« 珍しいキノコ舞踊団×plaplax「Rainy Table」、心解かれる時間 | トップページ | こゆび侍「エスカルゴ」見え方の秀逸なコントロール »

山の手事情社「drill」鋼のような描写力

遅くなりましたが、3月21日ソワレにて山の手事情社「drill」を観ました。会場は下北沢・楽園。

山の手事情社を観にいくのは本当に久しぶり。見始めたのはものすごく昔からなのですけれどね・・・。まだ、清水宏さんが劇団にいらっしゃったころ弁論大会風の「檸檬(梶井基次郎の名作)」を演じたのを観たことがある・・・。それは衝撃的なものでした。あと、山の手メソッドと言われる様々な表現の紹介のような公演を観たり、さいたま芸術劇場での公演を観たり・・・。

ただ、その後、縁から見放されたようにスケジュールが合わず、ほんと、何年振りかでの観劇になりました。

(ここからネタばれがあります。ご留意ください)

今回は整理番号付き自由席、楽園前の比較的狭い舗道に列をつくります。タイトな感じが全然しないのになにかすっと物事がすすんでいく・・・。代表の安田雅弘氏が途中からさらっと列を仕切っていたのにはちょっとびっくり・・・。

番号順に場内に入ると楽園名物の大きな柱、そこを分かれ道にして両正面という左右の客席にお客さんが手際よく振り分けられていきます。役者さん中心の作業なのですが、その手際をみているだけで、なにか観客の背筋までがのびるような・・・。本当に気持ちよくて・・・。

舞台は緑を基調に赤に塗られた小道具が・・・。その中ですでに役者がひとり芝居を始めている・・・。客入れなど知らんふりにこたつで寝そべったり真っ赤な新聞を読んだり・・・。お客さんがきっちりと入りきって、いつもの開演前の諸注意があって・・・・・と思いきや、その役者が間髪をおかずに芝居に入る切れのよさにまずびっくり。観客を構えさせずに一気に舞台に引きずり込んでいく。

そこから、舞台上の部屋には、まるで脳の内側であるがごとくさまざまなイメージが去来していきます。

一つずつのシーンからやってくるイメージにはしっかりとエッジが立っていて、突飛なシチュエーションであったとしても観るものと確実に共振していく・・。その対象は、等身大であったり概念の中で理解するしかないものであったりいろいろなのですが、登場してくるものに設定された温度が微細に観客に伝わってくる例外のない安定感があるのです。温度を狂わせるものが一切そぎ落とされているようにも思える・・・。
駄弁に思えるような会話や、ルーズな人格を描くときにも、その色がクリアで明快・・・。。アナログな雰囲気を非常に細かいデジタルの集合で描いていくような鮮やかさ。拡大した部分がぼけないような安心感。細密に要素が積み重なって一つの場面が浮かびあがっていくような感じ・・・。で、デフォルメされていくものにも歪みがない・・・。

舞台上の表現は主人公の思考の去来するものにも思えるのですが、現出させる仕組みがまたよいのですよ。さまざまに訪れる来訪者たちはその部屋の主に「ただいま」と声をかける・・・。一方で部屋の主は「いらっしゃい」と応じる・・・。そのギャップが来訪者たちの自由な創造を観客に受け入れさせてしまうのです。いくつかのエピソードにはルーズな起承転結をもたせているものもあって、観客の時間感覚も損なわれないようになっていて・・・。緑と赤を基調とした空間からふっと沸き立つような思考やキャラクター間のトーンが生まれていく。

で、造り手が描写し創造したものがストレスなく観客側に伝わってくるのです。

一番印象に強かったのは、「楽屋と勘違いしている来訪者」でしょうか・・・。「身障者と介護者」の表現にも息を呑みました。「禁煙」もとても秀逸、「撮影」の風景描写にはぞくっとくるものがありました。その一方ではずれかなと思うようなものは見当たらなかった・・・。

ところどころに挿入される、山の手事情社事情社がルパムと呼んでいる表現もすごい完成度で圧倒されました。昔、代々木のガーディアンガーデンで彼らの歩行のいろんなパターンを拝見した覚えがあるのですが、その
時のメソッドが進化し、現実の表現に結びついてしっかりと観客に何かを伝えていく。ほんと、怖くなるほどノイズのない表現にまず目を奪われ、さまざまなバリエーションの動きが組み合わさっていく中で、観る側に浮かび上がってくるイメージの豊潤さにまっすぐ惹き込まれる・・・。昔の言葉で言うと「前衛的」ではあるのでしょうけれど、でも決して難解ではない・・・。

出演者等は以下のとおり。

出演 : 斉木和洋・野々下孝・久保村牧子・越谷真美・三井穂高・小栗永里子・櫻井千絵・谷口葉子・安部みはる・浦浜亜由子・下野雅史・浦弘毅・川村岳・岩淵吉能・(山本芳郎さんは川村岳さんとダブルキャストで当日拝見することができませんでした)

観終わって、その内容はたっぷり満腹なのですが、もたれ感は一切ありませんでした。暴力や人間の本質的なもののあからさまな表現に満ちてもいたのですが,そのテイストを拒絶反応なくのみ込めてしまうような浸透力がこの舞台にはあって。観客が自らの意思で再確認し納得するような今がこの舞台には満ちているのです。それはイッセー尾形の独り芝居と同じような力を持っていて・・・

この作品のフライヤーには山の手事情社の作品が、リアルー四畳半を横軸にテキストー即興を縦軸にした図にポイントされているものが掲載されているのですが、そういう捉え方が、また観客の食欲をそそったりもする・・・。このテイストももっと味わいたいし、でも彼らの表現力が作りだす他の作品も是非に観たい・・・。

山の手事情社、私的に再注目の集団になりました。

R-Club

|

« 珍しいキノコ舞踊団×plaplax「Rainy Table」、心解かれる時間 | トップページ | こゆび侍「エスカルゴ」見え方の秀逸なコントロール »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 山の手事情社「drill」鋼のような描写力:

« 珍しいキノコ舞踊団×plaplax「Rainy Table」、心解かれる時間 | トップページ | こゆび侍「エスカルゴ」見え方の秀逸なコントロール »