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「ソラオの世界」研ぎ澄まされた鉈

2009年5月5日、西田シャトナー作・演出の「ソラオの世界」を観ました。会場は大塚萬劇場。

結構雨が強くて、傘をさすのが下手な私は若干濡れながら到着。

でも、こういう芝居ってお天気関係なし。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

開演前に西田シャトナーさん自らが前節。ギターを抱えて登場すると、すてきにしょうもない替え歌のサービス。

開場が適度に暖まったところで、少しだけ間をおいて舞台が始まります。

舞台は中央に台状のスペース。4本の細い金属パイプで作られた可動式の柱上のものが4セット。比較的素舞台に近いシンプルな装置。

主人公がバンドのコンサートを大成功させているシーンから物語が始まります。それは夢。目覚めた彼はけっこういい加減で自分のライブとバイトの脳波治験をダブルブッキングしたり・・・。で、治験を優先して脳内のイメージを具現化する装置をかぶったとき、落雷で彼は夢の世界に閉じ込められてしまいます。

夢の世界でのできごと。記憶とイメージが激しく交錯して彼の彷徨が始まります。バンドの成功、勉強部屋でコントロールされる巨大なトロッコと父母の干渉。自らへの裁き、そして愛する人との時間。

表現の豊潤さにぐいぐいと引き込まれていきます。イメージの広がりが観客をさらっていく。パワーマイムと言われる表現手法。ハラハラするほどに強く勢いを持った演技が矢継ぎ早に舞台を駆け抜けていく。一方ですっと足を止める静の瞬間にも強い引力があって取り込まれたり・・・。物語が成り立つぎりぎりのところで、役者たちが互いのエキスを絞り合っているようなシーンが随所にあって、物語にさらなるふくらみを与えます。舞台上でのあたりが強いというか、役者のパワーが観客を凌駕するようにやってくる。

一つ間違えれば物語のフレームすら壊しかねないような力の入れようも、手練の役者たちがやると舞台に繊細さを与えるのです。大味にならず緻密に舞台が締まっていく。パワーが舞台をルーズにしないボーダーぎりぎりでのせめぎ合い、観ていてわくわくしました。

出演者は以下のとおり

早田剛・保村大和・岩永洋昭・上野亮・渡部将之・深寅芥・中津五貴・平山佳延・所里沙子・ミヤタツ・原田麻由・荻野崇・伊藤えん魔・平野勲人

芸達者が多いこと・・。伊藤えん魔のカニ、あれはずるい(褒め言葉です)。一方早田剛や上野亮、所里沙子、中津五貴といった若い役者たちもベテラン達の演技に引っ張られるように伸びやかに舞台を作っていきます。平山佳延のイヤガリネズミの存在感がとても印象にのこったり・・・。小嶋じゅんの勢いに流れることない演技も芝居の奥行きを広げていたと思います

物語はループを経て、光が見えてくる。その閉塞感と希望のバランスもとてもよくて・・・。

それは、不思議な感覚でもありました。こういう排気量の大きい芝居ってなにかとても久しぶりに観たような気がして・・・。まあ、PiperやMCRなどの芝居にも骨の太さはあるのですが、こういう荒ぶるような強さを持った芝居って最近あまり観なかったような気がします。でも、加速度がつくような場面でも雑な部分がなく瞠目するほどにしなやかで、なにかしっとり感があったりする。

西田シャトナー氏の底力なのでしょうかねぇ・・・。

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