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Prifix2 色とりどりのたのしさよ!

5月11日、王子小劇場にてPrifix2を観ました。さまざまなタイプの芝居が集まって、観ていてあきませんでした。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

・柿喰う客 「邪道・プロポーズ」

いきなりベタな関西風漫才から始まります。コンビ名はアントンとチェーホフ。そのやりとりは、多分チェーホフの戯曲の一部になっている・・・。速いテンポと小気味よいリズムで漫才の稽古が進んでいきます。その漫才っぽい部分自体におもしろさというか物語の展開を期待させるところがあって・・・。また、グルーブ感をもって表現できているので、ネタが世間で受けている(新人賞をそのネタで取った)ということが違和感なく観客に伝わってきます。

でも、漫才の稽古は何度も中断されるのです。先輩の芸人っぽいキャラクターがおためごかしに二人の間に入り込もうとしたり、あつかましいファンが時間を止めたり、新しいネタへの意欲があってもプロデューサーのような人物が練習しているネタを続けるように推奨したり・・・。

で、劇中漫才のネタが走っているシーンでは明るく照らされている舞台が、バックステージ的な部分になると照明が落ちる・・。そこに世間からの評価を集めて走っているランナーたちの揺らぎのようなものを感じて・・・。

コロ、深谷由梨香の漫才、つくられたような関西弁が機能するのは、彼女たちの旨さに加えてネタに演劇的スピリットが編み込まれているからかと・・・。古典のテイストに対してこういう自在な色の作り方ができるのってすごいとおもうのです。七味まゆ味の3役がそれぞれに醸し出す世界の力加減も絶妙で・・・。切れがあってキャラクターの色や粘度のようなものがしっかりと表現されていることが、物語にさらなる奥行きを与えていきます。

アントン・チェーホフの生涯をモチーフにした作品って他にも観たことがあって、たとえば井上ひさしの「ロマンス」あたりでは、作家としての彼の苦悩が人間臭く描かれていましたが、同じものを中屋敷は漫才というフォーマットに押し込めた感じ。

表現を縛る者への苛立ちのようなもの・・・・。スタイルを揶揄する周囲や、贔屓を引き倒すようなファン、新作をやりたい二人に対して、冒険をせず安全に今のままでもう少し引っ張ろうというプロデューサー。それに対するアントンとチェーホフのとまどいが、物語からしたたかに浮かび上がってくる。

世間からの評価がもたらす高揚感と称賛の光が影をつくり、表現者のルーズで破綻のない苦悩にやわらかい実在感を与えていく・・・。ぞのしたたかな陰影のつけ方に、中屋敷が持つ作劇センスの卓越を感じるのです。

1時間の割り当てに30分の戯曲。でも、作品自体に舌足らず感があるわけでもなく、そのボリューム感は充分に感じられたので、上演時間が短かったことには全く不満はありませんでした。むしろ残りの30分を中屋敷みずからがコントで埋めようとしたのにちょっと驚いた。(しかも適度におもしろくてもう一度驚いた)、そこは、彼流のけじめなのかもしれませんけれど、私個人的には本編ですでに大満足で、なにかおまけまで貰った気分になったことでした。

・Plat-formance 「irregular」

劇団初見。総理大臣と秘書の情景が描かれていくのですが・・・、発想がすごい。総理大臣も秘書も実は10代で歳をごまかして総理になってしまったという・・・。一国の政治を預かる人間たちのいい加減さと子供っぽさに笑いながら、ふと気が付くとそれらが見事に今の日本の政治の雰囲気とダブる部分があって。

政治風刺的なコントは、たとえばニュースペーパーなどが有名ですが、Plat-formanceには彼らのようないかにもという毒や揶揄が薄い分、その戯れに不思議なリアリティを感じてしまうのです。口当たりのよさがそのまましたたかさにも思えて・・・。

この劇団、ちょっとやばい・・・。こういう感覚というか見せ方が身上であるとすれば、もしかしたら、さりげなく大化けするかもしれません。

・仏団観音びらき「KWANNON CHABARET in OJI」

個人的には大好きな関西系の劇団です。今回は短時間ということもあって比較的少人数で定番ネタをいくつか・・・。すでに何回か首都圏でも公演しているのですが、正直なところ、この劇団を良く知っている人はあまりいないみたいで、そういう意味ではご本人たちもおっしゃていたようにAwayかも・・・。

しかし、やっぱり濃いですよ。ここは・・・。幕間の時間からキャンディを配ったり、お客さんをいじったり・・・。ただ、関西弁でやられるとその場に角が立たない。お客様もしょうがないという空気になる・・・。で、無意識のうちにかれらのテイストに馴染まされていく・・・。本番前の空気の作り方、これも芸のうちかと思ったり。

本編にも場を押し切る力を感じました。ダメンズネタにしても、犬ネタにしても、ましてPerfumeのパロディにしても、確かな芸があってのことなので崩れない。崩れなくて突っ切る力があるから観客が引くことなく押し切られてしまうのです。

会場にいた全員をファンにすることは出来なくても、何人かの新規ファン獲得には間違いなく成功しているかと・・・。今回と同じように15minutes Madeなどの複数劇団による短編集に顔を出すと、東京でももっとファンの層が厚くなるような気がします。

私的にはポリバケツねたを再見できて大満足でございました。

・負味「負味と申します」

負味初見。

オムニバス形式のコントを10本以上・・・。映像などを使ったネタもいくつかあって・・・。

結構すなおに面白かったです。オーソドックスではあるのですが、ちゃんと一定の笑いを導くすべを知っている感じがする。「世界の車窓から」のパロディ、個人的にはつぼかも・・・。アテネオリンピック、砲丸投げの表彰式あたりになるとちょっとモンティパイソン風な不条理の色彩が強くなって好き嫌いが観客にも出てくるとは思うのですが、私的にはこういう毒もきらいではありません。

コントの質としては、ホームランバッターというよりアベレージヒッターかなとも思います。、シチュエーションというか空気をすっと舞台に引き入れるような力があって、結果として笑いのバリエーションが広く取れているような。CCBネタできちんとあの時代のクールさを作れるあたりに、この劇団の表現者としての基礎体力を感じました。

定番なのかどうかわかりませんが、最後に土下座してあやまってみせることで、コント全体というか劇団としての統一感をだすあたりにも、良い意味でのしたたかさが見え隠れしたり・・・。

・カミナリフラッシュバックス「OLストッキング祭り」

タイトルをみて、予想通りの展開ではあったのですが、ここまでパワーが伝わってくるとは思いませんでした。

OL風の4人が頭にかぶったストッキングをバトルロワイアル風に脱がしあい最後に残った人が優勝という設定。そのストッキング、自分がはいていたものを脱いでかぶるというところがそもそも艶かしくて・・・。男女によって感じ方はちがうのかもしれませんが、少なくとも私には目のやり場にこまる感のむこうに、演じている人間のリアリティのようなものが伝わってきて・・・。そこからのファイトには、極めて戯画的でありながら、それだけにおさまらない役者の意思のようなものが感じられるようになる。

役者たちの肉弾戦は、充分に突き抜けていて、理性を超えた笑いがやってきます。武器としてカニが出てきたり、宙吊りにトライしたりといったネタも舞台に勢いをつけて・・。

こういうネタって中途半端にやられると見ている側までが己のさもしさものを感じる結果になりかねないのですが、ここまでの力量をもってやっていただけると、スカートの内側までがみえてしまうような猥雑さもほどよく吹き飛んでいくのです。下卑さに沈み込まずカラっと素直に笑える・・。タフさの先にあるものを見据えて舞台に立っている役者達が何か良いのです。

べたに楽しんで、終演時にとても気持ちよく拍手ができました。

******

いってよかったと思います。

フライヤーを観たときには、演劇ではあまりない予約不可・途中入退出不可というシステムにちょっとびびったりもしたのですが、粛々と細やかに運営されていて、とても気持ちよく個々の演目を楽しめました。

各劇団を一通り見終わると、けっこう満腹。うふふと会場を後にしたことでした。

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