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Dull Colored Pop 「ショート7 Bプロ」

2009年5月3日、昨日に続いてDull Colored Pop ショート7を観てきました。今回はBプロです。

昨日同様に狭い階段を下りて舞台をみると、高さをもった畳張りの空間が乗っかっていてびっくり。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください。)

上演順に感想を・・・。

1.息をひそめて

同棲している彼女の浮気を疑っている男、彼女の様々な行動に疑心が募ります。思い当たる節が、運命をノックする音と重なり合い、男の心を追い込んでいく。出張が予定より早く終わった日、彼は床下に潜り込んで、彼女の浮気の証拠を押さえようとするのです。

で、彼女が連れてきたのは女友達・・・。お酒を飲むうちに、彼女が友達に話す様々なことが床下の彼につたわって・・・。

堀奈津美の表現が本当にまっすぐで、すごく良い。観客に普段着のようなトーンでキャラクターの想いを伝えてくれるのです。「ありのまま」がすごく精緻に演じられていて。田中のり子の話の引き出し方もすごくナチュラルで、堀奈津美のカムアウトに違和感を与えない・・・。二人の作る時間に気負いがないので、佐野功が演じる男の「運命」のノック音の行き場のなさがすごく際立つのです。

次第に相手を思う心が定まっていくような女性と、すこしずつ疑心が膨らんでいく男の対比の鮮やかさ。その擦れ違いの香りがシチューのなべから浮かび上がってくるようで。

最後、堀と佐野の間に漂うに空気に、不思議な瑞々しさを感じた事でした。

余談ですが、終演後あれよあれよという間に4畳半の部屋が消失していくのも観客には一見の価値あり。ちょっとした魔法をみるような感覚があります。舞台に携わっている方たちには当たり前の光景なのかもしれませんが・・・。

出演 : 堀奈津美、佐野功、田中のり子

2.エリクシールの味わい

ビックリするほど本物のミュージカルです。出演者たち、単に歌が上手いだけではなくキャラクターとして物語を歌えるのが強い。

今回のようにキーボードとパーカッションだけのシンプルな伴奏だと、役者が背負うものがすごく大きいと思うのです。ましてや、飲尿ミュージカルです。観客の想像力では埋めきれない感覚を舞台側でしっかりと作らなければ成り立たない。でも、そんなことはこの作品に関しては一切心配する必要がありませんでした。

小林タクシーが歌い始めた瞬間にぞくっときました。歌のなかにブレのないキャラクターを作り上げていく。設定の違和感をコミカルさのオブラートにつつみ、歌だから表現しうるキャラクターで観客を見事に取り込んでいく・・・。男の変態への確たるプライドも笑いを誘います。

尿を売る側を演じる女優たちもがっつりとキャラクターを作り上げていきます。女子高生の無邪気な部分、バイトガールの生真面目さ、それぞれにコントロールされた存在感があって・・・、「羞恥」が観客の琴線に触れ場内に笑いが広がっていく。

人妻を演じた佐々木なふみの色香には生活感がすっと差し込まれて・・・、うまいなあと思う。したたかなお芝居からやってくるナチュラルな艶が舞台を膨らませます。

SM嬢の突き抜けかたも物語の密度をぐっと引きあげて・・・。

ここまでに舞台が作られているから、岡田あがさが作り上げるキャラクターが舞台から浮かないのです。すこしロックティストな歌い方には観客をたちまちに浸潤する力があって、彼女の存在に舞台のトーンがしなやかに塗り替えられていく。

ヒール役の演技が世界をひきたてます。男の想いがコミカルさを凌駕して観客に伝わるとき、男と少女の尿を介した純愛がまぎれもなくそこにあって。

作曲・演奏・出演・音楽監修:伊藤靖浩 

出演:岡田あがさ、小林タクシー、清水那保、千葉淳、桑島亜希、佐々木なふみ、田中のり子、ハマカワフミエ

こういう物語の作り方、ミュージカルの王道だと思うのですよ。音楽もなじみやすく高揚感があって、bowのあとに音楽で締めるやり方も正統派かと。ほんと、オフオフブロードウェイのミュージカルを観ているみたい。

Janis」を観た時にもオフオフミュージカルのテイストを感じたし、音楽的な妥協のなさに感服したのですが、音楽の物語へのからみ方という点では今回のほうがさらに深いレベルでの作り方がされていたようにも思います。

谷ミュージカル、今後どのようなものを見せていただけるのか、すごく楽しみになりました。

3.藪の中

客席側から現れた紋付・袴の堀越涼が、歌舞伎役者よろしく舞台で礼。凛と空気が張りつめて・・・。暗転して演じるシチュエーションがアナウンスされて舞台が始まります。

検非違使などが活躍している時代、藪の中の死体について、発見者や犯人、犯人を捕らえたもの、被害者の妻など7人の話が演じ重ねられていきます。

「演劇のリアリティは、台詞でも演出でもなく、俳優の身体からしか立ち上り得ない」とパンフレットの作品解説にありましたが、堀越の演技から湧き上がるリアリティは演じる人物にとどまらずその背景にまで広がっていて、物語が進むうちに藪の風景が次第に浮かび上がってくるのです。まるでジグゾーパズルのピースが埋められていくように現れる真実。生々しく描かれた人物を透過して観客を包み込むような時間がそこにあって。

最後に「いたこ」の口を通して被害者が語る時間がそれまでに重ねられた時間と同化するとき、男に訪れる死の色が深々と舞台を染めていきます。

陰惨な物語なのですよ。でも、陰惨さを晒すわけでも隠すわけでもなく、登場人物たちが醸し出す生々しさを、死の色の深淵に置き換えていく演出のうまさ。そして世界を背負いきる堀越涼の演技力に舌を巻いた事でした。

原作は芥川龍之介。

出演 : 堀越涼

*** *** *** ***

Aプログラムと合わせて7本を観終わって・・・。、谷賢一氏が持つ表現の間口の広さにひたすら瞠目。多彩な作品群なのですが、それぞれに個々の作品としての深い奥行きが存在する。「谷賢一」風というくくりでは縛ることができないフレキシビリティを持ってこれだけの作品を作り上げていく才能は、やはりすごいとおもうのです。

終演後、腰や足はしっかりと痛かったけれど、上演中はそれをまったく感じさせないほどのクオリティが個々の作品にあって・・。よしんばそれが薬物がらみであっても尿の味わいであっても、素材や表現に不純さやあざとさを感じさせない点にも常ならぬ彼の力を感じたり・・・。

今後の彼の作品やDull Colored Popの公演を心待ちにする気持ちが沸々と湧いてまいりました。

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コメント

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投稿: I Shed Thirty Póunds in Under a Month | 2009/05/07 08:45

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