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切れなかった14才❤りたーんず「14歳の国」あの頃の空気が醸成されて

遅くなってしまいましたが、2009年4月29日ソワレにて切れなかった14才❤りたーんず「14歳の国」を観ました。作:宮沢章夫、演出:杉原邦生。初見です。このシリーズ、気がつけばもう5本目。ごほうびにシールをもらいました。まあ、これだけの作品がよく並んだものだと感嘆。はずれが1本もないものなぁ・・・。

(ここからネタバレがあります。十分にご留意の上お読みください)

劇場に入ると、そこは教室。舞台一杯に並べられた机には迫力を感じます。そんななか、杉原氏の前説はどこかフレンドリー。ちょっとずつ舞台に観客を引きいれるような感じ・・・。それの雰囲気は登場した役者たちも同じこと・・・。舞台の内側と外側の中間に立ったように簡潔に時代背景などを観客を説明して・・・。そこから大音響の音楽と照明等で構成されたタイトル場面で一気に物語に観客を導いていきます。

教室に先生がやってきて持ち物検査を始める。どうもきびきびとはいかない。そのようなやり方に反対している先生もいるようで・・・。

コミカルなやりとり。時間に追われながらもどこか切迫感のないぼんやりとした空気。先生間での溝のようなものもじんわり浮かび上がってきます。その中で、生徒たちに醸成されていくなにかが見落とされていく。何を恐れているかもわからないまま、方向性というか行き場の十分定まらない義務感で作業を続けていく教師たちのフラストのようなものがどよんとその場にたまっていく。観ている側までがだんだんとその空気に侵食されていくような感じさえして・・・。

でも、噛み合わない先生たちが掘り出した生徒たちのかけらから、生徒たちの気配がすこしずつに観客に明らかになっていきます。「自分史」、共通の言葉。揮発性のガスがあちらこちらから漏れ出して充満していくよう。それを明確に感じることができず、よしんば感じたとしても自らの感覚にふたをしてしまう先生たち・・・。机やカバンの中にしまわれた生徒たちの世界が一気に熱を帯びて露出していく終盤が実に圧巻・・・。それは先生たちの空気に腐食していった生徒たちの箍が一気に外れたようにも思えて・・・。

爆発に近いその表現に愕然とし、その表現に至るまで舞台を着実に満ちさせた杉原の鮮やかな手腕に瞠目した事でした。

役者は以下のとおり。

真田真・菅原直樹・山崎皓司・鈴木克正・小畑克昌

派手さはないのですが、それぞれがキャラクターを貫く演技に徹していて・・・。キャラクターどおしがこすれたりぶつかったりするときの音で醸成されていく空気はとてもわかりやすいのです。役者たちの実直な演技にモニターに映る映像や、カメラ、終盤の舞台の作り方など、杉原のセンスがしなやかに重ねあわされて・・・。なにか抜けられないというか、その場に立ち会うかのごとく時代の空気に浸されたような・・・。

杉原演出、したたかだと思います。あの事件があったころの学校の雰囲気を、肌の感触のように感じたまま、劇場の階段を下りたことでした。

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