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アロッタファジャイナ「偽伝、ジャンヌ・ダルク」圧倒的な高揚感とさらなる余地

4月12日マチネ(3回公演の1回目)にてアロッタファジャイナ「偽伝、ジャンヌ・ダルク」を観ました。場所は池袋、シアターグリーン・ベースシアター。シアターグリーンには何度も足を運んでいますが、1Fのこの劇場ははじめて・・・。

今回のアロッタファジャイナはホワイトチームとブルーチームの2バージョンでの公演。ひとつのチームの公演には他のチームが客入れや前説を行なうという流れのようです。ただ、共通キャストとして出演している役者も3名います。

で、私は、ブルーチームを観ました。客入れ等々、びしっとすごく気持ちよく・・・。ちょっとぐたぐたの前説もご愛嬌

(ここからネタバレがあります。充分にご留意ください)

プレーンな舞台、いくつかのボックスと椅子など。中央には15世紀当時のフランスの状況が古地図っぽく描かれたものが掛けられています。

舞台上では、単にジャンヌ・ダルクの物語だけではなく、その背景にある世界が丁寧に説明され、演じられていきます。まだ、フランスに絶対王政がひかれる前の話。当時のフランスの状況、王家の雰囲気、さらにはジャンヌ・ダルクに運命を翻弄されるという2人の登場人物・・・。

それらのエピソードを挟みながら、創意をこらして、ジャンヌ・ダルクが神の言葉を聞き、軍を率い、王をその座へと導き、やがて火刑に処せられるまでの姿が描かれていきます。

地を語るというか語り部を何人かの役者が交互に努めながらドラマを紡ぎ、ジャンヌ・ダルクが登場し悲劇にいたるまでの物語を導くいうやり方がとてもうまく機能していて、観客は主人公の背景にあるものを理解しながらその行く末を見つめる感じ。安川結花が演じるジャンヌ・ダルクからは、清冽な色と微かな揺らぎを凌駕して強い高揚感が溢れ、観るものを圧倒していきます。兵士たちに紛れた王を選ぶときの清楚さと気高さ、戦いに兵士を導くときのカリスマ性までもがまっすぐに舞台からやってきて、観客を凌駕していきます。

他の役者たちも様々な役を着々とこなしていきます。ナカヤマミチコの語りには強い説得力があり観客にシチュエーションを刷り込んでいくし、青木ナナも着実な芝居で様々なキャラクターに実存感を与えていきます。この人のお芝居にはしなやかな安定感があって、よしんばいろいろな人物を演じたとしても、個々の人物が重なり合ったりぶれたりしないのです。菅野貴夫も人間臭さをしっかりと観客に伝える演技でシーンをガッツリ支えていたし、斉藤新平にしても井川千尋にしても、シーンを動かすに足りる演技で物語を前に進めます。竹内勇人はキャラクターが持つ不安定に実在感を与えていたし、白木あゆみ は若干線が細い感じなのですが、不思議なテイストを持った女優さんで、安定感をもった揺れのないお芝居を見せていきます。

それと、この作品の音楽の使い方も非常によかったです。まるで役者がもう一枚衣装をまとうように演技と音が相互に舞台を高めておりました。

また、ひとりの役者が何かを演じるとき、舞台に乗っている他の役者のめだたないお芝居がすごくしっかりしていて・・・。舞台の上に語られるシーンの温度や見晴らしや想いを観客に浸潤させていきます。特に今回のような劇場では、役者個々の小さな動きが舞台の密度を作る力へとつながっていく。終幕後の拍手をしながら、心にはジャンヌダルクの想いがちゃんと残っていて・・・。観ていて、観客が心満たされるレベルを持った作品だったと思います。

ただ・・・、

そうはいっても、この作品、もっとよくなる感じがしたのも事実。たとえば、ジャンヌ・ダルクを取り巻く歴史や人物のエピソードとジャンヌダルクの行動や想いの積み上げ方には、まだ工夫の余地があるように思うのです。ひとつずつのエピソードには含蓄があるのですが、それらとジャンヌ・ダルクの想いの交差には、もっと物語全体を染めるようなやり方があるように感じました。。それはエピソードの順番だったり、語りと演技で見せることの比率の問題にも思えるのですが・・・・。作品自体にも役者たちの芝居にも、かすかにですが、こなれていないなにかを感じてしまうのです。
アロッタファジャイナに関しては、過去に物語を大きく構築するテクニック持った作品を観ているので、特にそう感じるのかもしれませんけれど。

この作品、今回の公演を礎としてさらに醸成されて再演されればよいのにと、ふっと思い浮かんだことでした。一発ボンでは終わりにならないような懐の深さをこの作品には感じるのです。

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受信: 2009/04/13 19:58

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