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「グァラニー~時間がいっぱい」影はできても光を浴びて

4月29日マチネにて「切れなかった14才❤りたーんず」のうち「グァラニー~時間がいっぱい」を観ました。作、演出は岡崎藝術座の神里雄大氏。広小路亭での「三月の5日間」で度肝を抜かれ、「リズム三兄弟」でもとても惹かれた演出家&作家です。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

開演前、上手袖の部分で出演者の女性たちが小刻みに体を動かして気合いをいれている。やがて時間がくると、女性がひとり舞台中央に歩みだして、精一杯の笑顔で観客を見渡します。そして、白いドレスを着た6人の女性のダンスが始まる・・・。West Coast風の音楽と華やかで優雅さを持った衣装、さらにはヨサコイのようなその掛け声のとばらばらに組み立てられたそのダンスは、不思議と明るくパワーにあふれていて見る者の目を奪います。そのダンサーたちがとある男性の花になる。日々の生活にふっと疲れ会社をさぼって喫茶店に入った彼は、自らに去来する記憶を語り始めます。彼がパラグアイに移住した子供の時のこと、曖昧な記憶の中で、印象に残ったことが次々と言葉にかわっていく。「過去をつみとることは今を受け入れること」。

初めて彼が現地の日本人学校に行った時のことなどが語られていきます。彼を取り込んでいた女性たちは花の髪飾りをひとつずつ彼に握らせて彼の元を離れていく。そのスカートがスクリーンに変貌していく演出も秀逸で・・・。学校でのこと、次第に友達ができていく姿や感じた世界が肌触りとともに伝わってくる。苦労話でも美談でもない感覚・・・。彼のイメージの中に登場する若いお母さんや、サザンオールスターズの話などからペーソスと生々しさが積みあがって、その肌合いが実感として伝わってくる。「チャコ」の海岸物語のちょっとした誤解。冒頭の女性たちのスカートが美しいスクリーンになっていて、そこに映るバスの車窓の風景に彼の漠然と広がる孤独感がすこしくすんだ高揚感とともにやってくる。スカートのフリルが作る映像のギザギザ感が男の想いの肌ざわりにも思えて・・・。

後半は、パラグアイで生まれた女の子が日本の学校に転入してくる話が展開されます。クラスメイトたちの興味、でも実際に付き合ってみると話が合わない・・・。興味の対象が違うというか感覚にずれがあって・・・。それでも付き合ってくれた子と喫茶店ですごす時間のの気まずさのようなものが、細かく具象化されていきます。

で、彼女の母親が、めげる娘を叱咤激励するところがとにかく圧巻。感覚の違いを凌駕し自らがパラグアイで乗り越えてきた日々を、娘にも乗り越えさせるためのパワーに変える言葉があふれるようにやってくる。そのがむしゃらさが、直球で客席を席捲するのです。最初はえっと思うようなたぐいのパワーだったのが、気がつけば含まれる強引さのようなものがなにかに昇華していて完璧に取り込まれてしまいました。そして、その熱をしっかりと受け止めていく娘の姿に光明を感じて・・・。

終盤、ステージの中央に立つパラグアイを生きた人々が立つ姿にじわっと来て、さらにマテ茶を口にするうちに「美味しいかも・・・」と言い始めた女の子の友人の姿にうるっとした。友人のなにげな表現に、これからやってくる彼女の日々がすっと照らされたような気がして・・・。

役者は以下のとおり

杉山圭一・菊島かずは・高須賀千江子、宇田川千珠子、上田遥、板倉奈津子、寺田千晶

母親役を演じた菊島にしても上田にしても、芯ががっつり太いお芝居で、なにかを突き抜けるようなグルーブ感があるのです。菊島が演じるクールな部分も上田か発する高揚感も、その太さにがっつり支えられていて・・・。一方彼女たちの子供に当たる役を演じた杉山や宇田川の演技では繊細さがうまい具合に想いを内側に織り込んでいて観客を惹き込んでいきます。宇田川の所作にはしっかりとした表現力があって。杉山がニヒリズムをスパイスに見せる実直な思いにもたっぷりと見ごたえがありました。

また、彼らに接する側を演じたふたりも舞台をしっかりと支えました。高須賀の所作や演技には洗練があってはるおの想いに実存感を与えていました。板倉もそのナチュラルさで、したたかに宇田川の演じるキャラクターの色を浮かび上がらせて好演だったと思います。

狂言回し的な役回りを演じる寺田千晶の感情表現にも目を引かれました。言葉という小さな出口からとても輩出しきれないような気持ちの振幅がすごくうまく表現されていて・・・。

観終わって、舞台からやってくるものに、素直にまっすぐ心を浸潤されたような気がします。たとえば訥々と想いを話す友人にゆっくりと心が同化していくような感触。それと、うまく言えないのだけれど、日差しの明るさに影がきちんとあるようなお芝居だなと感じました。

そうそう、スカートを広げて重ねたスクリーンもすごく心に引っ掛かっていたり、そのスクリーンに映し出された風景が訳もなく心を揺らしていたり・・・。

どこか抱えきれないけれど、でもナチュラルな満たされ感を持って、ゆっくりと劇場の階段を降りた事でした。

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コメント

りいちろが洗練したの?

投稿: BlogPetのr-rabi(ららびー) | 2009/05/02 16:45

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