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劇団競泳水着「NOT BAD HOLIDAY」機微の秀逸な表現

2009年5月19日、劇団競泳水着第十一回公演、「NOT BAD HOLODAY」を観ました。場所は池袋シアターグリーンBASEシアター。

この作品は5月10日にワークインプログレスを拝見しています。その時点でも心惹かれるシーンが多く、すごく本番を楽しみにしておりました。

で、まずは初日に拝見。(日曜日にもう一度観劇予定)

(ここからネタバレがあります。十分にご留意ください)

舞台上手前方には待合室風長椅子、その奥には一段上がってうどん屋さんのテーブル。その隣には食卓テーブル。下手にやや広い空間。モノトーンの床と壁。

真崎家の3姉弟、社会人野球の選手だった弟が腕をいため解雇されて故郷にもどってきます。故郷には母と長女がいるのですが、母が病気で倒れて入院をしてしまいう・・。

姉が努めているうどん屋や母親が入院した病院、さらには弟が所属していた会社など・・・・。、時間と場所が舞台上で繋がり合って、物語がしなやかに観客を巻き込みはじめます。キャラクターたちの職業や生活がすっとわかりやすく描かれる一方で、個性や想いはシーンの積み重ねで色を帯びてくる。

それぞれの色の交わりはさらに深い色を作り物語にふくよかさをあたえていきます。コミカルだったり、深く浸潤するようであったり・・・。キャラクター同士のふれ合う姿はその場に留まらず、キャラクターが内包した時間とやわらかく共鳴してして観客を揺らしていく。家族の空気、恋人同士の距離感、医師や看護士が交わす言葉、あるいは医師と患者家族の想い・・・。ひとつずつの出来事に閉ざされたり解き放たれたりするキャラクターたちの心の機微が、そのまま観客の心に流れ込んでくる。観客には物語を追うのではなく、物語に身をゆだねるような感覚がやってくるのです。

作・演出の上野友之が編み上げるシーンには澱みがなく透明感があって、シーンのつなぎ方が本当に秀逸。ひとつの舞台に載せられたいくつもの空間を見事にコントロールして物語をつなげていきます。たとえばフェイドアウトするようなシーンのかぶせ方が絶妙。前のシーンの余韻を残したまま立ち上がる次のシーンにはより大きな広がりが生まれたり・・・。或いは空間の使い方もそう、想いを交わすふたりが電話ではなすシーンの距離とそれぞれの向きが空間の色をさらに深くしたり・・・。そのような外連が物語を濁らせず、より高い透明感と広がりを舞台に与えていくのです。

演じる役者達にも本当に力があって・・。

細野今日子から伝わってくる想いは観客を理屈抜きに染め上げていました。演じているのはあまり外側に感情を出さないキャラクターなのですが、その内側の心の揺れや憂いが、しなやかで緻密な演技から確実に観客へと伝わってくるのです。なんていうのだろう・・・、よしんばその想いがビターなものであっても、観客がさえぎることができないような質感があって。

細野と色は違うのですが、観るものを浸潤していくような想いは佐伯佳奈杷からも伝わってきました。彼女は、言葉のはざまというか一瞬空白になった時間で想いを観客に伝えることができる・・・。無表情に憂いを込めたり、その憂いをすっと笑顔に隠したり・・・、キャラクターの繊細さとしなやかな強さを彼女のリズムでしたたかに表現して見せました。

川村紗也の実直な演技も光りました。「リビング(カスガイ)」の時と同様に、今回も中庸な感情表現やまわりとのバランスが要求される難しい役柄だとおもうのですよ・・・。キャラクターが持つ強さの中に、すかし絵のように垣間見せる素直さというかやわらかさ、うまいなぁとおもうのです。梅舟惟永の演技の大きさも目をひきました。彼女の芝居には表現力に加えて安定感があって、与えられたキャラクターを演じるだけでなく他の役者が表現する揺らぎをしっかりと支えていました。ナースとしての表情にもリアリティがあって。百花亜希の演技からあふれ出る包容力にも瞠目。彼女のお芝居にはきめの細かさを感じます。終盤、彼女が醸し出すぬくもりにはあざとさがなく観ているものまでが癒される感じ。でも、演技にぼけやぶれがないのです。

大川翔子は空間を自分の色でそめることに長けていました。彼女のキャラクターは、ある意味舞台全体を束ねるフレームのような役割なのですが、彼女から醸し出される艶やかさと滑らかさが、それを超える明るさを舞台に与えていました。OLの実存感も作り上げていて好演だったと思います。

玉置玲央の演技は解像度がとびぬけている感じ。それと、私が知らなかっただけなのでしょうけれど、この人は相手役をしっかりと生かすお芝居をするのです。細野や佐伯、さらには高見との会話のなかで、玉置は自らが演じるのキャラクターに加えて相手の想いをしたたかに浮かび上がらせていく。その鮮やかさに舌を巻きました。

高見靖二の演技には力みがなく包容力がありました。細野の演技を受け止めるだけの大きさが実直に表現されていて・・・。また、想いの出し入れがスムーズで彼が抱えるものが彼のあるべきところにおさまっているように思える演技でした。

さいとう篤史の演技には切れを感じました。芝居がくっきりしていてすごくわかりやすい。シーンにリズムを生むような力もあって・・・。高橋克己は演じ方によっては単なるヒール役になりかねないキャラクターにうまく広がりを作っていました。場内から笑いをもらうようなデフィルメを行いながら、その中に野球に関する真摯さをしっかりと作り上げていて・・・。

堀越涼橋本恵一郎のドクターは本当に見ごたえがありました。堀越の演じるキャラクターにはコミカルな部分とシリアスな部分が共存しているのですが、そのバランスが絶妙にコントロールされているのです。観客を笑いに導きながら、彼のコアにある生真面目さがまったく損なわれることなく伝えられていく・・。それが終盤の百花とのシーンで見事に生きる。橋本の演技が気持ちよく堀越の心情を浮かび上がらせていきます。彼の演じる医師のプロ意識には実存感があって、堀越演じる医師が背負うものをうまく引き出していいたとおもいます。

それにしても、この作品、物語の見せ方が本当にうまい。

弟が想い合う人と電話で話すシーン。単純に電話がつながるのではなく、一旦留守メッセージを入れるシーンが差し込まれる。直後にお風呂上りの彼女がそのメッセージを聴いて電話を返すのですが、そのワンクッションで役者からこぼれる想いが何倍も強く観客につたわってくるのです。こういう風に作られたシーンって、なにかずっと観客の記憶に残るような気がします。

長女と八百屋をやっている腐れ縁の男友達が見晴らしの良い場所から街を眺めるシーンや、医師の謝罪に対しての患者の娘の言葉にもやられた。登場人物がずっと抱えてきたなにかが解き放たれるとき、自然と目頭が熱くなりました。

そもそも、ワークインプログレス時にも各シーンのクオリティには瞠目していたのですが、本番ではひとつずつが一層よくなっていて・・。シーン構成が一新されただけではなく、姉妹が東京で暮らしているときのシーンが挿入されて家族を流れる時間がしっかりと固められていたり、地元のFM放送の番組が差し込まれていたり・・・。それらの積み重ねがトータルな作品のクオリティをがっつり昇華させていたように思います。

その他にも心に残るシーンがいくつもあって・・・。クロスワードパズルを使ったエンディングもすごく洒脱。

観終わって、素直にもう一度観たいと思いました。
ほんと、上野友之の作劇の才と役者たちの力を改めて実感したことでした。

私にとっては、多分今年のベスト5になりうる作品かと・・・。もし、お時間があれば是非におすすめの一作です。

***** ***** *****

その日はたまたま私の誕生日ということで、お芝居が終わってから残業帰りの旧友と待ち合わせてシャンペンを一杯おごってもらいました。

よいお芝居を観て、よいお酒をいただけるのは幸せの極み。久しぶりに満たされた時間のなかで誕生日を過ごすことができました。

で、観てきた芝居の話をしながら、おり込みのパンフレットを見せていて、私が劇場で読んでいてまったく気付かなかったあることを彼が発見して・・・。ありがたいことだとはおもうのですが、ちょっとびっくりしてしまいました。

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