された女性を演じた幸田尚子は、ストーカーされるだけの端正な美しさを保ちながら、その中に息づくやわらかい何かに言葉にならないような違和感を表現していました。金属的な硬質を演技の中に作り出せる一方で、すごくナチュラルなお芝居のなかにずれをつくる器用さがあって。その演技の広さがとても魅力的。

濡れ衣を着せられた男を演じた森下亮が演じるなすがままのようなキャラクターには観ているものを取り込む不思議なふくらみがありました。彼の演じるキャラクターの脱力感のようなものがちゃんとドラマの推進力として機能していく。パワーを持った脱力感とでもいうのでしょうか・・・、そこに彼の技量を強く感じました。。

男の刑事を演じた金田淳のきっちりした演技は嘘っぽいハードボイルドさを物語になじませていて。木村美月が演じた女刑事もどこかに嘘っぽさはあるのですが、それを凌駕するほどなかっちょよさがあるのですよ。二人の刑事の舞台への刺さり方は物語に香りを与えるスパイスのような役目を果たしていて・・・。

金沢涼恵が演じた訪問販売員、物語の狂言回し的な存在でもあるのですが、なんというのだろう、彼女の演技にはいろんな意味での厚みを感じるのです。商品を売りきるだけの技量のようなものがしっかりと伝わってくる一方で、やり手の販売員としてのあくの強さがそこはかとなく残っていたり、ちょっと自分本位な感じを醸しつつ、どこかに可憐さを漂わせたり・・・。いくつもの色が彼女のなかで絶妙に操られて物語の土台になっている。しかも力みが感じられないお芝居で、終盤舞台を満たしたカオスの明暗を一気に変えて見せるのです。

最後のシーンたちからあざとさを感じることなく、
絡まった紐がすっとほどけるような心地よさがやってくる・・・。

この作品、人によって好みは分かれるかもしれませんが、
少なくとも私にとってはツボを連打されたような部分があって
むさぼるように観てしまいました。
笑いのセンスも個人的には大好き・・・。
あと、衣装に舞台の色を維持する洗練があって旨いと思ったり。

用事ができてしまい終演後あわただしく劇場を出たのですが、もう少し劇場で余韻に浸っていたかったと思わせるような魅力がこの舞台にはありました。

クロムモリブデン、こりゃ次回公演もとても楽しみです。

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