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王子落語会 「艶」や「華」の醸成

3月6日、王子小劇場にて・・・。

まあ、この空間で新進気鋭の若手落語家の良いところをたっぶり聴ける贅沢・・。味わってまいりました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意の上お読みください)

雨がそれなりに降る中、劇場に到着・・・。場内にはゆったりと席が設えてあって、劇場自慢の金屏風が置かれていて・・・。これで戒名をかけるやつがあったら完ぺきなのですけれどね・・・。

王子小劇場のスタッフの対応ってどの劇団の公演でも本当によい・・・。劇場づきのスタッフがしっかりしてらっしゃるのかも。なにか場内全体によい雰囲気が漂っていて、こうゆったりと話が聞ける感じ・・・。お囃子の笛にも切れがあってやわらかい緊張感を醸し出す中、開演となります。

・柳亭市丸 「饅頭怖い」

初見の噺家さん。枕の部分は正直ちょっと硬かったです。段どりだけで噺を持っていくような感じがあって大丈夫かと思った。それが、噺の本筋にとびっくりするほど流暢になる・・。前座さん独特の話をこなしていくような雰囲気を途中で芸の滑らかさが追い越していくような・・。

キャラクターの描き分けなどにはちょっと段差の少なさを感じたりはするのですが、個々の表現には説得力があって・・・。饅頭が本当においしそう・・・。

お茶のほしさを観客にきっちり伝えておりました。

・三遊亭王楽 「鮑のし」

王楽師匠、前回王子寄席で拝見した時よりも、なんというか角が取れた感じ・・・。客席に向かって凛と立つような雰囲気が前回はあったのですが、今回はその空気を締めるような雰囲気が消えて、客席を招きいれるようなやわらかさが場内を包む・・・。

「鮑のし」、上方だとたしか「祝いのし」というお題だったと思います。上方落語だと、口上や開きなおったあとの言い回しのパニックの部分を前面に押し出して演じられることが多い話だったような・・・。でも、王楽師匠は噺が本来持つ構造を大切に世界を作っていきます。それがなんともいえない品を生む・・・。下世話な感じが薄らいで登場人物に親しみというか暖かさが生まれてくるのです。鮑を突っ返されたことに対する反論にしても、言い間違い方がさらっとしていて、それが主人公になんともいえない愛嬌をもたらす・・・。

まあ、小さなよどみや瞬き半分ほどの間の違和感、そこからふっと現出する高座と観客の温度差のようなものはあるのですが、それは、さらにこの噺を演じていくうちに霧散していくたぐいのものでしょうし・・・。落語界のサラブレットと言われているのは血筋だけではないことを、さらっと証明してみせるような、上品な「鮑のし」でありました。

・桂 都んぼ 「佐々木裁き」

あとの「坊主茶屋」もそうなのですが、都んぼ師匠は噺のなかに風景を織り込むすべを身につけたような気がします。

子供の裁きの風景なども、そこにちゃんと浜の風が吹いているような感じがする。小さな仕草や語り口に細かい工夫があるのだと思います。

長屋の情景なども、上方落語のちょっと大きめの表現に加えて細かいところまで神経がいきとどいている感じがあって・・・。桶屋の仕事ぶり、市井の人々の生活の雰囲気。さらには奉行所の内部の凛とした、きちんとその場の色を語りあるいは演じるから、空気がきっちりと緩み、また締まっていく・・・。

四郎吉の天真爛漫さと父親のおろおろぶりもとてもいい塩梅で・・・。また、奉行の表情も物語に映える・・・。

聴いていて本当に面白いのに飽きがこないのは、噺の持っていきかたにすごく繊細な制御がされているからかと・・・。

最後に奉行が見せた威厳が話をきっちり締めて・・・、最後まで神経のいきとどいた高座でありました。

中入

・桂 都んぼ 「坊主茶屋」

まあ、王子小劇場は演劇がメインですから、照明のコントロールはお手の物・・。

で、新世界界隈の安~いお店をネタにした枕が終わると、鐘が陰気になって照明が落ちて・・・。リハーサルが不足していたのかパーフェクトな闇が作れないところがちょっと残念だったけれど、雰囲気はきちんと作られて・・・。そこからライティングやはめものを加えて、男性にとってはちょっと陰惨とも思える、安いお茶屋に上がった職人達が悪夢から覚めるような風景が描かれていきます。枕の部分がこの部分のえげつなさのうまい下地になっている・・・。ここでも、都んぼ師匠は、それこそ饐えた臭いのするような場所の雰囲気をうまく客席に伝えていくのです。

夜の出来事がそこまでブラックに作ってあるから、朝になってのシーンの当り前の会話がいちいち滑稽で・・・。ライティングも素に戻って坊主にされた女郎たちのどこか間の抜けた明るさがおかしみとなってやってくる。

色の付け方の難しい噺だとおもうのですよ・・・。でも都んぼ師匠の持っている資質がうまく生かせる噺でもあるような。噺の外側でもっと緻密なけれんを使えば、さらなる境地が生まれそうな感じもしたことでした。

そうそう、下座の小池彩さん、三味線に合わせての唄がすごくよい。素人が聴いても聞き惚れるような魅力があって・・・。こういう芸が添えられると噺に艶が生まれる・・・。ええもんを聴いたなと思います。

・三遊亭王楽 「柳田格之進」

枕もそこそこに噺に入っていく。

地の部分がしっかりと張りを持って語られて・・・。

キャラクターの明確な演じ分けが観ていて気持ち良い・・・。番頭がよいのですよ。ちょっと下世話な感じのなかに商人のプライドの良い部分も悪い部分も浮かび上がってくる・・。首を差し上げようというときの慇懃無礼なしぐさがもう絶品。そこから冒頭ではステレオタイプに思えた柳田格之進の武士としてのプライドにも血が通い雰囲気も鮮やかに引き出されていく。

また、王楽師匠の演じる女性には歌舞伎の女形に通じるような気品があって・・・。格之進の娘に容姿を超えた美しさが見えるのです。貧乏長屋のシーンであることを忘れてしまうほどに、はきだめに鶴といった風情がしっかりと伝わってくる。50両に値する女性を生みだす表現力が王楽師匠にはあって・・・。

終盤の部分の噺の密度もたいしたもの、いやあ聴きごたえがありました。

都んぼ・王楽2人会、ちょっと意外な感じもするのですが、とても相性がよい・・・。両方の良い部分をたくさん感じられる組み合わせであるような気がします。

次回の王子寄席は6月19日だそうです。でもそれを、ちょっと人に教えたくなくなるような充実の高座でありました

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